毎月恒例のディスク・ユニオン新宿とユニバーサル・レコードによる新譜紹介。今月は中山千尋の新譜が出るのにひっかけて日本人アーティストがテーマ。
前半、ディスク・ユニオン新宿の羽根さんの担当。まずはサックスの木村広人のバンド、Kimura Hiroto Energy Void《Initia Stage》からタイトル・トラック。こういうの好き。勝田弘和のギターがいい。ミニ・アルバムで安かったこともあって、買っちゃいました。
凄かったのは寒川敏彦、本田珠也、類家心平のトリオ、Natural Born Killer Band のファースト《CATASTROPHE OF LOVE PSYCHEDELIC》で、ライヴはこんなもんじゃない、ってそりゃあそうでしょうけど、これでも充分凄い。音量というよりも噴出してくるエネルギーがマックスのレベルでそのテンションがまったく衰えない。一瞬たりともへこまない。シラケとか閉塞感とか完全に吹き飛ばす。演る方もだが、聴く方もコンディションを整えて臨まないと、叩き潰されて立ち上がれなくなるだろう。セシル・テイラーとタメを張るか。
この二つの印象が強くて、他の3つもそれぞれに面白かったけど、影が薄くなってしまった。もっともどれもライヴはまた別物のはずで、見たくなります。見るのが一番難しいのは日米混成の New Century Jazz Quintet だろうが、かれらも8月、国内ツアーするそうだから、どこかでつかまえてみよう。
ユニバーサルさんの方は、日本人アーティストだけというわけにはいかず、日本人は3組で、まずはメインの中山千尋。なんだけど、あたし、この人苦手なのよね。でも Yoshi Waki のベースがいいなあ。これはもっと聴きたい。
2人めはバークリーを出て、ニューヨークのブラック・ミュージック界で今一番ひっぱりだこの鍵盤奏者 BIGYUKI。ジャズというよりソウル、ヒップホップ方面に分類されるんでしょうが、あたしの耳にはこっちの方が面白い。開拓者精神というか、どんなとこでもどんどん踏み込んでゆく、傍若無人にみえて一緒に演ると楽しくなるんだろうな。
3人めは Takuya Kuroda。ブルーノートから録音を出した初めての日本人ミュージシャンの由。でも今回の《ZIGZAGGER》はブルーノートではなく、コンコードからのセカンド。聴いてる間は面白いが、記憶に残らないのはあたしのせいか。どうもこの日は今ひとつ体調が万全でなく、音楽に入りこめなかった。
ユニバーサル側で一番面白かったのはイタリアの Stefano Bollani の《NAPOLI TRIP》。ナポリを音楽でうろつきまわるという趣向で、テーマは同じだが、各曲はそれぞれに独立し、まったく違う様相を見せる。これがジャズかと怒る人には怒らせておいて、覗くたびに見えるものが変わる不思議な遠眼鏡を覗くのはやっぱり楽しく、全部聴きたくなってこれも購入。
Trinite を聴くようになって、それに連なる日本人ミュージシャンの音楽も徐々に聴いているのだが、こうしてみると最も広い意味でのジャズをやっている人たちはいったいどれくらいいるのか、目も眩んでしまう。数だけでなくて、これまで聴いたところから推測するに、水準も高いだろう。今回聴かせてもらった人たちは比較的名前の通った人たちらしいけど、黒田京子とか喜多直毅とか佐藤芳明とかかみむら泰一とかいった人たちもこの辺りに入ってくるのだろうか。一噌幸弘はどこに入るのだろう。そうみてみると、クラシックや伝統音楽とのつながりも含め、日本のジャズ・シーンの全体像を把握して描ける人が誰かいるのか、とすら思える。いたら是非一度話を聞いてみたい。うーん、こういう時、星川さんがいたらなあ。
日本人アーティストのジャズ界展望は宿題にして、次回はお盆明け、08/24(水)20:00から。お題は Snarky Puppy Festival@いーぐる。公式サイト限定《WORLD TOUR 2015》と新作を中心になるそうな。このボックス・セットは昨年のワールド・ツアーの録音から16本のライヴを選び、CD32枚組としてリリースしたもの。ディスク・ユニオンでも扱っているそうな。
実は買っちゃいました。注文すると 256Kbps の MP3 ファイルをダウンロードできる。CDが届くのを待たずにそれを聴きだしたところだけど、かなりいい。ひょっとすると、21世紀にグレイトフル・デッドを継承しているのはかれらかもしれないと思わせてもくれる。(ゆ)
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