アイルランド伝統歌の二十枚・ その17どっしりと腰の座った、といっても「肝っ玉母さん」ではなく、もちろん「母さん」でもあるだろうが、「母性」よりは一個の「女」として人生の荒波を乗りきってきた自負とその人生へのいとおしさが籠められた声がうたう、アルスターの歌の数々。伴奏など要らない。この声に、この歌に支えなど要らないし、失礼ですらあるかもしれない。すべて英語の歌ではあるが、シャン・ノースの精神はまぎれもなく宿る。自分の生きてきた道や世界に恨みつらみはないにしても、悔いが残らないわけではなく、哀しみにくれたことがなかったわけではない。しかしそうした負の感情は歌に籠められることで結晶化され、歌い手と聞き手をつなぎ、心の澱をあらい清める絆として昇華する。むろんいつでもどこでも起きるわけではなく、それができる歌うたいは稀だ。ロージィ・スチュアートはその中でもとりわけ光り輝く存在であり、しかもここにはその最良の瞬間が捉えられている。

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