Companion to Irish Traditional Music    フィンタン・ヴァレリー Fintan Vallely の編纂になる COMPANION TO IRISH TRADITIONAL MUSIC の第二版が出ました。Cork University Press から今年6月に予定されていましたが、刊行が延びていました。版元やアマゾンのサイトでは600ページになっていますが、実際は800ページを超えているらしい。
    
    この本はアイリッシュ・ミュージックに関する百科事典です。項目はABC順で、楽器、曲やリズムのスタイル、ミュージシャン、地名などの固有名詞、ダンスや伝統行事、その他、およそアイルランド伝統音楽に関することを網羅しています。アイリッシュ・ミュージックについて何か知りたければ、まずはこれを読むことでしょう。一方で相当深いところまで書かれていますから、これをネタにするだけで「通」にもなれます。
    
    初版はもちろんこの種の本としては初めてのもので、ぼくなどもさんざんお世話になりました。第二版が準備されてることはずいぶん前に伝わってきていて、楽しみにしていました。
    
    編者のフィンタンは、ナイアル、キアランのヴァレリー兄弟の、叔父さんかいとこのどちらかにあたる人で、本人もフルート奏者として優れているそうな。この本の他にも、デ・ダナンの初期のメンバーであるチャーリー・ピゴットと、写真家の Nutan と組んでアイリッシュ・ミュージックのミュージシャンたちの姿を写真と文章で描きだした Blooming Meadows: The World of Irish Traditional Musicians や、ノーザン・アイルランドのプロテスタントたちとアイルランド伝統音楽の関係を探った Tuned Out: Traditional Music and Identity in Northern Ireland などの著書もあります。
    
    アイリッシュ・ミュージックの網羅的な参考書としては、これと THE ROUGH GUIDE TO IRISH MUSIC (ISBN1-85828-642-5) があれば、まず万全です。後者は残念ながら絶版ですが、古書で手に入ります。COMPANION が学問的な立場から書かれているとすれば、こちらはリスナーの立場から、各ミュージシャンに焦点をあてて紹介した本です。楽器別になっていて、代表的な録音も挙げられており、多少とも重要性のある人は漏らさず載っています。
    
    本書とは別に COMPANION TO IRISH MUSIC も編集が進んでいるはずですが、まだ出ませんね。こちらは伝統音楽のみならず、クラシックやポピュラーも含めた、アイルランドで現在行われている音楽全体をカヴァーするものの由。(ゆ)