ダブリンのクラダ・レコードの今月の新入荷のタイトルです。コメントはクラダからのものを元にしています。


ONCE I LOVED. Sarah & Rita Keane. CC4CD
 ドロレス・ケーンのおばさんたちである姉妹の1969年リリースのCD復刻。ドロレスのレパートリィの源泉でもあります。生まれてからずっと一緒に生活してきた姉妹は、うたうときも常に一緒で、その結果アイルランドの伝統音楽では極めて稀なコーラスの形を作りあげました。そのコーラスはハーモニーというほど複雑なものではなく、ユニゾンでもない、美しくずれているとしかちょっと言いようのないものです。また、ドロレスからは一世代上に当たり、ゴールウェイでも古い形のアイルランド語歌唱の伝統を伝えている点でも貴重です。
 ちなみに筆者はドロレス・ケーンと表記しますが、それはこのアルバムのオリジナルLPのライナーに「ケーン」と発音すると書かれているため。

HUMDINGER. Paul Brock & Enda Scahill. BMCD 001
 アコーディオンとバンジョーによる、20世紀最初の30年間のアメリカ合州国におけるアイリッシュ・ミュージックの再現。とすれば、デ・ダナンが先駆けとなり、最近ではデイヴ・マネリィが追究している路線ですが、この二人も当時の音楽を21世紀に蘇らせているようです。

CEOL, SCE/ALTA & AMHRA/IN. Seamus Ennis. CEFCD 009
 パイパー、シンガー、コレクター、キャスターであったシェイマス・エニスの長らく入手不可能だった録音の復刻。唄とパイプとホイッスル演奏。各曲や歌の背景の本人による解説も録音されており、その部分(アイルランド語)の英訳とアイルランド語原詞も付いているそうです。演奏もさることながら、これは歌うたいとしてのエニスの録音としてベストの由。

TURAS CEOIL. Marcas O/ Murchu/. CICD 163
 ベルファストのフルート奏者のセカンド。出身はベルファストですが、音楽はスライゴ、ロスコモンの色が濃いそうです。また、ドニゴールの影響もかなりあるらしい。ファーストはすばらしかったので、これも期待できそうです。共演しているのはアルタンの Ciaran Curran、あるいは Oisin Mac Diarmada から Ben Lennon、Seamus O’Kane、さらには教え子の若手まで。

IN SAFE HANDS. Aidan O’Donnell & Kieran Munnelly. MOD 001
 エイダンはドニゴールのフィドラー、キアランはメイヨーのフルーティスト。共に20代前半のデュオのデビュー作。キアランはバゥロンも叩きます。レパートリィは各々の出身地のローカルなもの。若手らしく、いろいろ冒険しているらしい。

THE SPOONS MURDER AND OTHER MYSTERIES. Con O/ Drisceoil. CRCD 005
 Con Fada とも呼ばれるこの人は一級のアコーディオン奏者であると同時に、ユーモラスな唄の作り手、歌い手としても有名で、これはその唄のほうの録音。ブックレットではなく、ハードカヴァーの本にCDが付く形。価格は普通のCDと同じです。
 ユーモアは文化圏の境界を越えるのが難しいですが、文章では唄の背景まで踏みこみ、夫人(?)の手になるイラストまで付いているそうなので、挑戦する価値はあるかも。

AROUND THE WORLD FOR SPORT. The Doon Ceili Band. SHCD 23001
 数少ないアメリカのケイリ・バンドの中でも最高のものの録音。これが貴重なのはこのバンドでは1960年代に Paddy O’Brien of Offaly が在籍したことで、かれの影響が残り、レパートリィやアレンジが普通ではないもののため。ひょっとすると全アイルランド・チャンピオンもとれるかもしれないそうです。

THE HUMOURS OF PLANXTY. Leagues O’Toole
 334ページにわたるプランクシティの伝記。現在までの4人のオリジナル・メンバーの足跡をたどるもの。
 ついに出てきました。タイトルがまずいいなあ。
 それにしても、誰かミホールの伝記を書いてくれ。