Winds Cafe 215 「メランコリーの妙薬」が来週日曜日にあります。

 会場は三軒茶屋の「レンタルスペースSF」です。
くわしくはこちらをどうぞ。


 準備は順調に遅れております。目星をつけた音源をひたすら聴いているんですが、なかなかこれと思うものにぶちあたりません。プログラムを組むためにリサーチを始める前は、もっと簡単に組めると楽観していたんですが、なかなかどうして、敵もさるもの、やはりたやすい相手ではありません。

 一聴してこれは「陰々滅々」だ、これを聴かせれば、一発でノックアウト、という曲は実はごく少ないのです。表面では明るく、朗らかに、あっけらかんとうたっているようで、よくよく聴くと根が昏いものが多い。イングランド人はやはり一筋縄ではいきません。その点ではスコットランド人やオーストラリア人の方が単純であります。アイルランド人は今回はたぶん多くはありません。一人か二人でしょう。クリスティ・ムーアなどは昏い時と明るい時がはっきりしていて、その昏い時の代表を入れようかと思うとります。

 当日は15曲、というのは前回のチーフテンズの時と同じ曲数です。はたして時間通りにいくかどうか。

 なお、上のウエブ・サイトでの案内では、終演後にパーティーとなっていますが、聴く間も飲んだり食べたりしていただいてかまいません。アルコールが入ると「陰々滅々」がもっと嵩じて、ほんとうに這い上がれなくなる場合もありますので、飲みながら聴かれるのも一興かと。アルコールがダメな方はお好きなものでどうぞ。

 ただ、あたしはタバコの匂いだけでも苦手なので、室内は禁煙でお願いいたします。パイプと葉巻はよいかも。あれは強烈というので、パイプ禁止の喫茶店なんかもありますが、あたしはむしろ紙巻よりはまだよいです。


 準備をしながら片方で Blair Jackson のジェリィ・ガルシアの伝記をこつこつと読んでおります。これはガルシアの死の直後に書かれているので、「陰」の部分はもちろん出ていませんが、一方で同時代、同じ空気を吸った人間にしか出せない味、ちょうどデッドやジェリィ・ガルシア・バンドのライヴが醸し出す独特の「ゆるさ」とリズムがあって、そこにはまるとずるずると読み続けてしまいます。

Garcia: An American Life
Blair Jackson
Penguin Books
2000-08-01



 その中で1971年のライヴ・アルバム GRATEFUL DEAD 通称 "Skull & Roses" のくだり、このアルバムのタイトルを SKULLFUCK とするとバンドが主張して、レコード会社のワーナー・ブラザースの社長がひっくり返るところは椅子からころげおちそうに笑ってしまいましたが、この補遺として著者がウエブ・サイトに載せている文章がまた輪をかけて面白い。デッドが LA のハリウッド・パラディアムでショウをした際に、バンドとワーナー幹部がこの件でもった会合の話をジェファーソン・エアプレインとニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジのドラマーだったスペンサー・ドライデンが回想しています。一番下の方の "Page 217, bottom; more on the "Skullfuck" episode:"。

 その最後の一節。今だったら別だろうが、1971年にそんなタイトルをつけられるわけがない。しかしそこにデッド側の「関係者」として同席していたドライデンも含めた数十人は、その主張が通ると信じていた。
「それがグレイトフル・デッドなんだ。連中は世間からはいつも少しズレていた。もちろんだからこそかれらは凄いわけだけどね」

 一言補足すれば、グレイトフル・デッドは世間からズレるために、そうしようと意識してズレていたわけではない、ということでもあります。かれらにとってまったく当然と思えることが、結果としてズレていることになる。さらに加えて、たとえそうすればズレることになるとわかっていても、ズレないように自分たちのふるまいを軌道修正することはしないし、またできない。もちろん、ズレていることでイタイ目に会うことは避けられません。例えばこの話のすぐ後、デッドはワーナーから離れて自分たちのレコード会社を立ち上げて大失敗します。しかし長い眼で見れば、グレイトフル・デッドはまさに他に類例のない独自の現象として顕現しつづけています。その音楽に親しみ、入れ込む人間の数は増えつづけています。

 イングランドやスコットランドの「陰々滅々」音楽というのもまた世間からはズレているものでしょう。それを看板にした「ブラックホーク」の戦略もまた、世間とのズレを逆手にとったものでした。松平さんにとっては、グレイトフル・デッドよりは意識的な行動ではあったかもしれませんが、やはりどうしようもなくズレてしまう自分の資質に忠実であろうとした結果だったのでしょう。

 とはいえ、こちらとしては世間からズレているかどうか、どれくらいズレているかどうか、ということはどうでもいいことなので、ひたすら「陰々滅々」で「心地良い」音楽を選んでおります。一聴忘れがたいということもほとんど無い、むしろ喉の小骨のように引っかかってくれるかもしれない曲であり、うたい手であります。



 何で聴いているのかって?

 ふふふ、AK120に音源を入れて、GloveAudio A1 にはめ込み、ヘッドフォンはゼンハイザー HD414 に HD650用のバランスケーブル CH650S を付け、ALO Audio の4ピンXLRから角型4ピン・ミニバランス・ジャックへのアダプタをかませてます。HD 414 の真の実力がようやく発揮されてます。この組合せで聴くと、昔リッピングした AAC ファイルでも、ほとんどハイレゾ、ですね。

A1+414-3A1+414-1A1+414-2


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 というわけで、GloveAudio A1 の宣伝でした。


 では、Winds Cafe 215 でお眼にかかりましょう。(ゆ)