東京・国分寺駅前の飲み屋「ラヂオキッチン」で開かれていた森洋利さんの写真展連動イベントとして、カヴァル&ネイの石田秀幸さん、サズ&タンブーラ&ヴォーカルの石田みかさんのライヴがありました。
石田夫妻は東欧、北欧の音楽をレパートリィとするバンド、ナカトルマのメンバーでもあります。
休憩をはさんで、前半では主にトルコの唄とダンス・チューン。後半ではヨーロッパ側のトルコからマケドニア、ブルガリアとバルカン半島をめぐるプログラム。
前半ではほとんどサズとネイの組合せで、ゆったりとたゆたい、装飾音も微妙な陰翳を帯びた曲が続きました。もともとサズは民衆の音楽、ネイは宮廷の古典音楽の楽器で、この二つが共演することは本来はないそうですが、音楽として聞く分にはまことに良い組合せで、どちらが主とも従ともつかず絡みあってゆくのに耳を傾けていると、日常世界からさりげなく切りはなされます。
みかさんのヴォーカルもすばらしく、芯のある声域の低い声とあいまって、柔らかい舌が空気を溶かすようでもあります。
サズは大きく胴のふくらんだ形の復弦三コース。間近で演奏を見て初めて気がつきましたが、ストロークをしながら、右手の中指と薬指で楽器の表面を叩くことがあります。録音では打楽器奏者が別にいると思っていたのですが、どうやらこの奏法の音だったらしい。サズではごく普通の奏法の由ですが、アクセントとしてひじょうに効果的でした。
ネイとカヴァルの違いは実質的にはほとんど無く、いわばヴァイオリンとフィドルの違いのように、使われるジャンルや環境、楽器に向かう基本的な姿勢によるものらしい。
いずれにしても指穴の他に穴が無く、唇に斜めに当てることで音を出す仕組みですから、当てる角度や唇の形によって音がいろいろに変化します。かすれる音も出せる、澄んだ音も出る。ホイッスルやリコーダーよりも楽器自体の表現力はずっと大きいでしょうが、その分、演奏にも高度の技量が要求されます。
トルコはトルコそのものというよりも異次元世界へのトリップでしたが、後半は、がらりと変わって、ここはもうバルカンの夜。お客で来ていた、ご友人のブルガリア人「ダンチョ」氏がガダルカで飛び入りされたので、ますますそのにおいが強くなりました。カヴァルとガダルカをタンブーラが支えるという形は初めて聞くもので、ひじょうに新鮮。ふだんこの辺の曲を聞く大編成のバンドやブラス・バンドの形よりも、曲そのものの良さ、魅力が浮きでてきます。
前半と後半の対照の妙、前半抑えた分後半爆発したようなエネルギー、各種の楽器を操り、様々に地域、スタイルの違う音楽を演奏しわける技量には感嘆しましたが、まだまだこれは氷山の一角ではありましょう。
ぜひ、CDなどで録音を出していただきたいところですが、その前にナカトルマのアルバム製作が年末から始まるそうです。こちらも楽しみ。
トイレの中まで店内のありとあらゆるスペースに展示された森さんの写真も見応えがありました。植物の一部を大きく拡大する形がメインで、タンポポの綿毛にとまったちっぽけなバッタとか、二輪草の開きかけた蕾の写真が印象的でした。
森さんのつながりで、ニッケルハルパの鎌倉さんなど、北欧音楽関係の方々が見えていました。スウェーデンのクラシック作品の演奏を精力的にされているステーンハンマル友の会の和田紀代さんもいました。他の北欧諸国と違い、国を代表する大作曲家がいない分だけ、かえって面白いらしい。表参道のカワイで毎週土曜、サロン・コンサートをされている他、今週水曜日には、ヴォーカル、ピアノ、ギター、ヴァイオリンによるライヴもあるそうです。
奄美産のラムも旨かった。外はこの秋になって一番寒い夜でしたが、ほくほくと良い気分で家路についたことでした。(ゆ)
石田夫妻は東欧、北欧の音楽をレパートリィとするバンド、ナカトルマのメンバーでもあります。
休憩をはさんで、前半では主にトルコの唄とダンス・チューン。後半ではヨーロッパ側のトルコからマケドニア、ブルガリアとバルカン半島をめぐるプログラム。
前半ではほとんどサズとネイの組合せで、ゆったりとたゆたい、装飾音も微妙な陰翳を帯びた曲が続きました。もともとサズは民衆の音楽、ネイは宮廷の古典音楽の楽器で、この二つが共演することは本来はないそうですが、音楽として聞く分にはまことに良い組合せで、どちらが主とも従ともつかず絡みあってゆくのに耳を傾けていると、日常世界からさりげなく切りはなされます。
みかさんのヴォーカルもすばらしく、芯のある声域の低い声とあいまって、柔らかい舌が空気を溶かすようでもあります。
サズは大きく胴のふくらんだ形の復弦三コース。間近で演奏を見て初めて気がつきましたが、ストロークをしながら、右手の中指と薬指で楽器の表面を叩くことがあります。録音では打楽器奏者が別にいると思っていたのですが、どうやらこの奏法の音だったらしい。サズではごく普通の奏法の由ですが、アクセントとしてひじょうに効果的でした。
ネイとカヴァルの違いは実質的にはほとんど無く、いわばヴァイオリンとフィドルの違いのように、使われるジャンルや環境、楽器に向かう基本的な姿勢によるものらしい。
いずれにしても指穴の他に穴が無く、唇に斜めに当てることで音を出す仕組みですから、当てる角度や唇の形によって音がいろいろに変化します。かすれる音も出せる、澄んだ音も出る。ホイッスルやリコーダーよりも楽器自体の表現力はずっと大きいでしょうが、その分、演奏にも高度の技量が要求されます。
トルコはトルコそのものというよりも異次元世界へのトリップでしたが、後半は、がらりと変わって、ここはもうバルカンの夜。お客で来ていた、ご友人のブルガリア人「ダンチョ」氏がガダルカで飛び入りされたので、ますますそのにおいが強くなりました。カヴァルとガダルカをタンブーラが支えるという形は初めて聞くもので、ひじょうに新鮮。ふだんこの辺の曲を聞く大編成のバンドやブラス・バンドの形よりも、曲そのものの良さ、魅力が浮きでてきます。
前半と後半の対照の妙、前半抑えた分後半爆発したようなエネルギー、各種の楽器を操り、様々に地域、スタイルの違う音楽を演奏しわける技量には感嘆しましたが、まだまだこれは氷山の一角ではありましょう。
ぜひ、CDなどで録音を出していただきたいところですが、その前にナカトルマのアルバム製作が年末から始まるそうです。こちらも楽しみ。
トイレの中まで店内のありとあらゆるスペースに展示された森さんの写真も見応えがありました。植物の一部を大きく拡大する形がメインで、タンポポの綿毛にとまったちっぽけなバッタとか、二輪草の開きかけた蕾の写真が印象的でした。
森さんのつながりで、ニッケルハルパの鎌倉さんなど、北欧音楽関係の方々が見えていました。スウェーデンのクラシック作品の演奏を精力的にされているステーンハンマル友の会の和田紀代さんもいました。他の北欧諸国と違い、国を代表する大作曲家がいない分だけ、かえって面白いらしい。表参道のカワイで毎週土曜、サロン・コンサートをされている他、今週水曜日には、ヴォーカル、ピアノ、ギター、ヴァイオリンによるライヴもあるそうです。
奄美産のラムも旨かった。外はこの秋になって一番寒い夜でしたが、ほくほくと良い気分で家路についたことでした。(ゆ)
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