バーンズ生誕250年記念カウント・ダウンの Linn Records のフリー・ダウンロード、今週は〈Ae fond kiss〉です。
シンガーは Mae McKenna。Linn の《THE COMPLETE SONGS OF ROBERT BURNS》 の第8集に収録。
バーンズのうたのなかでも最も有名なもののひとつです。原詩と試訳です。
甘いくちづけをひとつ、それてお別れ
ごきげんよう、お達者で、これで今生の別れ
胸の奥で心臓からしぼられる涙よ、そなたからは離れまい
せめぎあうため息とうめきよ、そなたのなすがまま
運命の女神の男を哀しませるとは誰が言うぞ
希望の星に見すてられるというのに
わたしには輝きに心楽しい星とてない
黒暗の絶望に包まれるのみ
ひとりよがりの想いこみを責めはすまい
わがナンシィにあらがえる者などいない
ひと目見れば、皆惚れこむ
愛さずにはいられぬ、いついつまでも
あれほど深く愛さなければ
あれほどいちずに愛さなければ
会うことさえなければ、別れることもなかった
心破れることもなかった
ごきげんよう、初恋の、誰よりも美しい人よ
ごきげんよう、この上なく、いとしい人よ
ありとあらゆる歓びと冨の御身にあらんことを
平安と歓びと愛と愉悦のあらんことを
甘いくちづけをひとつ、それてお別れ
ごきげんよう、お達者で、これで今生の別れ
胸の奥で心臓からしぼられる涙よ、そなたからは離れまい
せめぎあうため息とうめきよ、そなたらのなすがまま
Ae fond kiss, and then we sever;
Ae fareweel, alas, for ever!
Deep in heart-wrung tears I'll pledge thee,
Warring sighs and groans I'll wage thee.
Who shall say that Fortune grieves him,
While the star of hope she leaves him?
Me, nae cheerful twinkle lights me;
Dark despair around benights me.
I'll ne'er blame my partial fancy,
Naething could resist my Nancy:
But to see her was to love her;
Love but her, and love for ever.
Had we never lov'd sae kindly,
Had we never lov'd sae blindly,
Never met-or never parted,
We had ne'er been broken-hearted.
Fare-thee-weel, thou first and fairest!
Fare-thee-weel, thou best and dearest!
Thine be ilka joy and treasure,
Peace, Enjoyment, Love and Pleasure!
Ae fond kiss, and then we sever!
Ae fareweeli alas, for ever!
Deep in heart-wrung tears I'll pledge thee,
Warring sighs and groans I'll wage thee.
バーンズは実はかなり多情な人だったようですが、最愛の相手はやはりこの詩が生まれるきっかけとなった Agnes MacLehose だったのでしょう。絶唱、といっていいとおもいますが、うたとしてうたわれるとむしろ噴きだす想いをおさえ、諦めようとつとめる姿が浮かびあがることが多い。
このヴァージョンでは、メイ・マッケナが珍しく無伴奏でうたっています。メロディも他では聞けないもので、一般的なメロディよりも表面と内面の落差と葛藤がより強く感じられます。
メイ・マッケナは60年代から活動しているベテランですが、歌唱にやや甘いところがあって、正直愛すべきB級という印象でした。それが CSRB ではその甘さがバーンズのうたの波長と合ったのか、むしろうたの生地をあらわにしています。Vol. 6 と 8 に計7曲うたっているどれも名唱です。(ゆ)
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