タムボリンのリストにもありますが、ニック・ジョーンズのライヴ録音が10/09にトピック・レコードからリリースされます。《GAME, SET, MATCH》というタイトルで、1970年代末のライヴの録音の由。

 ニック・ジョーンズのライヴ録音は、夫人が呼びかけて集めたプライヴェート録音から作ったものが以前出ています。今回はトピックから、いわば公式リリースなので、音質や演奏も望みうる最高のものと期待できます。

 ちなみにニック・ジョーンズは1970年代、ブリテンのフォーク・リヴァイヴァルの一角を担った名シンガー&ギタリスト。人懐こさがそのまま形になったような、ほのかな明るさを感じさせる暖かい声の持ち主。ギタリストとしては、オープン・チューニングの弦に、右手首を回転させて中指ないし薬指を叩きつける独特の奏法で、ビートを強調したバラッド演奏を生みだしました。スタジオ録音としては最新のものである《PENGUIN EGGS》 (1980) にその完成形が聞けます。これもトピックから今はCDとして出ています。

 余談ですがこのアルバムの冒頭の曲〈Canad-ee-i-o〉は、後にボブ・ディランがほとんどそのままカヴァーしました。

 1982年に交通事故で脳に損傷を負い、奇跡的に一命はとりとめましたが、音楽家として公の演奏は以来していません。
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 悲劇的な形で音楽家生命を絶たれたこともありますが、ニック・ジョーンズと聞くだけで血が騒ぐのは、かれの残した録音のすばらしさの故でもあります。数は少ないながら、どれも珠玉と呼んで良いものばかり。

 また、あまり前面には出しませんがフィドルの名手でもあり、例えばショウ・オヴ・ハンズのフィル・ビアのようなイングランドのフィドラーに与えた影響は大きいものがあると、ビア自身が言っています。

 録音としてすぐ浮かぶものにセカンド・アルバムのバラッド〈Edward〉や3作目《NOAH'S ARK TRAP》の〈Jackie Tar〉がフィドル伴奏ですが、手に入りやすいものとしてはシャーリィ・コリンズ&アルビオン・カントリー・バンド《NO ROSES》があります。この中の〈The murder of Maria Marten〉の後半のフィドルとコーラスがニック・ジョーンズです。

 ニック・ジョーンズはまたメアリ・ブラックに大きな影響を与えたことでも知られます。メアリの出世作〈Annachie Gordon〉はやはり《NOAH'S ARK TRAP》収録のヴァージョンのカヴァーです。