本誌今月の情報号で Sue さんに紹介していただいたアイリッシュ・バンジョーの教則本。序文をミック・モローニが書いています。これによればアイリッシュ・ミュージックでのバンジョー、特に今主に使われている4弦のもの、一般に「アイリッシュ・バンジョー」とか「テナー・バンジョー」と呼ばれるものは、やはり比較的新しいものだそうです。
バンジョーそのものがアイルランドに渡るのは19世紀で、1843年とモローニは年号まで特定しています。この年アイルランドに現われたヴァージニア・ミンストレルズが持ちこんだのが、記録に残っている最初ということらしい。この時のバンジョーはまだフレットレス。
バンジョー自体、今の形におちつくまでには様々な形が使われていて、バンジョー・マンドリン(バンドリン?)とかツィター・バンジョーなんかも結構最近まで使われていたそうです。5弦にしても、5本全部が同じ長さのものも広く使われていたんですね。今普及している、一本が他の半分の長さのやつはピート・シーガーが発明したんでしたっけ。
テナー・バンジョーの発明は1910年頃。20年代、30年代にはアメリカのアイリッシュ・ミュージシャンの間でかなり広まったんですが、フィドルと違って、アイルランド本国にはほとんど影響がなかった、というのはなぜなんだろう。
アイリッシュ・ミュージックでテナー・バンジョーが使われるようになるきっかけは1960年代、ダブリナーズのバーニィ・マッケナ。現在の標準チューニングである GDAE もマッケナが始めたもの。本当に盛んになるのは1980年代に入って、とモローニは言いますが、これはたぶんストックトンズ・ウィングの Kieran Hanrahan と、元デ・ダナンの Charlie Piggott が貢献してるんでしょう。
(デ・ダナンの動画では左から二人めがピゴット。ここではジャッキィ・デイリーがいませんね。中央はたぶんジョニィ・モイニハン。こうして見ると、バンジョーとバゥロンとブズーキの普及という点でデ・ダナンの存在は大きかったんですねえ。)
21世紀に入ると、ジェリィ・オコナーとか Kevin Griffin とか Eamon Coyne とか Angelina Carberry とか、それにこのエンダ・スカヒルとか、名手が続々と現われる、という具合。うたもうまい Tom Walsh や、ソーラスのシェイマス・イーガンもいます。
アメリカでもベラ・フレックなんて人もいますが、バンジョーはあらためて注目されているようで、昨年はその辺も含めた特集を fRoots が組んだりしています(298号)。そこでもとりあげられていた Otis Taylor の《RECAPTURING THE BANJO》 は面白いです。
エンダ・スカヒルにもどると、この本はバンジョーのまったくの初心者から上級者まで1冊でカヴァーしようという、いささか欲張りな本です。チューニング、楽器やピックの持ち方から始まって、高度なテクニックまで、噛んで含めるように、懇切丁寧に解説してます。というのは、最初のほうだけ見た感じですが。
ざっと見て目立ったのは、まず「リラックス」が肝心。一にリラックス、二にリラックス、三、四もリラックスで、五もリラックス。
次がアラインメント、つまり筋をそろえろ、ということらしい。
三番目がアップとダウンのストロークのルールを守れ。
付属のCDは2枚。四本の弦の音からという徹底ぶり。曲がたくさん入ってますが、一緒に練習できるように、ゆっくりしたテンポで装飾音も使わないトラックが多いので、曲の構造の勉強にもなります。じっと聞いていると、これならわしにもできそうと思えてくるのはちと不思議。バンジョーは結構好きです、実は。
バンジョーは新しい分、演奏者がまだ少なく、他の楽器のようにセッションなどの場で見よう見まねで覚えることがなかなかできないので、こういうきちんとした教則本は朗報だ、とモローニは言ってます。
わが国でもブルーグラス方面などでバンジョーを弾く人は多いとおもいますが、この本がきっかけでアイリッシュ・バンジョー弾きが増えるとうれしい。
ということで、今年はちょっとバンジョーに注目しようと思います。(ゆ)

コメント
コメント一覧 (10)
なんだかんだでトリプレッツが課題になってくるのでが、1に練習、2に練習、3以降も練習です。練習せなうまくなりません。怠けたら下手になります。
ジグの右手の使い方に関しておもしろい解答がありました。なるほど。
バンジョーってなんだかんだで目立つのでセッションで弾くときは汗だくものです。誤摩化しもききません。そういう意味では一番難しい楽器かもしれません。
はっはっは、そうではないかと疑ってました(^_-)。
> バンジョーってなんだかんだで目立つのでセッションで弾くときは汗だくものです。誤摩化しもききません。そういう意味では一番難しい楽器かもしれません。
バンジョーが5、6人いれば、めだたないのではと愚考します。うるさすぎ?
でも、この本ながめてると、やりたくなってきますね。
なお、バンジョー5,6人は間違いなく犯罪です。
トリプレッツがやはり難しいのです。エンダさんは Down Up Down で弾いて、でその次の音は Down 弾きなさーい、とおっしゃっておられますが、このピックの持っていき方が人間的な速さではまず無理。その点をかのTony McManus さんに伺ってみた所、「気合いだよ、フンッて感じで弾くんだ」とのたまっておられましたが。
バンジョーはギター以上に技巧に誘われるのではないか、と邪推してます。ベラ・フレックも、凄いとは思うが、いいなあ、とは思わんのです。
> なお、バンジョー5,6人は間違いなく犯罪です。
なに、赤信号、みんなで渡ればこわくない、こわくない……。
> トリプレッツがやはり難しいのです。エンダさんは Down Up Down で弾いて、でその次の音は Down 弾きなさーい、とおっしゃっておられますが、このピックの持っていき方が人間的な速さではまず無理。その点をかのTony McManus さんに伺ってみた所、「気合いだよ、フンッて感じで弾くんだ」とのたまっておられましたが。
「人間、訓練しだいでどんなことでもできるようになる」とその昔石森章太郎(まだ「石ノ森」になる前)がのたまわっていて、無邪気にもそういうものかと思ったりもしました。
しかし。
人間、できないことはできないのです。そういうことができるのはもはや人間ではありません。で、音楽をやっているときだけ人間ではなくなるのが真のミュージシャンであらふ。ぶちょーはまだ人間でおられるのでせう。
これは素晴らしいアドバイスです。了解しました。頑張ります。
ただ、人間に戻って来れるかが心配ではあります。独り身ならよいのですが、なんせ嫁持ち子持ちですので。
なに、親がなくとも子は育つ。元々女の方が長生きです。安心して行っちゃって大丈夫。
以前「アイリッシュバンジョー」でウェブ検索していたところ、こちらのメールマガジン?に収録されていた「アイリッシュ・バンジョーへの旅」という文章がヒットし、読ませていただきました。
これを書かれた方の文章を他にも読みたいのですが、こちらのメールマガジンに登録すれば読めますでしょうか?
突然すみませんが、よろしくお願いします。
「アイリッシュ・バンジョーへの旅」の連載は終了していますので、バックナンバーでしか読めません。バックナンバーは個別にお送りしますので、受け取れるメール・アドレスを編集部宛に送ってください。
なお、連載は、もう1回、バンジョー・アルバムをまとめて紹介する予定ですが、筆者のご都合で延びています。夏までにはと期待しています。お楽しみに。
CDやYoutubeでしかバンジョーを聴いたことがなくて、実際はどんな音色なのかを知りたくて、今年はLongford Banjo Festivalに行ってみようと思っていたので、とても面白く読ませていただきました。
著者の方にも、よろしくお伝えください。
> CDやYoutubeでしかバンジョーを聴いたことがなくて、実際はどんな音色なのかを知りたくて、今年はLongford Banjo Festivalに行ってみようと思っていたので、とても面白く読ませていただきました。
よろしければ、ぜひ体験レポートをお願いします。
国内でバンジョーを弾かれる方も増えてきました。パブなどでのセッションで聞けるチャンスもあります。例えば、目黒のシェイマス・オハラでの O'Jizo のセッション・ライヴなど。