Max Gladstone が主著 The Craft Sequenceヒューゴーに新設される Best Series の最終候補になったことを歓ぶニュースレターを送ってくる。まだ最初の1冊、Three Parts Deadを読んだだけだが、最終候補は当然の評価だ。ナオミ・ノヴィクやビュジョルドという強力な老舗があるし、コリィやマガイアのシリーズも評価が高いから受賞は難しそうではある。おそらくは昨年9冊で完結したノヴィクが頭一つリード、ビュジョルドが追い、「新人」たちが横一線というところだろう。が、見方を変えればどれが受賞してもおかしくはなく、これの結果は楽しみだ。

 このニュースレターに使われている、ゾウがトランポリンしている動画は楽しい。

 グラドストーンの最新作の中篇 "The Scholast in the Low Waters Kingdom" は新しいシリーズ Space Mohist の幕開けで、これも楽しみだ。Mohist は「墨家」のこと。各惑星をつなぐ瞬間移動可能な「門」がランダムに出現しだしたことで混乱する宇宙で人びとを守ろうとする「墨家」たちの話。墨家は戦国時代の中国にあって、「兼愛」すなわち誰でも差別なく愛することと、「非攻」すなわち外への侵攻を否定することを主張した。戦乱の時代では攻めることを否定すれば守ることを重視することになる。かれらは各都市国家の防衛の専門家として活動し、実績をあげたそうな。このシリーズの「宇宙墨家」たちも、「門」を利用して侵略掠奪を行う連中から世界を守る集団だ。

 この「門」のアイデアはC・J・チェリィのデビュー作 GATE OF IVREL に始まる Morgaine シリーズと共通する。「門」を誰がいつ、何のために造ったのかわからないというのも同じ。「門」が出現している期間は短かいが、いつ消えるかはわからないというのはグラドストーンの独創だ。それにチェリィではヒロインたちはこの「門」を破壊しようとするが、こちらでは「門」が引き起こす混乱や争いから人びとを守ろうとする一団が中心となる。

 グラドストーンはイエールで禅詩と後期明朝小説を学んだそうで、中国語ができ、ラテン語も読め、マーシャル・アーツ、フェンシングをやり、おまけにフィドルまで弾く、とサイトのバイオにある。アジアとヨーロッパ各地を旅して、アンコール・ワットで自転車をぶち壊し、モンゴルで二度落馬し、カーネギー・ホールでうたったことがあるそうな。ひとつところに根をはやすのが悪いとは言わないが、こういう広い見聞をしている書き手の方が面白いものを書く、というのはあたしの経験則ではある。

 ところでノヴィクの「テレメア戦記」も全9冊中6冊で邦訳は止まっている。もしヒューゴーを獲れば再開されるだろうか。(ゆ)