湖畔    Irish Book of the Decade 候補作のおさらい その47。
   
    今年1月に邦訳が出ている。

    回想録『小道をぬけて』とともにこの50選で2冊目のジョン・マクガハン。6冊めにして最後の小説作品。人生の最後の時期をアイルランドのある湖畔の農村で暮らす老夫婦の日常生活。「平凡」の偉大さを発見したのがジョイスならば、その平凡を散文詩にうたいあげたのがマクガハンか。

    エイモン・デ・ヴァレラが夢みたアイルランドは、国として実現することはついにないが、個人のレベルではこうしたところに具体化されているのかもしれない。デ・ヴァレラは政治家としては同時代に並ぶ者なき達人だったかもしれないが、個人的レベルでしか実現可能性のない夢を国家の夢と混同したところで失墜した、と言えようか。
   
    邦題はアメリカ版のタイトルからとったと思われる。(ゆ)