ドア・チャイムを鳴らしたのは郵便配達の人で、ポストに入らないんですよ、と手渡された封筒は確かに部厚い。送り出し人を見ると福岡の Rethink Books とある。はてな、ととり出してみたら、こんな枕本が出てきた。


下北沢に B&B という本屋兼カフェがあって、あたしも何度かイベントに行ったし、またイベントをさせてもらってもいる。そこの中川さんからそういえば「今日の宿題」を頼まれて出したことがあったっけ。先日、本にするからと「校正」も頼まれていた。それがこんな立派な、サイコロのような本とは思いもよらなかった。宿題を出した人は計320人、各々が見開き2ページになるから、それだけで640ページ。写真やいろいろついて計680ページ。サイズは文庫。定価は980円+税。販売は B&B と B&B が出張出店し、この「今日の宿題」が掲示された福岡・天神の Rethink Books のみ。もっとも Rethink Books の方は今月いっぱいで閉店。
昨年6月1日から1年間の限定で開いた Rethink Books の店内に、本棚は置けないスペースがあり、ここを活用するために考えられたのが「今日の宿題」。毎日違う人が出した「宿題」がここに掲示される。この「宿題」はネットなどでは公表されず、本屋に行かないと見られない。もっとも知らないで来た人は不意打ちを食う。「宿題」をどう受取るかはもちろん、来店した人、見た人それぞれに任される。その宿題を集めたのが、この本だ。
320人の出題者は掲出順に巻頭の谷川俊太郎氏からラストの吉増剛造氏まで、まあ、いろいろな人がいる。一応肩書もついている。山伏という人もいる。B&B のイベントに出たときに頼まれたので、あたしと村上淳志さんとトシバウロンが並んでいる。あたしのものと、トシさんのものの趣旨が同じなのも面白い。アイリッシュ・ミュージックとの関わりからの感覚だからだろうか。少なくともあたしはそうだ。
アイリッシュ・ミュージックを好むようになったのは、あたし自身の積極的な意志による選択では、金輪際無いからだ。そうすると、他の音楽の嗜好も、読む本も、どれも向こうからやってきたので、自分から選んだとは到底思えなくなる。おまえは私を聴かねばならない。おまえは俺を読まねばならない。いつもそう言われていると感じる。そして、相手の「意志」には従わざるをえない。到底抵抗できるようなものではないからだ。それに、従って嫌な想いをしたことも、今のところ、無い。
それはそれとして、他の人たちが出した宿題を見てゆくのは、たまらなく面白い。にやりとするもの、へーえと驚くもの、うーんと考えこまされるもの、わっはっはと笑えるもの、そうだよねえと共感するもの、なんだかわからないもの。どれにも共通するのは、出した本人が常日頃抱えている問題意識の反映であること。したがってどれも切実なのだ。思わず、答えたくなる。もちろん、どう答えるかは、読者に任される。答えなくたっていい。ただ、答えようとして、いろいろ考えることは楽しい。
一気に読むのも楽しいだろうが、ここは元の趣旨にしたがって、毎日一題、1年かけてゆっくりと読んでゆくのも面白い。
この企画に招いていただいた中川さん、ありがとうございました。そして、この企画を考えて実行した内沼晋太郎氏と B&B、Rethink Books の皆さんにも感謝。(ゆ)
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