本日は本誌情報号の配信予定日ですが、諸般の事情により、遅れます。2日ぐらいで配信できると思います。
   
   
    英国元首相トニー・ブレアの回顧録が出て、あれこれ話題になっていますが、アイルランド的には何と言ってもこんにちのノーザン・アイルランド和平の土台となった「聖金曜日合意」成立の立役者ということになります。実際の交渉などでは、当時のノーザン・アイルランド担当相故モー・モーラムの功績は隠れもありませんが、首相としてのブレアの意志がなければ、そのモーラムの活躍の場もなかったわけで、この合意の成立を自らの大きな業績の一つに数えるのも無理はないことではあります。
   
    ロンドンの政府にも、これ以上ノーザン・アイルランド紛争を当事者だけの手にまかせておくわけにはいかない、という追いつめられた事情はあったにしても、保守党ではまず不可能だったわけで、政権交代による成果ではあります。
   
    個人的に興味深いのは、この合意のための交渉に関連して、政治家たるもの、結果としてベターなものを求めるためには、時として、真実の一部を誇張したり隠したりすることは許されるどころか、むしろ常識である、とブレアが主張している、という点
   
    これは現代における政治が成り立つ思想的土台にかかわる議論ですが、これまではいわば「暗黙の了解」であったわけです。こういうことをここまではっきり言う必要性をブレアが感じていること、そのこと自体が、この「暗黙の了解」が崩れだしているひとつの徴候でしょう。(ゆ)