ワーナーからこういうタイトルのシリーズが出るそうです。
監修は松山晋也さん。

 ケルトってのがアイリッシュやあるいはエンヤみたいなものに限られるわけではない、というのには大賛成で、ぼくは「ケルト」をヨーロッパのみならず、北米、オセアニア、時にはアジアも含めて全部ひっくるめたものを指すことばとして使っているつもりです。

 松山さんから電話をもらってこういうのが出ることを知ったわけですが、ラインナップを見て、歓びました。

 インクレディブル・ストリング・バンドが入っているのは松山さんの趣味かなとも思いますが、ぼくも嫌いではないです。どちらかというと4月発売分の《THE HANGMAN'S BEAUTIFUL DAUGHTER》が好み。どこがケルトかって? 中心メンバーの一人ロビン・ウィリアムスンはスコットランド人で、ずっと後になりますがクラルサッハ(スコティッシュ・ハープ)でばりばり伝統曲アルバムを出してます。凄く良いです。ジョン・レンボーンとの共作もありました。最近は ECM からソロを出してますね。もう一人のクライヴ・パーマーはイングランド人だけど、ソロで出したバンジョー・アルバムは結構良かったです。

 ECM といえば、北欧ばかりと思ってたら、ジューン・テイバーなんかも出してて、油断できません。というのは余談。

 とまれ Celtas Cortos(スペインだから「ケルタス・コルトス」じゃないですかね) とか、Great Big Sea とか、Eleanor Shanley が国内盤で出るのは嬉しい。Luka Bloom もいいですねえ。これが売れれば、ウェールズの Martyn Joseph なんかもどうでしょう。

 Celtas Cortos は楽しいバンドで、スカンディナヴィアのかつての Filarforket や、今だったら Alamaailman Vasarat のような立ち位置といったらわかりやすいかな。こういう大真面目に不真面目をやっているバンドはブリテン諸島ではなかなか無くて、やっぱり大陸の産物なんですかね。ケルトとジャズの融合として一級です。

 Great Big Sea はカナダ東部のバンドで、他にも Rawling Cross とか、このあたりはかなり面白いところです。豪快なケルティック・ロックですが、アメリカにはまず無いデリカシーがちゃんとあるところがカナダ。それになぜかこういうバンドはアメリカにはない。カナダとかオーストラリアとか、英国植民地であり続けた地域にあるのも不思議でもあり、面白くもあり。もっともアメリカでも Seven Nations は結構好き。

 Eleanor Shanley はデ・ダナン出身の若手シンガーの中の出世頭でしょう。1990年のデ・ダナンの A JACKET OF BATTERIES で初めて聴いたのは鮮烈でした。そしてこのファースト・ソロはシンガーとしての評価を確立したもの。久しぶりに公式サイトに行ってみたら、あらら、たくさん出てる。新作が出たばかりです。

 デ・ダナン出身といえばモーラ・オコンネルもそうですが、彼女はアイルランドのシンガーのなかでアメリカと波長が一番良く合う声とスタイルをもっていて、デ・ダナンの THE STAR SPANGLED MOLLY の成功もそこに負うところが大きい。ソロになってからの彼女はアメリカとアイルランドの中間のどこかでうたってるんですが、どちらでもあり、どちらでもない、でも中途半端ではない、不思議な世界。HELPLESS HEART はベラ・フレックがプロデュースして彼女のアメリカ的要素をうまく引き出した出世作。そこでジェリィ・ダグラスに出逢ってできた WANDERING HOME は彼女の最高傑作と思います。

 Chris Rea の《シロツメクサ日記》は出た当時『包』で松山さんが紹介していたので聴いてみたら結構気に入りました。うたも渋いし、ギターもうまい。その後も何枚か買っていたはず。また聴きなおすかな。それにはアナログ・プレーヤーを直さにゃならんけど。

 ブルターニュの Gwendal が国内盤で出ようとはまるで思いませんでした。ブルターニュのケルト音楽がジャズをとりいれる先駆けのバンド。アラン・スティヴェールは幅の広い人ですが、ジャズはなぜか入っていない。かれは徹頭徹尾ロックの人。Gwendal はジャズで伝統音楽を解釈することを始めて、スティヴェールに負けない影響を後続に与えてます。

 ムーヴィング・ハーツのファーストが国内盤で出るのは二度目かな。クリスティ・ムーアは国内盤は初めて。ぼくが頼まれたのはこれで、久しく聴いていないので、聴きなおさないと。昨年末にふと思いたって、クリスティの持っていなかった近作を数枚買っていたのはよいタイミングでした。ここのところ調子がいいですね。老いてますます盛ん、というより、みんな、老いるほどに盛ん。ああいう姿を見ると、元気が出ます。

 ということで、3月、4月と10枚ずつ、20枚出ます。1枚1,300円と安いし、どれも面白いですから、皆さん買いましょう。

 さあて、クリスティの録音を久しぶりに全部聴き直しますか。といって、ファーストは持っていないけど。(爆)(ゆ)