Linn Records の《THE COMPLETE SONGS OF ROBERT BURNS》によるロバート・バーンズのうた探訪、その6。第6集 (1999) 収録。シンガーは James Malcolm。
典型的なジャコバイト・ソング。第2〜4連はバーンズのオリジナルと考えられています。
1603年にエリザベス1世の死によってテューダー朝の王統が絶え、血縁であったスチュアート朝スコットランド王ジェームズ6世がイングランド王ジェームズ1世として即位し、同君連合として事実上の連合王国が成立します。このスチュアート朝はクロムウェルによる中断を経て、1688年名誉革命によって王位を追われ、連合王国の王にはオランダ公ヴィーレムがウィリアム3世として迎えられます。スコットランドでは追われたジェームズ2世/7世およびその直系の子孫を立ててスチュアート朝を復興しようとする勢力があり、かれらは「ジャコバイト」と呼ばれました。
ジェームズはカトリックだったため、アイルランドに進出してロンドン政府転覆をはかりますが、1690年にボイン川で破れてフランスに逃げ帰ります。アイルランドではこれ以後、プロテスタント優位時代、いわゆる Ascendency の時代になるわけです。
一方、スコットランドでは1715年、1745年の二度の反乱に破れて、ジャコバイトは政治的には完全に力を失います。この反乱まではジャコバイトはハイランドのゲーリック文化に属する、いわば古い勢力が中心でしたが、反乱を潰したロンドン政府がスコットランド文化を徹底的に弾圧したことと、ロンドン政府側を支持したにもかかわらず、経済的見返りがなかったことから、ロゥランドの英語圏スコットランド人の間にも反イングランド感情が広がりました。そして特に1745年の通称「ボニー・プリンス・チャーリー」の反乱のヒーロー、ヒロインたちにこの感情が託されて、たくさんのジャコバイト・ソングが生まれます。
これらのジャコバイト・ソングは、アイルランドのレベル・ソングと同様な役割を担い、スコットランドの英語による伝統音楽の一部として、小さくない部分をつくってきました。バーンズのうたの中でも、ジャコバイト・ソングは人気の高いものです。
この録音でのギターとハーモニカはジェイムズ・マルコム自身。マルコムは一時オールド・ブラインド・ドッグスに参加したりしていますが、基本的にはソロの人。ハーモニカをよくするように、ブルースが出発点のようですが、録音はほとんど伝統音楽ないし伝統音楽をベースにしたオリジナルです。《THE COMPLETE SONGS》では4、5、6の各集に計8トラック参加。
打楽器はおそらく Stevie Lawrence でしょう。Old Blind Dogs とともに1990年代のスコティッシュ・シーンを引っ張った The Iron Horse で名をあげますが、元々はグラスゴーでパブ・ロックをやっていて、80年代にルーツに転向しています。セッション・ミュージシャン、プロデューサーとして多彩な活動をしていますが、最近では何といってもレッド・ホット・チリ・パイパーズがめだちます。
以下の歌詞大意で、「ホイッグ」はジェームズ2世に王の資格なしとしたイングランド議会の1688年の決議を、スコットランド議会が1689年に追認した際、その決議を指導した一派をさします。かれらは長老派教会を代表し、ジェームズのカトリック信仰を不満としたのでした。
また「薊」はスコットランドの紋章、「薔薇」はヨーク公でもあったジェームズの紋章です。
(歌詞大意)
コーラス:
かえれ、出ていけ、ホイッグどもよ
かえれ、出ていけ、ホイッグども
やくざな裏切り者の一党め、おまえらがいて
良いことなどなにもない
薊は生き生きと美しく
薔薇もきれいに咲きそろう
そこへ来たホイッグどもは6月の霜
われらが花はみな枯れた
コーラス
代々伝えしわれらが王冠は地に落ちて
悪魔が塵に埋めつくした
歴代の王の名をやつの黒い本に封じこめた
ホイッグどもに力を与えたのも悪魔の輩
コーラス
われらが教会と政府の衰えた様は
わたしにはもはやうたいようもない
ホイッグどもはまさに災厄
われらがもはや栄えることなし
コーラス
断固たる復讐の神の眠って久しいが
その目覚めに立ち会うことのあらんことを
神よ、王族どもの野兎のように
狩られる日を到来させたまえ
コーラス
典型的なジャコバイト・ソング。第2〜4連はバーンズのオリジナルと考えられています。
1603年にエリザベス1世の死によってテューダー朝の王統が絶え、血縁であったスチュアート朝スコットランド王ジェームズ6世がイングランド王ジェームズ1世として即位し、同君連合として事実上の連合王国が成立します。このスチュアート朝はクロムウェルによる中断を経て、1688年名誉革命によって王位を追われ、連合王国の王にはオランダ公ヴィーレムがウィリアム3世として迎えられます。スコットランドでは追われたジェームズ2世/7世およびその直系の子孫を立ててスチュアート朝を復興しようとする勢力があり、かれらは「ジャコバイト」と呼ばれました。
ジェームズはカトリックだったため、アイルランドに進出してロンドン政府転覆をはかりますが、1690年にボイン川で破れてフランスに逃げ帰ります。アイルランドではこれ以後、プロテスタント優位時代、いわゆる Ascendency の時代になるわけです。
一方、スコットランドでは1715年、1745年の二度の反乱に破れて、ジャコバイトは政治的には完全に力を失います。この反乱まではジャコバイトはハイランドのゲーリック文化に属する、いわば古い勢力が中心でしたが、反乱を潰したロンドン政府がスコットランド文化を徹底的に弾圧したことと、ロンドン政府側を支持したにもかかわらず、経済的見返りがなかったことから、ロゥランドの英語圏スコットランド人の間にも反イングランド感情が広がりました。そして特に1745年の通称「ボニー・プリンス・チャーリー」の反乱のヒーロー、ヒロインたちにこの感情が託されて、たくさんのジャコバイト・ソングが生まれます。
これらのジャコバイト・ソングは、アイルランドのレベル・ソングと同様な役割を担い、スコットランドの英語による伝統音楽の一部として、小さくない部分をつくってきました。バーンズのうたの中でも、ジャコバイト・ソングは人気の高いものです。
この録音でのギターとハーモニカはジェイムズ・マルコム自身。マルコムは一時オールド・ブラインド・ドッグスに参加したりしていますが、基本的にはソロの人。ハーモニカをよくするように、ブルースが出発点のようですが、録音はほとんど伝統音楽ないし伝統音楽をベースにしたオリジナルです。《THE COMPLETE SONGS》では4、5、6の各集に計8トラック参加。
打楽器はおそらく Stevie Lawrence でしょう。Old Blind Dogs とともに1990年代のスコティッシュ・シーンを引っ張った The Iron Horse で名をあげますが、元々はグラスゴーでパブ・ロックをやっていて、80年代にルーツに転向しています。セッション・ミュージシャン、プロデューサーとして多彩な活動をしていますが、最近では何といってもレッド・ホット・チリ・パイパーズがめだちます。
以下の歌詞大意で、「ホイッグ」はジェームズ2世に王の資格なしとしたイングランド議会の1688年の決議を、スコットランド議会が1689年に追認した際、その決議を指導した一派をさします。かれらは長老派教会を代表し、ジェームズのカトリック信仰を不満としたのでした。
また「薊」はスコットランドの紋章、「薔薇」はヨーク公でもあったジェームズの紋章です。
(歌詞大意)
コーラス:
かえれ、出ていけ、ホイッグどもよ
かえれ、出ていけ、ホイッグども
やくざな裏切り者の一党め、おまえらがいて
良いことなどなにもない
薊は生き生きと美しく
薔薇もきれいに咲きそろう
そこへ来たホイッグどもは6月の霜
われらが花はみな枯れた
コーラス
代々伝えしわれらが王冠は地に落ちて
悪魔が塵に埋めつくした
歴代の王の名をやつの黒い本に封じこめた
ホイッグどもに力を与えたのも悪魔の輩
コーラス
われらが教会と政府の衰えた様は
わたしにはもはやうたいようもない
ホイッグどもはまさに災厄
われらがもはや栄えることなし
コーラス
断固たる復讐の神の眠って久しいが
その目覚めに立ち会うことのあらんことを
神よ、王族どもの野兎のように
狩られる日を到来させたまえ
コーラス
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