ジェリィ・ガルシアの未発表インタヴュー集 JERRY ON JERRY 着。Dennis McNally が1973年から1989年の間に5回にわたって録音したものを活字にし、再構成している。録音もオーディオブックとして、配信とCDで出ている。いずれ買おう。
ではあるにしても、マクナリィが言うとおり、即興演奏のとき、実際になにが起きているのか、これだけ明確に語られるのには興奮する。やはりあれはメンバー間の会話で、ガルシアが一人ですっ飛んでいるわけではないのだ。会話の相手によっても、また相手がどう返すかによっても、ガルシアのギターは変わってくる。そのことは 30 TRIPS AROUND THE SUN でもキース・ガチョークの最後の年とブレント・ミドランドの最初の年の対照としても鮮かに聴くことができる。
これを読むと、ザッパが自分の即興についてどういうことを言っているのか、気になってくる。『自伝』にはあったっけ。
豊冨な写真とガルシアの絵画作品が楽しい。写真はよく使われるものも多いが、ガルシア家に保存されているものからのものは珍しい。絵がどれも面白い。ガルシアの絵はスタイルが複数ある。写実、抽象、ざっくりとしたスケッチ、細かく描きこんだ細密画。この人は画家としても大成しただろう。ガルシアの絵の個展を見てみたい。
版元の Black Dog & Leventhal Publishers は Hachette のインプリントのひとつで、あまりインプリントらしくない名前だなあ、どんなところなのかと検索すると、1993年、J. P. Leventhal という人物が創設した出版社だった。これを昨年11月アシェットが買収している。このことを報じたブログは Melville House というブルックリンの独立出版社のもの。
この変わった社名は上記ブログが引用している創設者の文章によれば、かれの一族が妹の前夫まで含めて全員が出版業に携わっているなかで唯一いなかったのが黒犬 Tess だったので、当初 Black Dog Press とするつもりが、流通を担当する Peter Workman が人名も入れるべきだと主張したためだそうだ。このワークマンはあのワークマン社のようだ。
メルヴィルのいうとおり、アシェットが買う前になぜワークマンが買わなかったかと思うが、買えない事情があったのだろう。Black Dog & Leventhal Publishers は美術関係など、いわゆるコーヒー・テーブル・ブックが得意で、美術館のショップに販売網を持っているらしい。確かにガルシア本のデザインもキレがいい。アシェットはアマゾンに対抗するため、アマゾン以外の流通網の整備を精力的にやっており、この買収もその一環、というのがメルヴィルの見方。ランダムハウスとペンギンの合併で他のメガ版元に圧力がかかってもいるのもたしかにあるのだろう。アシェットはロングセラーを持っている小規模版元を次々に買収しているという。
では、小規模な独立版元が消えるかというと、そうでもないようなのも面白い。こうして買われた版元の創設者たちは、当初はそのまま残っているが、しばらくするとまた独立したりする。コングロマリットになると、売れるものを出せという圧力がかかるなどするからだろう。先日 NYRB にも誰か書いていたが、出版というのはつまるところメディアの規模としては小さなものなのだ。
メルヴィル・ハウスの方は、結構多彩な本を出している。ウエブ・サイトには Fantasy や Science Fiction という項目もあって覗いてみるとストルガツキー兄弟などがある。フィクションは翻訳がメインらしい。新刊としてフィーチュアされている1冊に Manuel Vazquez Montalban の THE BUENOS AIRES QUINTET があり、紹介文によればメタフィジカルな探偵で、テーマは資本主義の本質をなすブラックな要素らしい。資本主義はほおっておけばブラックになってしまうものだ。しかも資本主義は収奪される側だけでなく、収奪する側も縛る。その道理にしたがって大きくなると、カネの奴隷にされてかえって動きがとれなくなる。カネが欲しいという人間の欲望から資本主義は生まれたわけだが、そうなるとカネが手段でなく目的になる。目的となったカネは独自の意志を持ち、人間を収奪して太る。結果、カネだけは増えるが、そのことで幸せになれる人間は誰もいない。ドナルド・トランプも渡邉美樹もちっとも幸せそうではない。バスケス・モンタルバンはバルセロナ生まれの詩人。国会図書館で検索すると、このペペ・カルバロというスペインの私立探偵のシリーズが3冊邦訳されている。創元から出た最初のものを図書館で取寄せてみる。(ゆ)






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