Irish Book of the Decade 候補作のおさらい その3パトリック・マッケイブは1955年モナハン生まれの作家。出発は児童書だが、4作目の THE BUTHCER BOY (1995) で注目される。これと6作目の BREAKFAST IN PLUTO (1998) がブッカー賞の最終候補に残った。ともに自身の脚色、ニール・ジョーダン監督で映画化されている。前者は心に病を抱えた若い畜殺場労働者の物語。後者は女装趣味の男娼が共和主義者のテロリスト集団に巻きこまれる話。また戯曲や放送脚本も手がけている。
本書は2007年のアイリッシュ・インディペンデント・アイルランド・ベスト小説賞受賞。
アマゾンの粗筋を読んでもよくわからないのだが、タイトルの冬の森を聖域と復活の場の象徴として使い、ここにフィドラーでありストーリー・テラーであるトリックスターを登場させ、何らかの「罪」を犯した男の再生を描く、というものであるらしい。ネット上の著者の紹介文を見ても、この作品の中味に触れることはどれも避けている。一言で要約しにくい本なのだろう。
しかしフィドラーがメイン・キャラの一人として登場するとなれば、これは読まないわけにいかない。
音楽の素養としては、70年代半ばには昼間は小学校の教師、夜は地元のパブに出るショウバンドでキーボードを弾いていたそうな。父親はミュージシャンとして身を立てるのが夢で、すぐれたトランペット奏者だった。学校教育は貧弱だったし、アル中の問題を抱えて、職を転々としたが、たいへんな読書家で、音楽の造詣も深かった。
ジョン・バンヴィルに言わせると、マッケイブはアイルランドの小さな田舎町の世界、「ショーン・オフェイローンやフランク・オコナーが叙情的に書き、ジョン・マガハーンが悲劇として書いた世界」をとりあげて、風変わりなブラック・コメディを仕立てるところがユニークとなる。
若い作家志望が模倣する対象として圧倒的な人気があるらしい。
2003年の『ガーディアン』紙のインタヴュー記事は、家族友人などへの取材ももらさず、作品や書評もよく読み込んで、生い立ちからキャリアを要領よくまとめながら、作家としての特性を浮き彫りにしている。
今回、初めて知ったけど、同世代ということを差し引いても、面白そうな書き手ではある。

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