春分の日に NHK-FM で放送した「今日は1日ケルト音楽三昧」で放送された楽曲解説の続き。
#zanmai
プレイリストは番組の公式サイトに上がっています。
40. Port Na Bpudai> Kilnamona Barndance> Ship In Full Sail> Jer The Rigger> The Old Blackthorn> Exile Of Erin> Humours Of Tulla> Fitzgerald's Hornpipe> Rakish Paddy> Finbarr Dwyer's Reel No.1> P Joe's Pecurious Pachelbel Special / Martin Hayes, Dennis Cahill
トシバウロンのリクエスト。《Live In Seattle》(1999) 収録のこのトラックは11曲のメドレーで、28分あります。アイリッシュ・ミュージックの一つの究極の姿ですが、ふだん、ラジオなどではかけることができません。今回は8時間という長丁場でもあり、ぜひ、聴いてもらいたいということで実現しました。
ごくゆっくりしたスロー・エアに始まり、徐々にテンポが上がっていって、最後、トップ・スピードでのリールに爆発します。しかもバロック音楽の有名な〈パッフェルベルのカノン〉をリールに仕立てるという離れ業。〈パッフェルベル〉はこれですっかりアイリッシュのレパートリィに定着しました。
後で登場するゲストの豊田耕三さんがこれに倣って、演奏、録音したのが近作の《Internal Circulation 呼吸の巴 [CD]》。
Martin Hayes: fiddle
Dennis Cahill: guitar
41. Scotland The Brave / 東京パイプバンド
リスナーにはマーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの「神録」を聞いていただいている間に、我々はもう一つのスタジオに移動、準備をしました。
ハイランド・パイプのパイプ・バンドの生演奏をやりたい、と始めに言われた時には、マジかと疑いました。その音量の大きさを十分承知していて、狭いスタジオのなかであれを生で聞かされるのはたまらん、と思ったからです。実際には、放送に使われていたのとは別の、遙かに天井の高い、広く、大きなスタジオが用意されていて、あたしの危惧はまったくの杞憂に終りました。
演奏は東京パイプ・バンドの選抜メンバーで、パイパー3人にスネアとバス・ドラムが一人ずつという編成。この打楽器が入ると全体がぴりっと締まります。
曲はおそらくスコットランドの音楽の中でも最も有名なもの。
42. Flower of Scotland> MacGregor of Rora> Andy’s Lullaby / 東京パイプバンド
パイプ・バンドでもう1曲。スローな曲からだんだんテンポがアップします。こういう組合せはスコットランドの得意技。アイルランドは同じテンポの曲をつなげることの方が多いです。
最初の曲はスコットランドの「国歌」の一つです。パイプ・バンドのリーダー、山根さんによると、「国歌」とされている曲は三つほどあり、さらに近い将来の独立を期待して新たな「国歌」もすでに用意されている由。この曲は現在最も頻繁に演奏されるもので、今年予定されているラグビー・ワールドカップのスコットランド戦では東京パイプ・バンドによって演奏される予定だそうです。
ハイランド・パイプの演奏を聞くといつも思いますが、この楽器は剛球一直線です。とにかく真向から投げおろす剛速球のみ。それでばったばったと三振をもぎとる。ど真ん中をストレートで貫くだけで、イチローでも打ち返せない、そういう投手。
43. Opening Slip / 生梅
スコットランドのハイランド・パイプに対してアイルランドのイリン・パイプを演奏するのが中原直生さん。中原さんのパイプと組むのはアイリッシュ・ハープの梅田千晶さん。お二人の名前から「生梅」というわけ。
パイプとハープという組合せはアイルランド本国でも見当りません。また女性パイパーもまだまだごく少ない。とてもユニークなデュオであり、音楽です。ハイランド・パイプに比べると、こちらは流れる水の音楽です。
演奏は3曲のスリップ・ジグの組合せ。〈Give Us A Drink Of Water> Port Na Siog> Hardiman The Fiddler〉。このトラックは彼女たちの2枚のアルバム《生梅開店》(2011) と《生梅の旅》(2012) の両方に入っています。
スリップ・ジグはアイルランドに特徴的なビートの一種で、拍の一つにアクセントがあります。普通のジグや、あるいはリールは拍と拍の間が等しい等拍ですが、スリップ・ジグの拍は不均等です。
44. 森の砂時計 / 生梅
中原さんがホィッスルに持ち替えて、二人のオリジナル曲。かなり難しくも聞えますが、楽しい佳曲です。《生梅の旅》(2012)収録。
45. Love Theme(映画「Barry Lyndon」から) / The Chieftains
ここでリクエストが2曲。
まずはチーフテンズの録音が映画に使われた最初のもので、スタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』の「愛のテーマ」。元は《The Chieftains 4》(1973) 収録の〈Mna Na Heireann (Woman Of Ireland)〉で、チーフテンズの前身となったグループを作ったショーン・オ・リアダ(1931-71)の作品。オ・リアダは作曲、編曲を通じてアイルランドの伝統音楽近代化の先鞭をつけた人物。
ちなみに《The Chieftains 4》はデレク・ベルが初めて(ゲストとして)参加したアルバムです。
Michael Tubridy: flute, concertina, and tin whistle
Sean Potts: tin whistle
Paddy Moloney: uilleann pipes and tin whistle
Martin Fay: fiddle
Sean Keane: fiddle
Peadar Mercier: bodhran and bones
Derek Bell: harp
46. A Rose For Epona / ELUVEITIE
リクエストのもう1曲はスイスのフォーク・メタル・バンド、エルヴェイティの曲。《Helvetios》(2012) 収録。
このバンドは今回、リクエストであたしは初めて知りました。「フォーク・メタル」というジャンルの存在も初耳でした。メタルだけでなく、アコースティックな組立てでもやっているそうなので、これから聴いてみようと思っています。
Chrigel Glanzmann: vocal, mandola, whistle, uillean pipes, bodhran
Rafael Salzmann: guitar
Kay Brem: bass
Meri Tadic: violin
Ivo Henzi: guitar
Merlin Sutter: drums
Anna Murphy: hurdy-gurdy, vocals
Patrick "Pade" Kistler: bagpipes, whistle
47. Ar Eirinn Ni Neosfainn Ce Hi / Dervish
今回の企画は前の日曜日がアイルランドの祝日「セント・パトリック・ディ」だったことがきっかけの一つです。聖パトリックはアイルランドの守護聖人で、5世紀にアイルランドをキリスト教化したとされる人物。その祝日が3月17日。もともとアイルランドでは祝日として祝われていましたが、19世紀にアイルランドから大量に北米に移民した人びとが、移民先にあって故郷を偲び、出自を同じくする人びと同士の連帯のために始めたお祭が、今や世界中に広まりました。わが国では例によって短縮して「センパト」と呼ばれたりしますが、アイルランドではパトリックの愛称から "Paddy's Day" と呼ばれます。
セント・パトリック・ディの週末には東京・代々木公園で音楽や食べ物などのフェスティヴァルが開かれ、日曜日には原宿で恒例のパレードが行われました。このパレードは今や北海道から沖縄まで開催されています。これを仕掛け、粘り強く育ててきた一方の柱が在日アイルランド大使館。その文化担当のアシュリンさんからのメッセージとリクエスト。アシュリンさんは日本語も達者で、ゲストでお招きすることも検討しましたが、スケジュールの関係からメッセージをいただいて、赤木アナウンサーが読み上げる形になりました。
曲は《At The End Of The Day》(1996) から。タイトルの意味は "For Ireland I Won't Tell Her Name"。スイートなラヴソング。リード・シンガー、キャシィ・ジョーダンがアイルランド語と英語で交互にしっとりと、味わい深く唄います。
ちなみにこれはダーヴィシュのアルバムとして初めて国内盤が出たもの。あたし個人としてはキャシィが参加したセカンド《Harmony Hill》(1993) が鮮烈ですが、豊田耕三さんはじめ、このアルバムを「すり切れるまで」聴きこんだ人も多いでしょう。
ダーヴィシュは1992年にレコード・デビューしたアイルランドのバンドで、西部のスライゴーをベースにしています。リーダーのブライアン・マクドノーは1970年代に Oisin というなかなか優れたバンドをダブリンでやっていました。その彼が、ぐんと若いメンバーを集めて作ったのがダーヴィシュで、アルタンとともに1990年代のアイリッシュ・ミュージックの盛り上がりを支えた一方の柱です。アルタン同様、今でもばりばり現役。
Cathy Jordan: vocals, bodhran, bones
Liam Kelly: flute, tin whistle, vocals
Shane Mitchell: accordion
Shane McAleer: fiddle
Brian McDonagh: mandola, mandolin, guitar, vocals, bassola
Michael Holmes: guitar, bouzouki
48. Deadman’s March / Maire Una Ni Bheaglaoich & Junshi Murakami(村上淳志)
解説の片割れ、トシバウロンはスコットランド、アイルランドに旅してきて、放送日の前夜に帰ってきました。アイルランドではあちらのセント・パトリック・ディもちょうど体験してきています。その様子など、現地の報告の一環として、アイルランドで長年活躍し、ダブリンでアイリッシュ・ハープを教えている村上淳志さんの録音を紹介しました。
アルバムは《CEOL UISCE》(2012) で、村上さんがダブリンのバスキング(路上ライヴ)で知り合ったという、おばあさんのコンサティーナ奏者と作ったものです。タイトルは「水の音楽」の意味。
村上さんは来月に帰国し、東京で恒例の「東京ハープ・フェスティヴァル」を開催します。
Maire Una Ni Bheaglaoich: concertina
村上淳志: harp
49. Mera’s / Rachel Hair & Ron Jappy
もう1枚トシさんが紹介したのがスコットランドのハーパーの出来立てほやほやの最新作。レイチェルは一昨年、シンガーでダンサーの Joy Dunlop とともに来日しています。
アルバムは《Sparks [CD]》。このトラックは3曲のジグのメドレーで、〈Grainne Brady's> The Namesake> Mera's Delight〉。
Rachel Hair: harp
Ron Jappy: guitar
Adam Brown: bodhran
ここで18:50、ニュースと天気予報が40分入りました。我々はほっと一息ついて、夕飯の弁当をいただきます。豊田さん、長尾さんが来て、トシさんと音合わせ。もう一人のゲストの寺町靖子さんも見えました。
50. Reel Around The Sun(「Riverdance」から)
寺町さんをお迎えして、アイリッシュのダンスについてのお話を伺いました。アイリッシュの伝統的ダンスはタップ・ダンスのように、足で素早く床を踏み鳴らします。ハード・シューズと呼ばれるダンス・シューズの底には踵と爪先にグラスファイバーの板が着いていて、ステージではシャープな音を立てます。見る要素とともにパーカッションにもなります。その靴音の入った録音をとのリクエストで、『リバーダンス』から、冒頭のシークエンス。アルバムは《Riverdance: Music From The Show》(1995)。演奏はモイア・ブレナック率いる、初演当時のアイリッシュのトップ・ミュージシャンたち。踊っているのは初代プリンシパル、マイケル・フラトリー率いるダンサーたち。
ハード・シューズの底がグラスファイバーと聞いて、あたしはのけぞったのですが、ずっと金属だと思っていたのでした。タップ・ダンスの靴は金属だそうで、そう言われると、『リバーダンス』の中のアイリッシュ・ダンサーとタップ・ダンサーたちがダンス合戦をするシーンで、音が違っていたようにも思われます。
ここでもあたしは『リバーダンス』の初演を1991年と言ったと思いますが、実際には1995年2月でした。どうも、なるべく昔にしたいと思うんでしょうか。ショウの元になったのは、その前年1994年4月にダブリンのポイント・シアターで開かれたユーロヴィジョン・ソングコンテスト幕間のパフォーマンスです。
Maire Breatnach: fiddle
Davy Spillane: whistle, uillean pipes
Mairtin O'Connor: accordion
Kenneth Edge: soprano saxophone
Nikola Parvo: gadulka, kaval
Eoghan O'Niell: bass
Tommy Hayes: bodhran, spoons
Desi Reynolds: tom-toms
Noel Eccles: percussion
Des Moore: acoustic guitar
The Riverdance Orchestra conducted by Proinsias O Duinn
51. If I Should Fall From Grace With God / The Pogues
寺町さんのリクエストで、寺町さんがアイリッシュにハマるきっかけとなったポーグスの曲。1988年の同名のアルバムから。
あたしなどが特に付け加えることもなし。
Jem Finer: banjo, mandola, saxophone
James Fearnley: accordion, piano, mandolin, dulcimer, guitar, percussion, cello
Shane McGowan: vocals, guitar
Andrew Ranken: drums, percussion, vocals, harmonica
Terry Woods: cittern, concertina, mandola, tenor banjo, dulcimer, guitar, vocals
Spider Stacy: tin whistle, vocals
Pilip Chevron: guitars, mandolin, vocals
Darryl Hunt: bass, percussion, vocals
52. UP / O’Jizo
次のゲストはフルートの豊田耕三さんで、主に ICF、Intercollegeate Celtic Festival についてお話を伺いました。豊田さんが10年前に立ち上げ、以来、学生たちが代々自主的に受け継いできているイベントです。ここ2、3年、大学のケルト音楽サークルの急増もあり、大いに盛り上がっているそうで、その原動力の一つはセット・ダンスと呼ばれるアイリッシュの社交ダンスを取り入れたこととのこと。寺町さんも言われていましたが、このダンスの愛好者が急増しているそうで、それも男女を問わず、若い人たちだそうです。
https://icf-shamrock.com
曲は豊田さんのバンド O'Jizo へのリクエストで、《Highlight》(2011) 収録。
豊田耕三: flutes, whistles
内藤希花: fiddle
長尾晃司: guitar, mandolin
中村大史: accordion, bouzouki
53. Kaprekar #6174 / Harmonica Creams
これもリクエストで、O'Jizo とならぶわが国のトップ・バンドの一つ、ハモニカクリームズの曲。《Futura Ancient Alchemy》(2016) 収録。
このバンドはブルース・ハープの清野さんと、ケルト系音楽の大渕さん、長尾さん、それに初期にはトシさんも加わって、二つの音楽をぶつけあう試みから始まっています。今では、この二つは融合して独自の音楽を展開しています。
清野美土: harmonica
長尾晃司: guitar, bouzouki
大渕愛子: fiddle
田中ゆうじ: drums, percussion
54. Last Train (LIVE) / 豊田耕三、長尾晃司、トシバウロン
ここから豊田さんのフルート、長尾さんのギター、トシさんのバゥロンのトリオによる生演奏3曲。
まずは O'Jizo の前作《Via Portland》(2017)から、〈The Last Train from Loughrea> Lucy Farr's〉のメドレー。
55. O’Raghailligh’s Grave> Jackson’s Favorite (LIVE) / 豊田耕三、長尾晃司、トシバウロン
次は O'Jizo の最新作《Cranking Out》(2019) 収録の〈O'Raghailligh's Grave〉と〈Jackson's Favorite〉のメドレー。このライヴ放送のための特別版。レコードでは後者は別の曲につながっています。
56. Canon (LIVE) / 豊田耕三、長尾晃司、トシバウロン
ライヴの最後は《Highlight》(2011) の曲で、〈The Eagle'S Whistle> The Sweet Flowers Of Milltown> The Flowers Of Red Hill> Pachelbel'S Frolics〉の4曲のメドレー。ラストの曲は上記マーティン・ヘイズ&デニス・カヒルの11曲メドレーのラストと同じものです。
ライヴではいつも激しい身ぶりで眼鏡を飛ばすのがトレードマークのトシさんですが、スタジオでは抑えたのか、眼鏡は飛ばず。そのことを笑いあっているのが、そのままオンエアされたそうです。
57. Spanish Point / Donal Lunny
ここからはラストまでリクエストが続きます。
まずはドーナル・ラニィの曲で、アルバムは《Coolfin》(1998) 収録。アルバム・タイトルはバンド名でもあります。このバンドはドーナルが1996年8月の初来日のために組んだバンドを元に結成したものです。ドラムス、ベース、パーカッション、キーボードも含む大所帯バンドで、来日にはこれにシャロン・シャノンとクラナドのモイア・ブレナンが加わっていました。
Donal Lunny: bouzouki, keyboards
Nollaig Casey: fiddle
Ray Fean: drums
Roy Dodds: percussions
Fionn O'Lochlainn: bass
Graham Henderson: keyboards
(今、CDが手許に無いので詳しいクレジットは後日)
58. Song For Ireland / Mary Black
メアリ・ブラックのうたうこの歌はメアリがゲスト参加したデ・ダナンの《Song For Ireland》(1983) に初出。後、メアリのソロ以前の録音を集めた《Collected》(1988) に収録されました。
歌はアイルランド人ではなく、イングランド人の Phil & June Colclough の作。この夫妻はこの歌をはじめ、名曲を数多く作り、様々な人たちに唄われています。ノーザン・アイルランド紛争が終結する希望を歌ったものです。1998年4月のいわゆる「聖金曜日合意」によって、戦争状態には終止符が打たれました。そこにはこうした歌も働いていたはずです。たくさんの人たちが唄っていますが、作者自身の録音は Phil & June Colclough《Players From A Drama》(1991) で聴けます。
Mary Black: vocals
Frankie Gavin: flute, piano
Alec Finn: bouzouki, guitar
Jackie Daly: accordion
59. Apples in Winter> The Peacock’s Feather> Hennigan’s / Beginish
〈Apples in Winter〉の楽曲のみのリクエストなので、これを選びました。バンドのデビュー・アルバム《Beginish》(1999) から。
当時中堅どころとして、どちらかというと目立たないところでアイリッシュ・ミュージックの屋台骨を支えていたミュージシャンたちがたまたま集まったバンドでしたが、このデビュー作の出来の良さには「魔法」が作用していたにちがいありません。この年のアイリッシュ・ミュージックの録音として、文句なくナンバー・ワンでした。
Noel O'Grady: bouzouki
Paul O'Shaughnessy: fiddle
Paul McGrattan: flute
Brendan Begley: accordion
Colm Murphy: bodhran
60. 街(映画「ゲド戦記」から)
《サウンドトラック》(2006) より。
スペインのケルト圏、北西部ガリシアのパイパー、カルロス・ヌニェスの演奏。
ジブリの音楽のセンスの良さは定評のあるところで、その中でも、音楽の質の高さ、演奏者との共鳴の深さでは、群を抜いているのが『ゲド戦記』とカルロスの組合せ。このサントラはほとんどかれのソロ・アルバムの趣すらあります。さらにスピンオフとして《Melodies From Gedo Senki》も生まれました。この曲はそちらでは〈街のジグ〉として展開されています。
Carlos Nunez: gaita
(今、CDが手許に無いので詳しいクレジットは後日)
61. Arrietty’s Song(映画「借りぐらしのアリエッティ」から)
ジブリ関連をもう1曲。
演奏はブルターニュのシンガー、ハーパー Cecile Corbel。2006年にレコード・デビューしています。ここでは日本語で唄っています。作曲の Simon Caby はデビュー以来の音楽パートナー。
コルベルはハーパーとしてもシンガーとしても、またソングライターとしても優れた人。英語やフランス語でも唄っていますし、他のケルト圏のうたも積極的にとりあげます。
Cecile Corbel: harp, vocals, chorus
Simon Caby: guitars, bass, piano, percussions, chorus
Eric Zorgniotti: cello
Gilles Donge: violin
Cyrille Bonneau: flutes, bagpipes, bombard, duduk
Jean-Bernard Mondoloni: bodhran, percussion
Pascal Boucaud: additional bass
Regis Huiban: accordion
Lucas Benech: violin
Laurent Muller: alto violin
62. Diamond Mountain / Sharon Shannon
《The Diamond Mountain Sessions》(2000) より、タイトル曲。曲はイングランドのギタリスト Ian Kerr のオリジナル。
シャロンは様々なジャンルの音楽と積極的に交わる面と、伝統の底深くから掘り起こす面を二つながらに備えています。これはその両方が備わったアルバム。それにしても、この細かい音の動きをボタン・アコーディオンで出すのはほとんど神技に近い。
このアルバムからはアメリカのシンガー・ソング・ライター、スティーヴ・アールと共演した〈The Galway Girl〉の大ヒットが生まれています。
Sharon Shannon: accordion
Mary Shannon: mandolin
Jim Murray: Guitar
Lloyd Byrne: Drums, Percussion
Richie Buckley: Saxophone
Donal Lunny: Bouzouki
Jesse Smith: Viola
James Delaney: Organ
(今、CDが手許に無いので詳しいクレジットは後日)
63. The Sally Gardens> Miss McLeod's Reel> The Foxhunter's> The Bucks Of Oranmore / Arcady
ミュージシャン指定のない、楽曲だけのリクエスト。あるいは歌の方の〈Down by the Sally Garden〉かもしれませんでしたが、この演奏があまりに良いので、こちらにさせていただきました。
アーケイディはアイルランドのバンドでこれもベテランと若手が組んで、見事な音楽を生み出した例です。プランクシティ、ボシィ・バンドに続いて現れたのがデ・ダナンですが、そのデ・ダナンのメンバーだったアコーディオンのジャッキィ・デイリー、バゥロンのジョニィ・リンゴ・マクドノーが中心となって結成。これはセカンド《Many Happy Returns》(1995) から。ここではアコーディオンが若手のコナー・キーンに交替しています。
Conor Keane: accordion
Johnny McDonagh: bones, bodhran, triangle
Brendan Larrissey: fiddle
Nicolas Quemener: guitar, flute, whistle, vocals
Patsy Broderick: piano, keyboards
Michael McGoldrick: flute
Neil Martin: cello
64. Auld Lang Syne / Johnny Cunningham & Susan McKeown with Aidan Brennan
事前の打合せで、先頭と末尾の曲が真先に決まりました。先頭はトシさん発案のボシィ・バンド、そして最後はやはりこの曲しかないでしょう、ということになり、であれば、その最高の演奏であるこのヴァージョンを、と選びました。
「蛍の光」の原曲であるこの歌には、おなじみのものよりも古い、もう一つのメロディがあります。おなじみのものよりももう少しごつごつした感じの、原初的なメロディです。あたしもトシさんも、この古いヴァージョンの方が今では好きなくらいで、ぜひ、それを聞いていただきたいと思いました。
ここではスーザン・マキュオンがまず古いメロディでうたいだし、やがておなじみのメロディに移行します。
スーザンはダブリン生まれのシンガーで、ニューヨークに渡ってシンガーとして頭角を現しました。ユダヤ音楽も唄い、クレズマティックスというクレズマー・バンドとの共作でグラミーも受賞しています。
ジョニィ・カニンガム(1957-2003)は始めの方に出てきたフィル・カニンガムのお兄さんのフィドラー。フィルたちがスコットランドに帰ってからも、アメリカに残って活躍しました。作曲家、プロデューサーとしても優れた人です。
アルバムは《A Winter Talisman》(2001)。
Susan McKeown: vocals
John Cunningham: fiddle, vocals
Aidan Brennan: guitar
(今、CDが手許に無いので詳しいクレジットは後日)
ということで、これだけの長時間、聞かれる方もたいへんだと思いました。我々も疲労困憊、していたはずですが、やはり興奮もしていたらしく、このままでは帰れないよなあ、とダブリナーズで乾杯したことでありました。無事、8時間半の生放送を切り抜けた後のギネスは、ことの外、美味でありました。(ゆ)
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