モジラ・プロジェクトから生まれたメディア・プレーヤー Songbird プロジェクトのヘッドが今年初めに交替して、新しいヘッドが公式ブログでこれからの Songbird の進む方向について書いていました。

    Les Schmidt という新任ヘッドは就任以来、投資家、事業提携者、従業員、新任の経営陣、音楽産業やテクノロジー産業内部の人びととと話し合いをもち、ここ数年に出現した400以上のデジタル音楽サーヴィスの実地調査をしたそうです。
    
    その末に、Songbird プロジェクト・チームの出した結論。月並なものではありますが、


    音楽産業はありとあらゆる方面で変化している。
    音楽関係のテクノロジーは日進月歩で、ほぼ毎日、新しいサーヴィスが出ている。
    変化の速度は当面早まりこそすれ、遅くはならない。


    そして抽出した最新の潮流。


    パソコンだけではなく、接続された装置すなわち携帯電話やタブレットで音楽を聴く人間の数がどんどん増えている。

    グーグル、アマゾン、アップル、MP3Tunes といった、クラウド・ベースのサーヴィスを使うのをためらわなくなっている。いつでもどこでも音楽が聴けるから。

    Pandora、Spotify、MOG、Rdio といった有料ストリーミング・サーヴィスに登録してこれを使用する人間が増えている。

    デスクトップで音楽を管理するツールとしては iTunes が圧倒的。

    若い世代が音楽を聴くのは YouTube が最も大きなものの一つ。ニールセンの調査では57%

    関心のある音楽を表明したり、友人の趣味を知るのに、ソーシャルな音楽体験が重要性を増している。


    新手の音楽サーヴィスといえば、先日デレク・トラックスのトラックス・テデスキ・バンドのライヴが有料ストリーミングで聴けるという案内が来ていました。ライヴのチケットを買うようにカネを払い、ただしその場にいなくてもネットで聴ける、というサーヴィス。アーカイヴも用意されて、時差のあるところでも聴けます。
    
    パソコンから出力される音源を録音するツールを使えば録音もできるのでしょう。
    
    Songbird としては、iTunes のような総合的なツールではなく、より細かい機能に特化した方向を目指すようです。単機能のツールを組み合わせて使うのはコンピュータの使い方として伝統的でもありますが、iTunes と正面から競合するのは避けて、どんどん出てくる新しいサーヴィスにより柔軟に対応できるようにしようというのでしょう。
    
    より大きくとらえれば、音楽はスピーカーの前に座って聴くものから、動きながら、いつでもどこでも聴くものへの変化が加速されるのでしょう。
    
    とすればアウトプット装置はイヤフォン、ヘッドフォンがデフォルトで、スピーカーは今のアナログ・プレーヤーの位置になる。
    
    またデジタル音楽の質も向上する。つまりPCMからDSDへの流れもおそらくは変わらない。
    
    流通形態としてのパッケージはボックス・セットと映像だけになり、「通常版」はすべてネット経由になる。
    
    スタジオ録音とならんでライヴ音源の割合が増える。
    
    ぼくなどでもこの程度は想像がつきますから、専門家や業界の人びとはもとつっこんだ予測を立てているはず。もっとも予測がついたからといって、それにしたがって行動するかはまた別の問題ではあります。とりわけ、既得権益保持者を守る制度が充実しているこの国では。
    
    とはいえ、ミュージシャンとリスナーにとってはますます面白くなることは確かでしょう。(ゆ)