世界音楽の祭典の一つ、WOMEX で永年の功績に対して与えられる WOMEX 賞の今年の受賞者はコロンビアのディーヴァ、トト・ラ・モンポシーナだそうです。

 コロンビアの音楽は南米のご多分にもれず、複合的、重層的だそうですが、トト・ラ・モンポシーナはカリブ海のアフリカ系の伝統をベースにしている人で、そこに先住民とスペインの伝統も絡んでいるらしい。バックは4種類の太鼓からなるタンボーレス。音程の異なる太鼓が生みだすポリリズムに乗るトトのヴォーカルは野太いというと語弊があるかもしれませんが、まさに「地母神」のようなエネルギーと包容力を備え、かつ肝っ玉母さんというと古いかもしれませんが、近所のまとめ役のおばさんのような気さくな唄でもあります。

 筆者はどちらかというと「北」の音楽に惹かれる方ですが、この人だけは80年代半ばにやはり WOMAD 関連で知って以来、ずっとファンでありまして、今回の受賞はめでたい。コロンビアの状況の反映か、録音は4枚しかないので、全部買って聞いてください。どれも傑作、力作です。ガルシア=マルケス『百年の孤独』にも書かれた、バナナ・プランテーションの悲劇をうたった〈Soledad〉は、何度聞いても心の底から揺さぶられます。
 一応本人についての情報はこちら。英語ですが、バンドと一緒の写真もあります。


Discography
Music of the Atlantic Coast (Auvidis 4513, 1992)

La Candela Viva (Realworld Records 31, 1992)

CarmelinaCarmelina (MTM, 1995)

Pacanto (Colombia: MTM/Europe:Nuevos Medios/USA: World Village, 2000)


 ちなみに WOMEX 賞は1999年以来、「七人の侍」と呼ばれる審査員が選んでいるもので、これまでの受賞者は Juan de Marcos and Nick Gold (1999)、Mahotella Queens (2000)、Nusrat Fateh Ali Khan (2001) 、Jivan Gasparyan (2002)。2003年は個人ではなく団体で、Freemuse - The World Forum on Music and Censorship。2004年は Marc Hollander と Crammed Discs。そして昨年は百歳に近いザンジバルのターラブのシンガー Bi Kidude でした。