6月のチーフテンズの来日公演のゲストに元ちとせが入ってますが、この組合せで録音もしていて、もうすぐリリースされます。これは新聞記事にもなっているのかな。

 今回録音したのは2曲だそうで、1曲はいまどきのJポップ調ですが、もう1曲が〈シュール・アルーン〉で、これは絶品です。いわずとしれた名曲で、また名演の多い曲ですが、名だたる名演の中においてもこれは一、二を争う録音だと思います。

 元ちとせは周囲の思惑は別として、本人はどこまでも音楽伝統の中に生きている人なんでしょう。伝統の中で生き、うたっていることは、一時的刹那的な環境でうたうのとは本質的に違う。伝統歌をうたうことで、元ちとせ本来の資質が現れているようです。

 そこにはまたチーフテンズのバックも大きく作用していると思います。元ちとせの伝統歌のうたい手の資質を引きだしているわけです。

 沖縄音楽とアイリッシュ・ミュージックの親近性はつとに指摘もされ、実例もありますが、奄美の裏声があそこまではまるとはちょっと意外でもありました。ただ、これにはこの曲の特性もあるかもしれません。

 加えて、コーラス部分のアイルランド語のみごとさ。パディ・モローニも驚いたそうですが、これもまた伝統歌謡のうたい手としての資質の大きさを物語るものでもあります。元ちとせはアイルランド語はもちろん、英語もからきしダメだそうで、この唄に関しては完全な「耳コピ」だった由。だからこそ、まるでアイルランド語が母語であるかのような歌唱ができたのだと思います。

 ということで、チーフテンズと元ちとせの組合せは歴史を画する、というと大げさかもしれませんが、それくらいのインパクトはあります。録音のリリースも楽しみですが、ライヴもまたひじょうに楽しみであります。できればこのコンビでフル・アルバム1枚作って欲しい。