Ragus: A Unique Irish Experience [DVD] [Import]    3度目の日本ツアーにやってきたアイリッシュ・ダンスと音楽のショウ「ラグース」の初日に行ってきました。結論から言うと、ダンス的にはちょと物足りない、音楽的には最高。初日ということで、音響、特に群舞のときのタップのPAのバランスがあまりうまくとれてなかったこともあると思います。ただ、全体にかっちりと作りこみすぎていて、ユーモアや遊びの要素が前2回より少かった気がします。
   
    その中で光っていたのが、ロナン・シャーロックのダンス。この人の動きには根っからのユーモアのセンスがあって、何を踊っても踊り自体がにこにこしている。華があります。意表をつくフレーズや動きを連発するのが、見ていてとても気持ちが良い。練習で身につくものとは別の才能でしょう。とりわけ、前半、客席の通路を踊りながら入ってきて、無伴奏でソロで踊ったのがハイライトでした。あれはできればもう一度見たい。『リバーダンス』でも来日していたようですが、『ラグース』では男性がふたりだけなので、よくめだつし、たっぷりとダンスを味わえます。
   
    男性二人は靴にマイクがつけられていたようで、だから客席で踊ることも可能になっています。この辺は技術革新ですね。
   
    バンドはこれまでの中で最もレベルが高いでしょう。パイパーは初回のマイキイ・スミスが飛び抜けてますが、今回のショーン・マカーシィもかなりの腕です。スミスとは対照的にレギュレイターはほとんど使いませんが、その代わりというか、チャンターを操る指の動きは大したもので、パディ・キーナンの若い頃を彷彿とさせます。
   
    今回のバンドの華はなんといってもフィドルとバゥロンのファーガル・スカハル。小粋な帽子をかぶって、ダンサーたちに負けじと演奏しながらぴょんぴょん跳びはねたり、とにかくフィドルを弾くのが楽しくてしかたがないのがよくわかります。
   
    そしてそのフィドルたるや、尋常のフィドラーでは絶対に思いつかないようなフレーズや装飾音をたて続けに放ったり、絶妙の音のはずしをしたり、それでいて曲そのものは十分にうたわせる。ダンスのギャラハーと同じく、天才を感じさせます。ゴールウェイ出身ということで、フランキィ・ゲイヴィンの若い頃のライヴもこんな感じだったのではないか、と思いました。
   
    ラストで聞かせたバゥロン・ソロもとても面白く、技量云々の前に音楽のセンスが磨かれているのでしょう。客席とコミュニケーションをとるのもうまく、これからのアイリッシュ・ミュージックのスターになるはず。
   
    ギターのロナン・ブレナンとキーボードのキアラン・マーデリングは、派手なところはありませんが、シュアな演奏で演奏の土台を支えていました。ロナンも陽気な質のようで、キーボードとリズムを合わせるのを体で強調したり、フィドルのファーガルと一緒にとびはねたり。ちょっとギターの音のバランスが良くなかったのが惜しい。
   
    バンドとしても、公演を重ねていることもあるのでしょう、良く練りあげられています。一度、バンドだけをたっぷりと聞いてみたくなりました。
   
    個人的に密かに期待していたシンガーのディアドラ・シャノンは、その期待を上回る、すばらしいシンガーでした。〈Song for Ireland〉は誰がうたっても名唱になる名曲ですが、そこに並べても五指に入ると思います。アップテンポのうたも聞いてみたい。
   
    会場の東京フォーラムCホールは満席。平均年齢は、たとえば「ケルティック・クリスマス」よりも高く、年配のカップルも結構いました。根拠はなにもありませんが、なんとなく、こういうショウが根付いていることを感じました。
   
    ロビーで関連グッズが販売されていました。公式のテーブルではパンフレットの他に、前から出ている『ラグース』のCDと、フィドルのファーガル、パイプのショーン、シンガーのディアドラのCDが販売されてます。帰りには売り切れてました。開演前に買っておいたので、これらについては後ほど。
   
    それと、ダンス衣裳やTシャツなどの衣服はじめ、アイルランド関連グッズの販売コーナーがあり、終演後は黒山に人だかり。
   
   
    帰りは東京駅まで地上を歩き。金曜の夜とて、結構人が出ていました。中央線快速は、ラッシュ時に御茶ノ水のあたりで非常ボタンが押されたとかでダイヤが乱れ、9時半というのにホームに人があふれんばかりでした。やっぱり都心は人が多いなあ。(ゆ)
11/23(月)追記
男性ダンサーのお名前をとりちがえていました。たいへん失礼しました。訂正しました。