こういう「得体の知れない」ものには普段は手を出さないんですが、たまたま体験版をそれこそ体験したところ、ちょっとおもしろい効果があったので本番を試してみました。
これは聴覚を刺激して、音楽についての様々な能力を上げたり、改善したりするシステムです。はじめはそれが目的で開発されたようですが、いざ使ってみるとそれ以外にもいろいろな効果があることがわかり、現在では語学から潜在能力開発まで、各種のコースが用意されてます。
方法は専用のヘッドフォンで指定されたCDを指定された順番に聞く。それだけ。この「みゅ〜ずBOX」の場合、35分のCDを1日1回、最短で15日間が1クール。一度やったら次は3〜4ヶ月後に繰り返し、その後は半年ないし1年に1度。効果は永続的。もちろんこのCDに入っている音源に仕掛けがあるわけです。
これだけ聞けば「うさんくさい」とは誰しも思うところでしょうが、このシステム「傳田式聴覚トレーニング」はすでに20年以上の実績を持ち、日本、アメリカ、韓国で特許が認められ、というのはまあどうでもいいことで、大事なことは、ぼくも試してみたら、あら不思議、明確な効果を実感していることです。
やはりなぜ試すことになったか、ということから書くべきでしょう。
きっかけは DenDAC です。MacBook 用の DAC を探してネット上をあれこれ探していて偶然みつけました。これがどういう代物かは、たとえばこちらとかこちらをどうぞ。
ぼくとしてはまず気に入ったのがこのサイズ。USBメモリと変わらない。実際こいつのほとんど唯一の欠点もまたこのサイズで、すぐどこかへ消えてしまいます。USBポートに直刺しするからUSBケーブルも不要。ヘッドフォンやイヤフォンを直接挿せる。値段もリーズナブル。というのでまずは買ってみました。
で、音も良い。好みの音です。この扱いやすさでこの音ならこの値段で十分お釣りがくるな、と歓びました。
これは伝聴研とオーディオインテルの合同開発品ですが、もともとは「傳田式聴覚トレーニング」用CDをパソコンで聞きたいという要望から生まれたものらしい。つまりこのCD収録の音源は特殊な加工をしているので、音飛び対策の無い、デスクトップ型のCDPで聞く必要がありますが、そういうプレーヤーが少なくなったり、高価になったりしています。音楽CDはパソコンで聞く、という人が増えているのですから、わざわざ別に機械をそろえなくても、トレーニング用CDもパソコンで聞きたい人が増える道理。
それからしばらくして、つまり昨年の後半、ぼくは密閉式のフルサイズ・ヘッドフォンを物色していました。家の中で聞くにも、オープンでは音漏れするので密閉式が必要になっていたわけです。それまでは EarPhone M ですませていましたが、やはりヘッドフォンが欲しくなったのです。
そこで DenDAC と並んで、伝聴研やオーディオインテルのサイトに EXH−313 がありました。UST というのはサイトにある情報を読んでもさっぱりわかりませんが、DenDAC を作ったところのものなら1度聞いてみようと思いたちました。検索してみると、どうやらこれはオーディオテクニカの40周年記念モデル ATH-A100Ti をベースにモディファイしたもののようです。オーテク嫌いの小生ではありますが、まずは聞いてみなくては話になるまい、と横浜は東横線菊名駅からほど近い伝聴研に試聴に出かけました。
アポはとってあったので、傳田所長自ら応対してくれました。正月早々でもあり、客はぼく一人。ふだんはどうかわかりませんが、3時間はいたでしょうか。ヘッドフォン自体もたっぷり試聴させてもらい、伝聴研の売り物のひとつである自然音の音源やら、持っている iPod touch の中の音源やら、いろいろ聞いて、これは買おうと決めたわけですが、その他にも開発中というデジタル・プリメイン・アンプや、小さなユニットが球状についているスピーカー・システムなども聞かせてもらい、これまた実に魅力的。
で、そのうちさりげなく、うちのコースを体験してみますか、と言われてほいほいとのりました。製品版を買うとついてくる体験版とほぼ同じものを、備えつけの機械で聞きました。この体験版は15分くらいのもので、効果も一時的ですが、実際に自分に起きる効果と同等のものが体験できるというもの。
この効果というのは誰でも同じものが同じように現れるのではないらしい。聴覚そのものも個人によって違うでしょうから、効果も千差万別、人それぞれに違うものが出るそうです。ある程度共通しているところはあり、また、どれもその人にとってプラスの効果ではある。
ぼくはすぐに顕著な変化が現れるというタイプではないようで、その直後は別になにもなかったのでした。それよりはあのヘッドフォンはなかなか良いぞ、と楽しみに家に帰ったことでした。
ところがです。夕食が終わって、めずらしくそろった家族の話を聞くともなく聞いていた時でした。妻と子どもたちの間の会話がやけにはっきり聞こえるのです。たちこめていた霧が晴れて、ぱあっと展望が開けたような感じ。あるいは耳の奥が気づかずに詰まっていたのが、すうっと通った感じ。発音も明確に聞こえ、音量もいつもより大きい。ん、なんだ、こりゃ。これはひょっとしてあの体験版の効果?
聞こえが良い状態は翌日には消えていました。けれども効果が続いていた間の気持ち良さは忘れがたいものでした。これなら、本番をやってみる価値はあるかな。
とはいえ、貧乏人にはそう安い買い物でもありません。EXH-313 は買わねばなりません。あれこれ画策し、子どもたちからも借金して、一番安いライトを注文してみました。
品物はすぐに届いたのですが、忙しかったり、なんとなく億劫だったりして、なかなかトレーニングにとりかかりませんでした。そうこうするうちにあの猛暑。ヘッドフォンは当然密閉式です。とてもあの暑さのなかでつける気になりません。ぼくはクーラーが大の苦手なので、家ではエアコンはまずほとんどオフのままです。今年はさすがに夜、寝るときに除湿を入れたりしましたが。
ようやく涼しくなってきたし、なんとなく呼んでいるような気もする、というのであらためて説明書を読み、トレーニングを始めたのが彼岸過ぎ。ライトは3枚のCDを毎日1枚ずつ順番に聞いて、2回繰り返し、3日間耳休め、また3枚を順番に2周して、計15日間のプログラムです。
トレーニングCDを1枚聞いたとたん、劇的な効果が現れる人もいるそうですが、ぼくはやはりそうはなりませんでした。15日間に徐々に変化していきました。先にも書きましたが、ここで現れた効果はあくまでもぼく個人のもので、誰でも同じ効果が現れるわけではない。
まず気がついたのは、聞こえる音が大きくなったこと。特に後半ははっきり大きく聞こえました。CDPの再生音量はデフォルトのままでまったくいじっていません。全体に大きくなると当然ディテールもよくわかるようになります。けれども、再生装置の音量を上げたのとは違って、どこにも無理がありません。したがって、大きくはなっても聞くのが辛くはならない。気持ち良い大きさです。
次は分離が良くなったこと。アンサンブルやマッスの中での個々の楽器、声、あるいはとにかく音が出ているその一つひとつが明確に聞き取れるようになりました。小さな音で鳴っているものも、ちゃんとそのレベルで聞こえます。むろん位置も指さしできます。それでいて全体はバラバラになりません。むしろそれぞれの音同志の関係がよくわかります。音楽全体がより肌理細かく聞こえます。まるで3Dです。これに比べればこれまでいかに平板なものを聞いていたのか。
三番目、倍音や残響がよく聞こえるようになったこと。例えば弦楽器がぴたりと重なるときに生まれる響きが快感になります。ああ、オーケストラの愉悦というのはこういうものなのだな。異なる楽器のユニゾンがいかに気持ちの良いものか、こりゃ徹夜するのも無理ないよ。ギターの余韻、笛からもれる息のノイズ。そして人の声がいかに精妙なテクスチュアを織りなすか。
この変化というのはどうやら耳というハードウエアが改善されるものではないようです。例えばぼくは加齢で聴力は衰えてます。年をとると高音が聞こえなくなる、というあれです。正弦波による簡単な検査では 10KHz でもう聞こえません。これは誰でも避けられないことで、年寄りにちょうど良く聞こえるように調整したオーディオ装置で聞くと、若者にはキンキンしてきつい、ということもあります。それが聞こえるようになる、というのではない、らしい。
なんでもそうですが、聴覚も耳というハードと脳の中のソフトウエアが一体になって、われわれは音を聞いています。耳だけでは音は聞こえません。脳が音と解釈して、初めて「聞こえる」わけです。このソフトウェアが改善されるのではないか。
そこでもコードそのものが書き換えられるわけではない(あるいは一部は書き換えられるのかも)のでしょうが、いわば溜まっていた古いキャッシュを掃除したり、動的に生成されたまま捨てられなかったリンクを始末したり。そしてそういうものをちゃんと定期的に掃除する仕組みを強化する。そうして、ソフトがもともともっている柔軟性を引き出す。
まったくの想像ですが、そういうイメージが湧いてきました。
とまれ、音楽を聞くのがまた一段と楽しくなり、どんどんと聞きたくなるわけです。
オーディオ的に言えば、最も重要なハードは何か、という提議があって、部屋だ、というのが定説ですが、それ以前に耳そのものが基本なわけです。どんな高価なシステムを揃えても、耳がずれたり、ピントが合っていなかったりすれば本来楽しめるものも楽しめません。そういう意味では、まさにシステム全体を一段も二段もグレード・アップしたような効果が、ぼくの場合はありました。
それと、自然音を聞くのも気持ち良くなりました。トレーニングCDには、所長自ら録音機材を担いで、列島各地で録音した音も素材として使われています。波の音、波に寄せられて動く砂粒の音(!)、風、森に降る雨、湧き水、流水、鳥や虫たちの声、などなど。録音もすばらしいですが、ふつうではまず聞けない音が多い。録音して初めて聞ける音源であるわけです。繰り返し聞いたせいか、聴覚の変化のせいか、トレーニングが終わる頃にはそのトラックが楽しみになりました。とりわけ好きになったのは、沖縄で録られたようですが、うち寄せる波とそれで動く細かい砂粒の音と、その向こうにごおおおと轟いている風とも磯波とも嵐ともつかない音の組合せ。
聴覚以外の、心身のバランスがとれるとか、集中力が高まるとかの効果の方はよくわかりません。ただ、今年に入って寝不足になると出ていた自律神経失調の発作が、トレーニングを始めてからは、時に寝不足の時もあるにもかかわらず、出ていません。また、出る気もしません。トレーニング前は、正直、いつ出るか、となんとなく不安なところもあったのです。これも変化といえばいえるか。
とまれ、来年正月に予定している2クールめのトレーニングが、今から楽しみです。追加のCDを買って、グレード・アップしようかと思っているほど。FAQを見ると、実際、1度終わってももっとやりたいと、年がら年中やっている人もいるそうな。その気持ちはわかります。
はじめは毎日30分強、聞いていられるかなと思いましたが、いざ始めてみると、むしろ毎日楽しみになりました。もっとも、素材は自然音を除いて9割はクラシックですから、クラシックは聞くのも苦痛という方には向いていないでしょう。
それにしても、聴覚は嗅覚と並んで、五感の中では最も原始的な器官で、それだけにこういうトレーニングも可能だし、それによって聴覚以外の脳にもいろいろ良い影響が出るのでしょう。たとえば、1日1篇、指定されたテクストを読むだけで、ひと月も続けると読解力や記憶力が格段に上がる、というシステムを、誰か発明してくれないものか。(ゆ)
これは聴覚を刺激して、音楽についての様々な能力を上げたり、改善したりするシステムです。はじめはそれが目的で開発されたようですが、いざ使ってみるとそれ以外にもいろいろな効果があることがわかり、現在では語学から潜在能力開発まで、各種のコースが用意されてます。
方法は専用のヘッドフォンで指定されたCDを指定された順番に聞く。それだけ。この「みゅ〜ずBOX」の場合、35分のCDを1日1回、最短で15日間が1クール。一度やったら次は3〜4ヶ月後に繰り返し、その後は半年ないし1年に1度。効果は永続的。もちろんこのCDに入っている音源に仕掛けがあるわけです。
これだけ聞けば「うさんくさい」とは誰しも思うところでしょうが、このシステム「傳田式聴覚トレーニング」はすでに20年以上の実績を持ち、日本、アメリカ、韓国で特許が認められ、というのはまあどうでもいいことで、大事なことは、ぼくも試してみたら、あら不思議、明確な効果を実感していることです。
やはりなぜ試すことになったか、ということから書くべきでしょう。
きっかけは DenDAC です。MacBook 用の DAC を探してネット上をあれこれ探していて偶然みつけました。これがどういう代物かは、たとえばこちらとかこちらをどうぞ。
ぼくとしてはまず気に入ったのがこのサイズ。USBメモリと変わらない。実際こいつのほとんど唯一の欠点もまたこのサイズで、すぐどこかへ消えてしまいます。USBポートに直刺しするからUSBケーブルも不要。ヘッドフォンやイヤフォンを直接挿せる。値段もリーズナブル。というのでまずは買ってみました。
で、音も良い。好みの音です。この扱いやすさでこの音ならこの値段で十分お釣りがくるな、と歓びました。
これは伝聴研とオーディオインテルの合同開発品ですが、もともとは「傳田式聴覚トレーニング」用CDをパソコンで聞きたいという要望から生まれたものらしい。つまりこのCD収録の音源は特殊な加工をしているので、音飛び対策の無い、デスクトップ型のCDPで聞く必要がありますが、そういうプレーヤーが少なくなったり、高価になったりしています。音楽CDはパソコンで聞く、という人が増えているのですから、わざわざ別に機械をそろえなくても、トレーニング用CDもパソコンで聞きたい人が増える道理。
それからしばらくして、つまり昨年の後半、ぼくは密閉式のフルサイズ・ヘッドフォンを物色していました。家の中で聞くにも、オープンでは音漏れするので密閉式が必要になっていたわけです。それまでは EarPhone M ですませていましたが、やはりヘッドフォンが欲しくなったのです。
そこで DenDAC と並んで、伝聴研やオーディオインテルのサイトに EXH−313 がありました。UST というのはサイトにある情報を読んでもさっぱりわかりませんが、DenDAC を作ったところのものなら1度聞いてみようと思いたちました。検索してみると、どうやらこれはオーディオテクニカの40周年記念モデル ATH-A100Ti をベースにモディファイしたもののようです。オーテク嫌いの小生ではありますが、まずは聞いてみなくては話になるまい、と横浜は東横線菊名駅からほど近い伝聴研に試聴に出かけました。
アポはとってあったので、傳田所長自ら応対してくれました。正月早々でもあり、客はぼく一人。ふだんはどうかわかりませんが、3時間はいたでしょうか。ヘッドフォン自体もたっぷり試聴させてもらい、伝聴研の売り物のひとつである自然音の音源やら、持っている iPod touch の中の音源やら、いろいろ聞いて、これは買おうと決めたわけですが、その他にも開発中というデジタル・プリメイン・アンプや、小さなユニットが球状についているスピーカー・システムなども聞かせてもらい、これまた実に魅力的。
で、そのうちさりげなく、うちのコースを体験してみますか、と言われてほいほいとのりました。製品版を買うとついてくる体験版とほぼ同じものを、備えつけの機械で聞きました。この体験版は15分くらいのもので、効果も一時的ですが、実際に自分に起きる効果と同等のものが体験できるというもの。
この効果というのは誰でも同じものが同じように現れるのではないらしい。聴覚そのものも個人によって違うでしょうから、効果も千差万別、人それぞれに違うものが出るそうです。ある程度共通しているところはあり、また、どれもその人にとってプラスの効果ではある。
ぼくはすぐに顕著な変化が現れるというタイプではないようで、その直後は別になにもなかったのでした。それよりはあのヘッドフォンはなかなか良いぞ、と楽しみに家に帰ったことでした。
ところがです。夕食が終わって、めずらしくそろった家族の話を聞くともなく聞いていた時でした。妻と子どもたちの間の会話がやけにはっきり聞こえるのです。たちこめていた霧が晴れて、ぱあっと展望が開けたような感じ。あるいは耳の奥が気づかずに詰まっていたのが、すうっと通った感じ。発音も明確に聞こえ、音量もいつもより大きい。ん、なんだ、こりゃ。これはひょっとしてあの体験版の効果?
聞こえが良い状態は翌日には消えていました。けれども効果が続いていた間の気持ち良さは忘れがたいものでした。これなら、本番をやってみる価値はあるかな。
とはいえ、貧乏人にはそう安い買い物でもありません。EXH-313 は買わねばなりません。あれこれ画策し、子どもたちからも借金して、一番安いライトを注文してみました。
品物はすぐに届いたのですが、忙しかったり、なんとなく億劫だったりして、なかなかトレーニングにとりかかりませんでした。そうこうするうちにあの猛暑。ヘッドフォンは当然密閉式です。とてもあの暑さのなかでつける気になりません。ぼくはクーラーが大の苦手なので、家ではエアコンはまずほとんどオフのままです。今年はさすがに夜、寝るときに除湿を入れたりしましたが。
ようやく涼しくなってきたし、なんとなく呼んでいるような気もする、というのであらためて説明書を読み、トレーニングを始めたのが彼岸過ぎ。ライトは3枚のCDを毎日1枚ずつ順番に聞いて、2回繰り返し、3日間耳休め、また3枚を順番に2周して、計15日間のプログラムです。
トレーニングCDを1枚聞いたとたん、劇的な効果が現れる人もいるそうですが、ぼくはやはりそうはなりませんでした。15日間に徐々に変化していきました。先にも書きましたが、ここで現れた効果はあくまでもぼく個人のもので、誰でも同じ効果が現れるわけではない。
まず気がついたのは、聞こえる音が大きくなったこと。特に後半ははっきり大きく聞こえました。CDPの再生音量はデフォルトのままでまったくいじっていません。全体に大きくなると当然ディテールもよくわかるようになります。けれども、再生装置の音量を上げたのとは違って、どこにも無理がありません。したがって、大きくはなっても聞くのが辛くはならない。気持ち良い大きさです。
次は分離が良くなったこと。アンサンブルやマッスの中での個々の楽器、声、あるいはとにかく音が出ているその一つひとつが明確に聞き取れるようになりました。小さな音で鳴っているものも、ちゃんとそのレベルで聞こえます。むろん位置も指さしできます。それでいて全体はバラバラになりません。むしろそれぞれの音同志の関係がよくわかります。音楽全体がより肌理細かく聞こえます。まるで3Dです。これに比べればこれまでいかに平板なものを聞いていたのか。
三番目、倍音や残響がよく聞こえるようになったこと。例えば弦楽器がぴたりと重なるときに生まれる響きが快感になります。ああ、オーケストラの愉悦というのはこういうものなのだな。異なる楽器のユニゾンがいかに気持ちの良いものか、こりゃ徹夜するのも無理ないよ。ギターの余韻、笛からもれる息のノイズ。そして人の声がいかに精妙なテクスチュアを織りなすか。
この変化というのはどうやら耳というハードウエアが改善されるものではないようです。例えばぼくは加齢で聴力は衰えてます。年をとると高音が聞こえなくなる、というあれです。正弦波による簡単な検査では 10KHz でもう聞こえません。これは誰でも避けられないことで、年寄りにちょうど良く聞こえるように調整したオーディオ装置で聞くと、若者にはキンキンしてきつい、ということもあります。それが聞こえるようになる、というのではない、らしい。
なんでもそうですが、聴覚も耳というハードと脳の中のソフトウエアが一体になって、われわれは音を聞いています。耳だけでは音は聞こえません。脳が音と解釈して、初めて「聞こえる」わけです。このソフトウェアが改善されるのではないか。
そこでもコードそのものが書き換えられるわけではない(あるいは一部は書き換えられるのかも)のでしょうが、いわば溜まっていた古いキャッシュを掃除したり、動的に生成されたまま捨てられなかったリンクを始末したり。そしてそういうものをちゃんと定期的に掃除する仕組みを強化する。そうして、ソフトがもともともっている柔軟性を引き出す。
まったくの想像ですが、そういうイメージが湧いてきました。
とまれ、音楽を聞くのがまた一段と楽しくなり、どんどんと聞きたくなるわけです。
オーディオ的に言えば、最も重要なハードは何か、という提議があって、部屋だ、というのが定説ですが、それ以前に耳そのものが基本なわけです。どんな高価なシステムを揃えても、耳がずれたり、ピントが合っていなかったりすれば本来楽しめるものも楽しめません。そういう意味では、まさにシステム全体を一段も二段もグレード・アップしたような効果が、ぼくの場合はありました。
それと、自然音を聞くのも気持ち良くなりました。トレーニングCDには、所長自ら録音機材を担いで、列島各地で録音した音も素材として使われています。波の音、波に寄せられて動く砂粒の音(!)、風、森に降る雨、湧き水、流水、鳥や虫たちの声、などなど。録音もすばらしいですが、ふつうではまず聞けない音が多い。録音して初めて聞ける音源であるわけです。繰り返し聞いたせいか、聴覚の変化のせいか、トレーニングが終わる頃にはそのトラックが楽しみになりました。とりわけ好きになったのは、沖縄で録られたようですが、うち寄せる波とそれで動く細かい砂粒の音と、その向こうにごおおおと轟いている風とも磯波とも嵐ともつかない音の組合せ。
聴覚以外の、心身のバランスがとれるとか、集中力が高まるとかの効果の方はよくわかりません。ただ、今年に入って寝不足になると出ていた自律神経失調の発作が、トレーニングを始めてからは、時に寝不足の時もあるにもかかわらず、出ていません。また、出る気もしません。トレーニング前は、正直、いつ出るか、となんとなく不安なところもあったのです。これも変化といえばいえるか。
とまれ、来年正月に予定している2クールめのトレーニングが、今から楽しみです。追加のCDを買って、グレード・アップしようかと思っているほど。FAQを見ると、実際、1度終わってももっとやりたいと、年がら年中やっている人もいるそうな。その気持ちはわかります。
はじめは毎日30分強、聞いていられるかなと思いましたが、いざ始めてみると、むしろ毎日楽しみになりました。もっとも、素材は自然音を除いて9割はクラシックですから、クラシックは聞くのも苦痛という方には向いていないでしょう。
それにしても、聴覚は嗅覚と並んで、五感の中では最も原始的な器官で、それだけにこういうトレーニングも可能だし、それによって聴覚以外の脳にもいろいろ良い影響が出るのでしょう。たとえば、1日1篇、指定されたテクストを読むだけで、ひと月も続けると読解力や記憶力が格段に上がる、というシステムを、誰か発明してくれないものか。(ゆ)

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