という、なかなかおもしろい記事が、少し前ですが Forbes のサイトにでていました。


    アマゾンは「推薦システム」とオン・デマンド印刷製本サービスを組み合わせて、著者と直接関係を作ろうとしている。アマゾンが本の制作、流通、販売を一手に握り、既存の出版社やエージェントを退場させていくだろう。
   
    本のオン・デマンド制作のコストが、アメリカやイギリスでは劇的に下がって、自費出版が容易になった。アメリカでは業界のなかで著者は冷遇されていて、1冊の本の売上からの著者の取り分は最も少ない。したがって著者は自費出版に流れる傾向にある。
   
    問題はいかに出版物を告知し、販売するか、である。その点でアマゾンの「推薦システム」ほど強力なツールはない。それにアマゾンは世界最大の本の売り手だ。だからアマゾンのシステムに乗せることができれば、売れる可能性は最大になるし、ベストセラーも夢ではない。
   
    アマゾンはさらにオン・デマンド印刷製本会社を買収していて、オン・デマンド出版社がアマゾンで本を売りたければ、すべてこの制作会社のシステムを使わなければならない。
   
    こうしてアマゾンは小売り、流通業者、出版社、エージェントを兼ねることになる。それによって本の売上のたとえば65%をとるとすれば、著者の取り分は35%になる。そしてこれまで著者と小売りの間でいわば「口銭かせぎ」をしていた出版社やエージェントは徐々に押し出される。
   
    そしてこうなった世界はこれまでよりもより公平でベターな世界だ。


    というのがこの記事の趣旨ですが、こう書かれてみると、なるほど、そうならない方がおかしいと思えてきます。
   
    アマゾンの「推薦システム」、それをお買いになったのなら、こちらはいかがですか、といううアレですが、これがバカにならないことは多少ともアマゾンを利用したことのある人は実感しているはず。かなり正確に的を射てきます。これを他のオンライン・ショップの推薦に比べてみれば、その違いには唖然とさせられます。このシステムは1998年にアマゾンが買収した Junglee という会社が開発したテクノロジーだそうです。
   
    英米のオン・デマンド制作の質も上がっていて、形だけではオン・デマンドか、通常の大量印刷・製本かは見分けがつきません。今日来た Urdu Project の Hoshruba もいわゆる trade paperback、大判のペーパーバックですが、オン・デマンド出版でした。オン・デマンドのリプリント専門の出版社もあります。

    制作・流通・宣伝コストが下がることで、出版がやりやすくなることは当然です。HOSHRUBA  のように、従来ならば出版などまったく考えられなかった本の刊行も可能になります。出版点数は多いに越したことはありません。「ゴミ」ばかり多くても意味はない、という意見もありましょうが、「どんなものでも99%はゴミ」なのであります。ならば、母体となる数が増えるほどに、「ゴミ」ではないものの数も増えるのです。そしてまた本のような文化の世界では、ある人にとっての「ゴミ」が別の人にとっては「宝物」でもあります。生物と同じく、文化的産物は多様性が大きくなるほどに、生命力も増します。
   
    わが国での出版をめぐる事情、たとえば1冊の本の売上から各関係者が得る収入の割合などは英米とは違うわけですが、出版活動全体が置かれている環境は共通でしょう。ひょっとするとアマゾン・ジャパンが文芸社を買収するかもしれません。

    ところで、わが国でのオン・デマンド出版事情はどうなんでしょう?>くわしい方。(ゆ)


Thanx! > Mr Ashok K Banker for leading me to the article.