Robert Burns: The Complete Songs, Vol. 1 リン・レコードのロバート・バーンズ生誕250年記念《THE COMPLETE SONGS》からのフリー・ダウンロード、今週はこのうた

 なお  Canongate 版全詩集では〈The gardener wi' his paidle〉のタイトルになっています。1790年発表。"paidle" はスコットランド語で「鍬」のこと。鍬で触れるだけでなんでも肥料を入れる力を備えた男のうた。

 うたうのは、今は亡きトニィ・カフ (1954-2001)。かれは Alba、Jock Tamson's Bairns、Ossian の三つのバンドを渡りあるいて活躍。いずれも1970年代後半にスコットランド音楽を大いに発展させたグループです。アルバはハイランド・パイプを初めてフィーチュアしたアンサンブルで人気を博しました。あとの二つは80年代にかけて、スコットランドのうたをうたうバンドとして大きな業績を残しました。

 ハイランド・パイプを前面にたてたロック・バンドが近頃流行のようですが、その源はこのアルバです。ここにいたパイパーが移籍した The Tannahill Weavers が流れを受け継ぎ、発展させ、後には Battlefield Band、The Iron Horse、Deaf Shepherd と続きます。とこれは余談。

 カフはこの《THE COMPLETE SONGS》シリーズ立ち上げにもかなり貢献しているそうで、第1集、2集に10曲うたっています。この録音はシリーズ劈頭、第1集 (1995) の1曲めを飾りました。


 カフは参加できませんが、今月24日、バーンズ250回目の誕生日の前日に、グラスゴーで開かれる Celtic Connections のイベントのひとつとして、《THE COMPLETE SONGS》参加ミュージシャンたち60名以上が勢揃いしてバーンズのうたをうたうコンサートが開かれます。正午から真夜中まで12時間ノン・ストップという前代未聞、空前絶後のイベント。見るほうもたいへんですが、まさに一生に一度の体験でしょう。なんらかの記録はとられるはずですから、ライヴ盤も期待しましょう。(ゆ)


(歌詞対訳)
薔薇の皐月の花とともにやってきて
村の家々を一面明るい緑にかざるころ
それはそれは忙しくなるのが
鍬の手をもつあの農夫

水きよらかにながれ落ち
啼く鳥はみな愛をうたい
そよ風はかぐわしい薫りで包むよ
鍬の手をもつあの農夫

壮麗な朝に野うさぎがおどろくは
早くからの朝食にそっと忍びよられたから
すると朝露をかきわけて一心に耕すのは
鍬の手をもつあの農夫

日の西に沈むころ
カーテンを引いて自然が休むころ
最愛の妻の待つもとへと飛んで帰るよ
鍬の手をもつあの農夫も