今年で3回めのイベントにようやく行くことができた。去年は行く気満々だったのに熱が出て病欠したのだった。

 梅雨入り直前のせいか、それとも気候変動のせいか、からりと晴れて、陽射しは強いが、日陰は涼しい。風もあって、休憩後の後半は上着が必要なくらいだった。上野公園も人がいっぱい。昼食を薮で食べて、公園の方へ狭い路地を横切っていったのだが、たくさんある居酒屋が真昼間からどこも満杯。この催しは無料なので、何をやってるんだと覗きにくる人も結構いたようだ。トライフルのときだったか、ふらりと入ってきて近くに座った若い夫婦は、旦那の方が小型カメラでビデオを撮っていたが、海外からの観光客に見えた。トライフルが終わると席を立っていった。

 ノルディックとケルティックのルーツ・ミュージックをやっている人たちが一堂に会しましょう、というのは、まったく無理が無いとは言わないが、それほど奇想天外でもない。昨日もそうだったが、両方やっている人も少なくないし、向こうでも Two Duos Quartet や North See Crossing もいる。ルーツにどっぷり浸りこんで、奥義を極めることをめざすのはすばらしいことではあるが、一方でおおらかに、一緒にやれば楽しいんじゃない、とどんどんやってしまうのも同じくらい嬉しく楽しい。どちらもありだし、むしろ片方だけでは何かが抜け落ちる気もする。このイベントはすべてがいい具合にゆるくて、こういう感覚をしばし忘れていたことを思い出させてくれた。

 まず、会場がゆるい。水上音楽堂は屋根はあるが、ステージの両脇は大きく開放されていて、外の音もふつうに入ってくる。日比谷の野音よりも道路に近い。いっとき、いくつものサイレンの音も響いた。鳥たちも自由に出入りして、小松崎健さんとあらひろこさんのときには、ステージの上でしきりに小鳥が囀っていた。座席は部厚い板のシートで、階段状になり、背凭れもあるので、前の席の背に足をかけることもできる。木製のベンチというのはやはり適度にやわらかい。昼間のビールで酔っぱらったか、寝ている人もいた。好きな姿勢でいられるし、いろいろ姿勢を変えることもできる。お客さんも多くはないから、席の移動も結構自由だ。入口の反対側の端では、Musikanterrna の人たちがニッケルハルパの音出しをしたりしている。

 こういうイベントにはやはり飲食があるのは楽しい。ビールは旨かった。アウグストが出していた2種類を両方飲んだけれど、どちらも個性的で、昼ビールも手伝っていい気分。ゆるい気分がますますゆるむ。もっとも広告にはあった焼き鳥は見当らず、食べ物はもっとあってもいい。そう、これはフォークフェスの気分だ。小さなお子さんを連れた若い夫婦も何組かいたし。子ども向けの企画やお菓子なんかがあってもいいな。

 音楽もゆるい。ステージに集中しなくてもいい。もちろんしてもいい。コンサートやライヴのように、よおし、聴くぞ、とかまえなくてもいい、というだけのこと。興がのれば身を乗出し、酔いがまわればいい気分でうとうとし、友だちがくればおしゃべりに精を出し、好きなように楽しめる。

 音楽の質が低いかといえばそんなことはさらさらない。結構実験的な試みもある。豊田さんたちのフルート3本のトライフルは、昨日がデビューとのことだったが、ぜひぜひ続けてほしい。3人が10本のフルートを取っ替え引っ替えしていたが、メンバーも取っ替え引っ替えするのはどうだろう。Gypsy Pot ももっとちゃんと聴いてみたい。ちょうど北海道勢やティム・スカンロンたちがやってきておしゃべりしていたので、あんまり聴けなかったが、これは結構すごいバンドではないか。ニッケルハルパが13本集合した Musikanterna は見ものだった。個人的収獲は実行委員長が参加する Johanson Saga で、二度目に聴くその委員長のヴォーカルがすばらしかった。中学生と聞く息子さんのフィドルも堂に入った演奏で、将来が楽しみだ。かれの成長を見られるほど長生きしたくなる。ヴォーカルといえば、トリのあんじょんでじょんがうたったのも良かった。

 こんなすてきな催しがタダというのはありがたい。向こうでもフリー・コンサートは結構あるようだが、自治体がカネを出したりしている。東京都にそんな粋なふるまいを期待するのはムダだから、実行委員長や坂上さんたちの踏ん張りに応援するしかないが、有料にしてもいいとは思う。タダだから、ふらりと入ってくる人もいるというのであれば、ネット上の資金あつめなども使ってはどうだろう。こういうところでないと買えないのも多いのでCDは買い込んだが、Tシャツは売ってなかったなあ。

 せめてあたしが生きている間は続けてほしい。たとえヨイヨイになったとしても、車椅子に乗せられて、点滴を吊るし、酸素ボンベが離せなくなっても、これだけは連れていってもらいたい。会場でいい音楽や駆けまわる子どもたちの歓声に包まれて死ねれば本望だ。まわりには大迷惑だろうが。(ゆ)