適当にあだ名をつけてくれと豆のっぽに頼んだら、はいからさんになったそうだが、さいとうともこさんにぴったりではある。その昔『はいからさんが通る』というマンガがあったのを思い出した。ついに読んではいないが、タイトルとしては秀逸。
さいとうさんは年始恒例の Cocopelina の東京遠征で東下していて、1日空いたのでライヴをやらないかと豆のっぽの二人を誘い、二人が応じてこの日のライヴになる。まずはさいとうさんがソロで3曲ほど演り、成田さんがバゥロンで加わって1曲、高梨さんがコンサティーナで加わって1曲、という具合。スコティッシュのメドレーではじめ、2曲めは〈Eleanor Plunkett〉からのアイリッシュのメドレー。3曲めはフィドルを弾きながら唄う。この人のフィドルの音は実に綺麗だ。美しいというよりも綺麗である。たとえば上記アイリッシュ・メドレー2曲めのややゆっくりしたリールのダブル・ストップには惚れ惚れする。
前半のハイライトはトリオでのジグのセットで、さいとうさんが無伴奏フィドルではじめ、2周めでバゥロンが入り、3周めでロウ・ホイッスルがドローンをつけ、4周めでロウ・ホイッスルがハーモニーをつける。メドレー2曲めはユニゾンになるが、今度はフィドルが遊びだす。このあたりの呼吸が、たまらん。
同様の出入りや役割交換は後半冒頭の高梨さんの〈君とサンドイッチ〉でも鮮やかで、輪唱ならぬ輪奏からユニゾンになったり、ハーモニーをつけたり、カウンター・メロディをかましたり。どうやら片方がAパートをやっているともう片方がBパートをやり、次にはまた逆になる、なんてこともやっているようだ。陶然となる。これはむしろ臨時の組合せならではだろうか。
後半は豆のっぽの二人だけでしばらくやる。ハイライトは二人ともコンサティーナでやった〈Margaret's Waltz〉。ここでもリピートごとに役割を交替して、ユニゾンになったり、ハーモニーやリズムをつけたり。ハーモニーも片方が上につけると、もう片方は下につける。こういう自由さはデュオならではだ。
さいとうさんといえば、歌もウリだが、今回最大の「衝撃」は後半も半ばを過ぎてやってきた。あの〈Josephine's Waltz〉にスウェーデン語で歌詞をつけた人がいるのである。ハープの梅田さんが見つけてきたのを、さいとうさんが耳コピでスウェーデン語をカタカナ化して唄う。すばらしい。あの名曲がさらに超名曲になる。
その後のリールのメドレーの3曲めも、さいとうさんがよく遊んで名演になる。
とても臨時に組んだとは思えない息の合い方で、ぜひまたこの組合せで演ってください。まあ、こういう自由さは、ミュージシャンたちの実力が高いこともあるが、アイリッシュの利点でもあろう。ごちそうさまでした。(ゆ)
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