表紙にはふつう付いている "A" がありませんが、編者の序文では "The" が付いてます。伝統音楽だけではなく、クラシックやポピュラーも含む Companion to Irish Music も編集が進んでいると聞きますが、伝統音楽に関しては他に二つとない決定版です。
ほぼB5判のハードカヴァー。本文761ページ、伝統音楽関連年表7ページ、18世紀から今年までに刊行された伝統音楽関連文献リスト32ページ、索引32ページ。それ以外に巻頭に編者序文、謝辞、凡例、執筆者リスト、その略号などが22ページ。計854ページ。
文献リストは楽器別、分野別の詳細なもので、いやあ、これはありがたい。
ディスコグラフィがありませんが、これはネット時代の現在、不要と判断したと編者が序文に述べています。個々のミュージシャンの記事の中で代表的なものはあげられています。本とちがって、録音は物理的に店頭で買う形はもはや余計なものだ、という編者の判断はまったく当然。
もちろん活字とて本だけですむはずはないので、サポート・サイトも作るそうです。活字のリファレンスとしては、これが最後の版になるのではと推測します。第三版以降があるとすれば、それはネット上でのものでしょう。
表紙にうたわれている数字によると、主な記事1,800、普通の記事4,000、写真、図版が300枚。
執筆者は200名超。必ずしも学者ばかりではなく、ジャーナリストやマーティン・ヘイズやモイア・ニ・カハシー、ミック・モローニ、ポゥドリギン・ニ・ウーラホーンなどのミュージシャンもかなりな数にのぼります。記事はいずれも署名付きで、イニシャルで示されています。無署名のものは編者によるもの。
編者フィンタン・ヴァレリーの序文によれば、この第二版は初版の五割増し、50万語超といいますから、400字詰原稿用紙換算で5,000枚超。ふつうの文庫版なら10冊分以上です。
楽器、スタイル、歴史、現状、ミュージシャンなどはもちろん、アイルランド本土は各州ごとの概観もあり、またブルターニュ、スコットランド、ウェールズ、マン島、ケープ・ブルトン、ニューファウンドランド、オーストラリア、カナダ(前の二つ以外の、という意味かな)についてもカヴァーしています。特にブルターニュについては質量ともに力を入れたそうな。フランス、デンマーク、ノルウェイ、フィンランド、ドイツにおけるアイリッシュ・ミュージックもとりあげています。そしてもちろんアメリカはまた別。
そう、日本も独立項目があります。東京と西日本、経済と見出しが立てられてます。執筆は山下理恵子さんと山本拓史さん。この記事には2000年にゴールウェイでバスキングしている3人の日本人ミュージシャンの写真があります(367pp.)。左からバゥロン、フルート、コンサティーナで、バゥロンとフルートが男性、コンサティーナは女性。どこかでお顔を見たような気もしますが、どなたでしょう。
初版は事典として使うだけでしたが、今回はこれをとにかく頭から読んでいこうと思います。途中で報告するかもしれません。
いずれにしても、いやしくもアイリッシュ・ミュージックに積極的な関心を持つ向きは、何はともあれ、1冊購入すべき基本中の基本ではありましょう。この際、英語が読める読めないは関係ありません。読めなければ、これで勉強すればよい。語学の勉強には強い関心を持つ対象について書かれたものを読むのが一番の近道です。
たとえすぐには読めなくとも、手元に置いておくだけで価値のある本であります。すぐれた本はそこから栄養素が滲み出るものです。森林浴のように、本から出るものは体と心に沁みこみます。それによってアイリッシュ・ミュージックとのつながりはさらに深まります。そしてその向こうに広がるアイルランドの文化や社会とのつながりも深まります。それがまた音楽への、ダンスへの、あるいはそこから演劇や美術や文芸や映画や料理やその他もろもろへのつながりへと還ってきます。
ただ参考書として使うだけではなく、編者の言うとおり、ここから新たな関心が生まれ、アイリッシュ・ミュージックがさらに豊かになり、ひいてはアイルランドの伝統文化が豊かになり、さらに人類全体にとっての貢献が生まれることがなによりです。
本としては安いとは言えませんが、ギネスにすれば6〜7杯分です。それくらいの節約で買えるのなら、その効験に比べれば実に安い。コストパフォーマンスから言えば、こんなに大きなものはそう無いでしょう。
明日から今月の抗がん剤点滴入院なので、実際に読むのは来週から。さて、1年で読み終えられるかな。(ゆ)
ほぼB5判のハードカヴァー。本文761ページ、伝統音楽関連年表7ページ、18世紀から今年までに刊行された伝統音楽関連文献リスト32ページ、索引32ページ。それ以外に巻頭に編者序文、謝辞、凡例、執筆者リスト、その略号などが22ページ。計854ページ。
文献リストは楽器別、分野別の詳細なもので、いやあ、これはありがたい。
ディスコグラフィがありませんが、これはネット時代の現在、不要と判断したと編者が序文に述べています。個々のミュージシャンの記事の中で代表的なものはあげられています。本とちがって、録音は物理的に店頭で買う形はもはや余計なものだ、という編者の判断はまったく当然。
もちろん活字とて本だけですむはずはないので、サポート・サイトも作るそうです。活字のリファレンスとしては、これが最後の版になるのではと推測します。第三版以降があるとすれば、それはネット上でのものでしょう。
表紙にうたわれている数字によると、主な記事1,800、普通の記事4,000、写真、図版が300枚。
執筆者は200名超。必ずしも学者ばかりではなく、ジャーナリストやマーティン・ヘイズやモイア・ニ・カハシー、ミック・モローニ、ポゥドリギン・ニ・ウーラホーンなどのミュージシャンもかなりな数にのぼります。記事はいずれも署名付きで、イニシャルで示されています。無署名のものは編者によるもの。
編者フィンタン・ヴァレリーの序文によれば、この第二版は初版の五割増し、50万語超といいますから、400字詰原稿用紙換算で5,000枚超。ふつうの文庫版なら10冊分以上です。
楽器、スタイル、歴史、現状、ミュージシャンなどはもちろん、アイルランド本土は各州ごとの概観もあり、またブルターニュ、スコットランド、ウェールズ、マン島、ケープ・ブルトン、ニューファウンドランド、オーストラリア、カナダ(前の二つ以外の、という意味かな)についてもカヴァーしています。特にブルターニュについては質量ともに力を入れたそうな。フランス、デンマーク、ノルウェイ、フィンランド、ドイツにおけるアイリッシュ・ミュージックもとりあげています。そしてもちろんアメリカはまた別。
そう、日本も独立項目があります。東京と西日本、経済と見出しが立てられてます。執筆は山下理恵子さんと山本拓史さん。この記事には2000年にゴールウェイでバスキングしている3人の日本人ミュージシャンの写真があります(367pp.)。左からバゥロン、フルート、コンサティーナで、バゥロンとフルートが男性、コンサティーナは女性。どこかでお顔を見たような気もしますが、どなたでしょう。
初版は事典として使うだけでしたが、今回はこれをとにかく頭から読んでいこうと思います。途中で報告するかもしれません。
いずれにしても、いやしくもアイリッシュ・ミュージックに積極的な関心を持つ向きは、何はともあれ、1冊購入すべき基本中の基本ではありましょう。この際、英語が読める読めないは関係ありません。読めなければ、これで勉強すればよい。語学の勉強には強い関心を持つ対象について書かれたものを読むのが一番の近道です。
たとえすぐには読めなくとも、手元に置いておくだけで価値のある本であります。すぐれた本はそこから栄養素が滲み出るものです。森林浴のように、本から出るものは体と心に沁みこみます。それによってアイリッシュ・ミュージックとのつながりはさらに深まります。そしてその向こうに広がるアイルランドの文化や社会とのつながりも深まります。それがまた音楽への、ダンスへの、あるいはそこから演劇や美術や文芸や映画や料理やその他もろもろへのつながりへと還ってきます。
ただ参考書として使うだけではなく、編者の言うとおり、ここから新たな関心が生まれ、アイリッシュ・ミュージックがさらに豊かになり、ひいてはアイルランドの伝統文化が豊かになり、さらに人類全体にとっての貢献が生まれることがなによりです。
本としては安いとは言えませんが、ギネスにすれば6〜7杯分です。それくらいの節約で買えるのなら、その効験に比べれば実に安い。コストパフォーマンスから言えば、こんなに大きなものはそう無いでしょう。
明日から今月の抗がん剤点滴入院なので、実際に読むのは来週から。さて、1年で読み終えられるかな。(ゆ)
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