
チック・リットはあるいは英語の小説伝統の一部なのかもしれない。19世紀にも女性のベストセラー小説家は何人もいたらしい。ブロンテ姉妹はさしづめその筆頭で、『嵐が丘』『ジェイン・エア』はチック・リットの嚆矢と言えないこともなかろう。なおこの姉妹は生まれ育ちはアイルランドである、念のため。
後に忘れられた人では、ヘンリー・ウッド夫人とか、ハンフリー・ウォード夫人など、当時は夫の名に「ミセス」を付けた名前で書き、出版していた。ウォード夫人はヘンリー・ジェイムズとも親交があったそうだ。もちろん、現在の書き手たちとは状況が異なるから、テーマやモチーフは違ってくるが、女性特有の視点やスタイルがセールス・ポイントになるのは同じであるようだ。
この人はそのチック・リットの最も新しいスターで、またこのジャンル最大のヒット・メーカーの一人でもある。
これはデビュー作で、ベストセラーとなり、映画化されてさらに売れた。これを含め、3作ある小説はすべて邦訳されている。(ゆ)
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