ああ、しかし、もっと速く読みたい。速読がしたいわけじゃない、もっとたくさん読みたい。あれも読みたい、これも読みたい、今すぐ読みたい。でも、今読んでるこれをとにかく読み終らなければ次には移れない。とりわけ、長篇はそうだ。長篇を読みながら短篇を読むことはできるが、長篇の途中で別の長篇を読みだすとどちらも中途半端になりかねない。だから、もっと速く読みたい。
いや焦ってはいけない。焦るとロクなことはない。肝心のところを読みおとしたり、とんちんかんな読み違えをしたり、あるいはまるで楽しめなくなったりする。おのれに合ったスピードで、とにかく毎日、ごりごりと読んでゆくしかないのだ。
The Kitchies の受賞作が発表になっている。
マーガレット・アトウッドのSFF関連の賞の受賞は THE HANDMAID'S TALE(侍女の物語) による1987年度アーサー・C・クラーク賞以来。
SFWA は今年のケイト・ウィルヘルム記念ソルスティス賞を昨年3月に亡くなったサー・テリー・プラチェットに与えると発表した。
2008年に創設された賞で、「サイエンス・フィクションまたはファンタジィ世界の風景に重大な影響を与え、スペキュラテヴ・フィクションの分野にとりわけ大きくポジティヴな変化をもたらした個人」に生死にかかわらず与えられる。SFWA取締役会の過半数の賛成を得て、会長が選定する。今年から「ケイト・ウィルヘルム記念」の呼称が加えられた。グランドマスターがデーモン・ナイトで、児童文学がアンドレ・ノートン、ドラマティック・プレゼンテーションがレイ・ブラッドベリ、SFWA自体への貢献を顕彰する賞が Kevin O'Donnell, Jr. とそれぞれ個人名が冠されているのに合わせる意味もある由。ウィルヘルム自身、ソルスティス賞の受賞者の一人。サイエンス・フィクション最高の作家のひとりであるとともに、クラリオン・ワークショップ、SFWAとネビュラ賞創設の牽引役となったデーモン・ナイトの夫人でもある。
これまでの受賞者はウィルヘルムの他、アルジス・バドリス、オクタヴィア・バトラー、アリス・シェルドン/ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、ジョアンナ・ラス、トム・ドハティ、カール・セイガン、スタンリィ・シュミット、マイケル・ウィーラン、テリ・ウィンドリング、マーティン・H・グリーンバーグ、ドナルド・A・ウォルハイム、ジョン・クルート、Ginjer Buchanan。わが国ではあまり知られていなさそうな人について簡単に記すと、ドハティとウォルハイムはそれぞれSFF専門出版社の創設者。シュミットは Analog の編集長をキャンベルと同じく34年間勤めた。ウィンドリングとグリーンバーグはアンソロジスト。クルートは Interzone 創設者の一人で、Science Fiction Encyclopedia の編集長兼執筆者。ジンジャー・ブキャナンはペンギン・グループのSFF部門である ACE と ROC の編集者を30年勤めた。
サー・テリーの Discworld シリーズは英語圏最大のベストセラーのひとつだが、諷刺とユーモアを旨とするので日本語ネイティヴ・スピーカーにはなじみにくい。とりわけイングランド人のユーモアのセンスにはいらだつ人が多いようだ。
諷刺とユーモアはサイエンス・フィクションの重要な機能のひとつで、プラチェットはそれを最大限に展開したということだろう。この機能は日本語サイエンス・フィクションでは弱いように思う。初期の筒井やかんべむさしがいるし、星新一と山田風太郎の諸作品でも重要な要素だが、メジャーな扱いは受けていない。ユーモアのセンスでは筒井にも負けない小松左京も、『日本アパッチ族』という諷刺とユーモアが爆発している大傑作を長篇第一作としながら、その後はいたってマジメな作風で通した。
日本語ネイティヴはマジメが好きで、茶化されるのが嫌いだが、茶化してみて初めて見えたり筋が通ったりすることは少なくない。茶化し茶化されることを嫌うのは、精神的怠惰ないし怯懦といってもいい。別の面から言えば、なにものかに依存つまり中毒しているので、茶化されるとその依存関係が暴露されてしまう故に嫌う。依存ないし中毒の対象はいわゆる薬物だけではない。メディアであったりネット/スマホであったり、あるいは権力幻想であったり、カネであったりする。共依存などの対人関係もある。サイエンス・フィクションはふだんは隠されている依存関係を暴露する時、強力で高機能なツールとなる。ディスクワールドが暴いた依存関係は確認する価値がある。(ゆ)

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