120. 〈Done With Bonaparte〉Niamh Parsons《Heart's DesireHeart's Desire》2002
    Niamh Parsons: vocal
    Mick Kinsella: harmonica
    Graham Dunne: steel string guitar




 『聴いて学ぶ アイルランド音楽』刊行記念イベント@新宿ディスク・ユニオンでかけたうたの歌詞の大意その1です。マーク・ノップラーの〈Done with Bonaparte〉。本では120頁に出てきます。本文中では〈ボナパルトはもう結構〉としましたが、ニュアンスとしては「くそったれボナパルト」とか、「死んじまえ」ぐらいが近いかもしれません。

 19世紀アイルランド庶民の精神で20世紀に書かれたうた。ナポレオンのロシア遠征に従軍した一フランス人兵士の視点を借りて、兵士もまた戦争の犠牲者であることをうたいます。第三連にある "We prayed these wars would end all wars" は "the war that ends all wars" すなわち第一次大戦のプロパガンダを基にしているのでしょう。

 「ちびの伍長」は当然ナポレオンをさしますが、「ちびの伍長のようなやつ」のひとりヒトラーをも重ねられるでしょう。この兵士の祈りも虚しく、人類は「伍長のようなやつ」を生みだしつづけていることは、周知のとおり。

 作曲者本人の歌唱では芸がないので探したら、ニーヴ・パースンズがうたっていました。やはり、この人のうたは一段レベルがちがいます。この人がうたうと現代曲でも伝統の衣をまといます。このうたの場合も、もともと伝統の香りを放っているものが、さらに深く伝統になじみます。

 珍しくハーモニカが伴奏ですが、ミック・キンセラはアイルランドの名手のひとりでソロ・アルバムもあります。ちなみにアイルランドは、ブルース・ハープではないハーモニカ演奏の伝統があります。ギターのグレアム・ダンは、このところパースンズが組んでいるギタリスト。


(歌詞大意)
モスクワが燃えてからこっち、いやもうひどいもんだ
コサックどもにばらばらにひき裂かれ
味方の死体は何百キロにもわたって続いている
もっとも死んじまうほうがどれほどありがたいか
われらが偉大なる軍は服はぼろぼろ
がりがりで凍傷だらけのこじきの群れ
おたがい食べこぼしをねずみのようにかっさらって
なぐりあいをはじめる始末

コーラス:
神さま、おれの魂をお救いください
この一兵卒のこころをいやしてください
神さまを信じて頼みます
もうボナパルトはこりごりです

あいつがおれたちにどんな夢をみせたとおもう
スペインの空、エジプトの砂
世界はわれらがもの、いざ行かん
あのちびの伍長は号令したもんだ
おれはアウステルリッツで片目がつぶれた
サーベルに切られるとそりゃあ痛いんだぜ
おれのあの娘はまだちゃんと待っててくれる
アキテーヌの花といわれた娘

コーラス

娘はおれのことを祈ってくれるから、おれもあの娘のことを祈る
うるわしきフランスへ無事帰れますように
このいくさのおかげでもういくさなんぞなくなりますように
いくさにロマンチックなところなんぞまるでないよ
おれたちの子どもたちはあのちびの伍長みたいなやつに
二度とでくわしませんように
外国の岸を指して
人びとの心をかきたてるようなやつには

コーラス