びっくりしたなあ、もう。ソニーの新しいウォークマン NW-ZX2 を買ったら、デフォルトで入っているデモ音源5曲のひとつが、Adam Agee & Jon Sousa の〈Paddy Fahy's〉だったのだ。それも市販されていない DSD 版である。


 アメリカはコロラドをベースとするフィドルとギターのデュオ。公式サイトにはマーティン・ヘイズがコメントを寄せているが、まさにマーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの正統な後継者だろう。

 コロラド州ボゥルダーにある Immersive Studios で DSD 録音したものが 1st CD としてリリースされているわけだが、このスタジオの名前には記憶があるぞと調べたら、Otis Taylor の諸作がここでやはり DSD 録音されていたのだった。


 録音もすばらしいが、演奏がそもそも凄い。マーティン・ヘイズの言葉に嘘偽りはあるはずもないが、まったくその通りと心から同意する。21世紀のアイリッシュ・ミュージックは、20世紀とは別の方向に進化しているのだ、とこういう演奏を聴くと納得する。

 20世紀後半にアイリッシュ・ミュージックがめざしたベクトルとは一見対極にも見えるが、音楽自体はむしろよりラディカルにも聞こえる。

 それにしてもだ、いったい、この選曲は誰がしたのか。ソニー・ミュージックに属するミュージシャンでもないこのデュオの音源が、どういう経緯でここに含まれたのか、気になるところではある。

 さらに、こうしてこの音楽が、おそらくはハンパでない数のリスナーに届くわけだ。DSD というだけで耳を傾むける人もいるだろう。イヤフォンやヘッドフォンの試聴にも使われるだろう。そうして、何度も聴かれることになる。その影響は、すぐに現れるわけではないにしても、じわりじわりと効いてくるのではないか。

 妙にうれしいと同時に、こういう時代になったのだ、アイリッシュ・ミュージックもここまで来たか、との想いもわいてくる。

 ぜひにもCDとは別に、何らかの形で、DSD のままリリースしてほしいものではある。(ゆ)


02-24追記
 本人たちにメールを送ってみたら返事があり、Acoustic Sounds から DSD 版の配信販売をする予定の由。それもここ2、3ヶ月のうちらしい。