*東急の車両は走行時の騒音が大きい。田園都市線だけなのかどうかは知らないが、急行なんぞ乗った日には、スピードを出すからさらにうるさい。おまけに、この線は一つひとつは短かいけれどトンネルが多く、仕上げに二子玉川からは地下鉄になるから、乗り心地としては最悪と言ってもいい。ヘッドフォンで騒音を防ぐにしても、やわなノイズ・キャンセリングなら吹っ飛びそうだ。 DJ用の超強力遮蔽能力のものが必要だろう。

 これに比べれば小田急の車両ははるかに静かだ。東急はひたすら車両を軽くすることだけ考えて、小田急は乗客にとっての快適さとのバランスをとろうとしている、とみえる。小田急の方が営業距離が長く、乗っている時間が長いから、だからか。

 しかし、こんなうるさい電車に乗って毎日都心まで往復していたら、住宅環境がいくら良くても、どこかおかしくなるんじゃないか。慣れれば我慢はできるかもしれないが、無意識にストレスが溜まって、病気になって現れる可能性もあるだろう。


*『ギネスの哲学』のカヴァー・イラストを描いてくれた西村玲子さんが、アイルランドに1年フィドルの修業に行くことになり、壮行会代わりのライヴがある、というので中野に出かける。The Celts というアイリッシュ・バー。ここで1時間やり、そのあとすぐ近くの「タラの丘」でパート2。中野には他にもアイリッシュ系のバーが数軒あるそうな。実際、The Celts を探してうろうろ迷っている間にも、ギネスの看板を何枚も見かけた。そのうち東京のテンプル・バーになるかもしれん。初めて北側の飲食街を歩いたが、細かい路地に小さな店がひしめきあっていて、良い感じ。中野駅もすっきりして、これで放射能さえなければね。

 西村さんのフィドルに内野貴文さんのイルン・パイプ、下田理さんのギターという、いつものトリオでの演奏はご機嫌。くつろいで、良いグルーヴが出ている。いやあ、アイリッシュの醍醐味ここにあり。これに比べれば、チーフテンズがしゃちこばって聞こえる。

 内野さんは6年待ったフル・セットが夏に届いたそうで、調子が良いのはそれもあるらしい。いい音で鳴っている。最後にお客で来ていた人たちも2、3人加わって、ますます良い感じ。

 長尾さんも来ていたが、髪型を変えていたのではじめ全然わからず。向こうもぼくがわからず。ギター・ソロの録音をこつこつ作っているそうで、これは楽しみだ。帰り路が新宿まで一緒で、いろいろ話を聞く。

*Quad がちゃんと ESL の新作を出しているのを知り、実に久しぶりに、もう十数年ぶりくらいに MartinLogan のサイトを覗くと、なんとヘッドフォンを出している。Et tu, ML? と思って検索してみたら、結構前から出しているらしい。新作の Mikros 90 は先月末に発表されたばかりで、イヤフォンの 70 は発売されてるが、ヘッドフォンの 90 はまだ。どちらもクローズドで、Head-Fi には 70 のレヴューがひとつ上がっているが、なかなか良いようだ。さすがにヘンな色付けはしていない。Amazon.com では 90 が300USD、70 が142USD の値段がついている。アメリカ国内向けだけ。MartinLogan のディストリビュータは日本ではなくなってずいぶん経つが、これでどこか手をあげるかな。

 ひょっとして、と Magnepan のサイトを見てみたが、さすがにここは手を出していませんでした。昔、リボン・トウィータを使いだした初めの頃の2ウェイ、2.5R を Quick Silver Audio の モノブロックで鳴らしたのは忘れられない。音が「飛んで」きたものだ。今だと、1.7 なのかな。2,000USD って、LCD-3 より安いじゃん。しかし、アンプが要るし、置き場所もないなあ。をを、正規代理店があるぞ。

 しかし、わが列島では Quad は根強い人気があるのに、同じ平面の MartinLogan や Magnepan が支持されないのは何故だろう。でかいからかな。基本は高さ6フィート、つまり180センチ超ではある。2.5R を手放したのも、結局、その高さで部屋が暗くなる感じがしたからだからなあ。


*高音質のポータブル・プレーヤーが花盛りだけれど、だったら KORG MR-2 はもっと注目されていいんでないの。いま注目の DSD ネイティヴ再生ができる唯一のものなんだし、PCM だって 192KHz までサポートしてるし、SHCDカードも使える。それで価格は、一連のハイレゾ・サポート・プレーヤーで一番安い iRiver の AK100 よりさらに1万安い。

 それにしても MR-2 から録音機能を削ったプレーヤーを出しませんか、KORG さん。マイクがついてると、音楽を聴くだけだとちょとでかいんだよねえ。会社のポリシーに合わないのかな。

KORG コルグ/ MR-2 モバイルレコーダー
KORG コルグ/ MR-2 モバイルレコーダー

 
*ささきさんがブログで DSD の現状について面白いことを書いている。

 デジタルとしては実は PCM より DSD の方が簡単、というのはへーえ、という話で、だったら、そもそも CD 規格策定のときになんで DSD にしなかったのかしらん。技術的にわざと難しくして、もったいをつけたのか、というのは下司の勘繰りだろうが、どこか邪悪な意図を感じる。同時に CD がなぜ 16bit なのか、というのもようやく腑におちる。

 音が問題だったら、CD なんて中途半端な規格にしないで、最初から SACD の規格にしておけば、とうの昔に世の中は DSD に統一されて、LP は消滅していたかもしれない。出し惜しみしたのか、それとも「音質」をとやかく言われてあわててやったのか。いずれにしても、後から出したのは、いかにもまずかった。CD 切替の理由は結局「音」ではなかったので、そういえば録音メディアの「革新」は音質が理由だったことは一度もない。音の改善は付随した現象なのだ。

 とまれ、今、DSD の「高音質」に惹かれている人びとにとっては SACD はまったく存在しなかったか、あるいは存在を知ってはいても従来選択肢に入っていなかったわけだ。

 それにしても「音質」というのはやはり相対的なもので、たとえば収録時間とか、裏表の有無とかいう物理的条件のような絶対的なものではありえない。圧縮ファイルだって、やりようによっては十分音を「良く」できる。Hippo Biscuit + GoVibe Mini Box + Flat4粋で、もうこれ以上何も要らないと思えてしまう。

 だから、DSD も音質が良いというだけでは世間一般に普及することはない。より使いやすくする、少なくとも入口の敷居は低くしないと、結局六畳の和室に JBL の巨大なスタジオ・モニターを置くような「宝の持ち腐れ」になりかねない。

 それはそれでいいのだろう、たぶん。一般化せずとも、一定数の熱心なサポートがあればやっていけるのが、デジタルとネットワークのいいところだ。

 そういう観点からすれば、ヘッドフォン祭などもヘタにでかくしたり、整理しないで、今のような雑多な感じで続いてほしい。今回の Ultrasone や Sennheiser のような大手の洗練された空間と、Jaben のいた部屋のように、小さな個人メーカーがごちゃごちゃと乱雑に詰まっている空間が同居しているのが、一番の魅力なのだ。そこには供給側とユーザーの接点だけでなく、メーカー同士の交流もあり、コラボレーションも生まれる。


*オーチャードのチーフテンズに行く。さすがにここは音が良い。トゥリーナ・マーシャル、うまくなったなあ。最初に来た時には、終わりごろになると指が疲れていたけど、そんな気配はもう微塵もない。

 ハイライトは前半、アリス・マコーマック。出てきた最初は〈キャリックファーガス〉で、そりゃこの人がうたえば悪いはずはないが、わざわざこれをうたわせることはないだろう、パディ。とはいうものの、今のチーフテンズに期待する方が無理か。それにちょっとテンポが速くて、《TRANSATLANTIC SESSIONS 4》で Alison Moorer の熱唱を見たばかりだったから、ちょと軽いなあ。アレンジなら最近の奈加靖子が遥かに上。と思っていたら、そのままステージに残ってやったのが〈The Vices Set (Puirt Set)〉。最新のソロ《PEOPLE LIKE ME》の3曲め。スコットランドのマウス・ミュージックは詞の音に面白いものが多いけど、これはまた飛び抜けて面白く、とりわけメドレー2曲目の後半が楽しい。ほぼ録音まんまの演奏だが、やはり生はええですなあ。これを生で聴けただけで、まんぞくまんぞく。アリスはもう1曲、ガーリック(スコティッシュ・ゲーリック)のうたをア・カペラで聴かせてくれて、この形ではこれ以上はムリではある。トゥリーナとのデュオで一度生で見たいが、それは別に呼ばなあかんやろ。

 日本人ゲストもずいぶん増えて、タカさんたちのダンスや「ガールズ・チーフテンズ」もあり、まあめでたいことではある。後者のパイプはなかなかで、パディよりいいんじゃないかと思えたほどだったが、遠くて、誰かはわからず。後で聞いたらやはり中原直実さんだった。最後のブルターニュ風ダンスの列も、昔にくらべればずいぶん長くなった。和服姿のおばさんなんかもいて、このダンスのフィナーレはよい感じ。これさえあれば、チーフテンズはいいんですよ。いくらパディが「お仕事」してても。(ゆ)

Transatlantic Sessions 4 [DVD] [Import]
Transatlantic Sessions 4

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