半年ぶりに見るバンドは、また一皮剥けたようだ。バンドとしては2ヶ月ぶりとのことだが、ライヴ回数がそれほど多くない割りに、このバンドはタイトだ。ひとつにはフロントの二人のユニゾンがかちりとはまっていることもあるのかもしれない。ボシィ・バンドのフロントに似ている。
メロディ楽器のユニゾンが決まると全体がタイトになるというのは、アイリッシュ・ミュージック特有の現象かもしれない。というよりも、フロントがユニゾンで、リズム・セクションが跳びまわったり、ハモったり、あるいはポリリズムになったりという形は、アイリッシュ以外ではあまり見かけない。スコットランドやウェールズでは時々そうなることもあるが、フロントはユニゾンが原則というところまではいかない。イングランドはまずまったく無いと言っていい。
沼下さんが仙台からもどってきて、リハーサルをやる時間もあったのだろうか、いきなり〈Waterman's〉から始める。それが見事に決まっている。見るたびに巧くなっているのがよくわかる。最初にライヴで聴いたときには、ほとんど必死、という感じだった。それが、どんどんモノにしていって、今回はほとんどさらりとやっている。後で曲名を言われて、あれ、そうだったんだ、とあらためて認識したくらいだ。
もう、あたしなんぞがどうこう言えるレベルではない。あとはただ、うっとりと音楽に身をまかせていればいい。
ここはホメリなみに細長く、PAのスピーカーがその一番奥のカウンターの前と、反対の端、窓際に置かれている。その窓際のスピーカーの真ん前の席だが、音のバランスはすこぶる良い。熊谷さんの打楽器以外はアンプを通していて、ブズーキが若干大きめに調整されているのもちょうどよい。
フロントのユニゾンとリズム・セクションの遊びが土台ではあるが、時にはブズーキとフィドル、アコーディオンとパーカッションなどの組合せで聴かせ、これを受け渡してゆく。フルバンドのサウンドとは対照的な個々の楽器の音が際立って、これがまたいい。ほとんどはダンス・チューン一周ぐらいだが、たまには曲の切れ目で交替したりしてもいいんじゃないか。そう、このバンドのタイトなのは、個々の音の切れ味が良いことからもきているのかもしれない。
高梨さんがまたホィッスルで参加する。前回もそうだったが、このホィッスルの奔放な遊びが加わると、タイトなままに膨らみが増す。高梨さんの曲をやるのも、きゃめるや tipsipuca + とは違う厚みが出る。これにはやはり田中さんのアコーディオンが一役買っているのだろう。蛇腹というと皆さんコンサティーナに傾く傾向があるが、アコーディオンの厚みはやはり魅力だ。こうして並ぶと、この3人のフィドル、アコーディオン、ホィッスルだけの演奏というのももっと聴いてみたくなる。このバンドの気持ち良さは、ひょっとすると、このアコーディオンが鍵なのかもしれない。
ホメリとどっこいどっこいの店内は満席。ここはまだわが国ではまだ珍しいヴィーガン、つまり卵も乳製品もはずした徹底菜食の店。他の人が食べているのを見ると、かなりな量があり、旨そうだ。天井や壁に吊るしたドライ・フラワーや木の枝の装飾も気持ちがいい。
熊谷さんは今度、上々颱風のヴォーカル、白井映美氏のライヴに出るそうで、そのチラシを配っていると、お客の若い女性が両親が上々颱風のファンで、幼ない頃、連れていかれたといいだす。ということは、このご両親はあたしと同世代。帰りの電車で窓に映る自分の姿を見ると、どうみてもこれはジジイだ。近頃、頭がずいぶん白くなったとかみさんにも言われた。これではいかんと、帰りは駅から歩いて帰る。夜はようやく多少涼しくなってきて、歩いていても気持ちがいい。(ゆ)
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