英国の Kitschies の第6回の最終候補が発表になっている。受賞作発表は3月7日。選考は部門別の選考委員会。
英国のゲーム、ウエブ・サイト開発会社がスポンサーの賞で、「スペキュラティヴで、ファンタジィの要素を含む、先進的で知的で面白い作品」に与えられる。小説、デビュー作、カヴァー・アート、デジタルの4つの部門。デジタル部門は電子本だけでなく、インタラクティヴ・フィクション、ゲームなども含む。
小説のうちN・K・ジェミシンの THE FIFTH SEASON はネビュラ、Dave Hutchinson の EUROPE AT MIDNIGHT が英国SF作家協会賞の候補にもなっている。この2冊と Adam Roberts の THE THING ITSELF はローカスの推薦リストにも収録。また、デビュー作はすべて他のリストには無い。
賞の名前の "kitschy" は「キッチュ」から来ているのだろう。わざと古めかしい装いをまとった、浅薄で俗物的なものをさす。この場合はむろん逆説的用法。"bad" がすごく良いことであるのと同じ。
オーストラリアの Norma K. Hemming Award の最終候補が発表になっている。
オーストラリア国内で、またはオーストラリア市民によって発表された、人種、ジェンダー、セクシュアリティ、階級、障碍をテーマとする優れたスペキュラティヴ・フィクションに与えられる。主催はオーストラリア・サイエンス・フィクション財団(ASFF)。2010年、メルボルンの第68回世界SF大会 Aussiecon 4 で第1回の受賞作が発表・授与された。選考は選考委員会による。ASFF は1975年、オーストラリア初の世界SF大会 Aussiecon の運営のために設立された。受賞作発表は3月末のオーストラリアSF大会 Contact 2016。ディトマーと、サイエンス・フィクションでなみはずれた業績に与えられる A. Bertram Chandler Award と同時。ノーマ・キャスリン・ヘミング (1928-1960) はオーストラリアの女性SF作家のパイオニア的存在。
7本の最終候補のうち2本が Aurealis の候補と重なる。1本はヤングアダルト長篇、もう1本は短篇。
受賞作発表は5月17日の StokerCon。1987年創設で、主催は Horror Writers Association。対象は全世界で英語で発表されたもの。HWA の会員資格は国籍を問わない。ただ、ストーカー賞の対象は基本的に英語による作品。ノミネートは協会員の推薦と各部門別の推薦委員の推薦。ここから会員の投票により最終候補と受賞作が決まる。この賞は「最優秀作品 best」を選ぶのではなく、「すぐれた作品 superior」を選ぶとわざわざ断わっている。複数の受賞作が可能なようにルールを作っている由。
ホラー、ダーク・ファンタジィの分野は専門の書き手が多く、媒体も別で、他のリストとはほとんどまったくといっていいほど重ならない。サイエンス・フィクションやダークではないとされるファンタジィでもホラーやダークな要素を重要なモチーフにしている作品はあるが、それとはどうも選ぶ基準が違うようでもある。例外的に Alyssa Wong の "Hungry Daughters of Starving Mothers” はネビュラの短篇部門最終候補に入り、ローカスの推薦リストにもある。また Stephen Jones 編 THE ART OF HORROR: An Illustrated History がローカスの推薦リストにある。
なお、賞のノミネートの参考として推薦リストが発表されている。こちらにはサイエンス・フィクション、ファンタジィとして出ているものも含まれる。
こうして並べてくると、前年の成果を確認・表彰する各賞の発表は3月から始まり、8月のヒューゴー賞発表はその締めくくり、総仕上げになるわけだ。(ゆ)
Dave Hutchinson
Solaris
2015-11-05
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