いやしかし、ここまで対照的になるとは思わなんだ。やはりお互いにどこかで、意識しないまでも、対バン相手に対する距離感を測っていたのかもしれない。これがもし na ba na と小松&山本の対バンだったならば、かえってここまで対照的にはならなかったかもしれない。
対照的なのが悪いのではない。その逆で、まことに面白かったのだが、各々の性格が本来のものから増幅されたところがある。違いが先鋭化したのだ。これも対バンの面白さと言えようか。
須貝&梅田のデュオは、この形でやるのは珍しい。メンバーは同じでも、トリオとデュオではやはり変わってくる。トリオでの枠組みは残っていて、一応の役割分担はあるが、自由度が上がる。それにしても、こうして二人として聴くと、須貝さんのフルートの音の変わっているのに気がつく。もともと芯の太い、朗らかな音だったのが、さらにすわりが良くなった。〈Mother's Lullaby〉では、これまでよりも遅いテンポなのだが、タメが良い。息切れせず、充分の余裕をもってタメている。一方でリールではトリオの時よりもシャープに聞える。中藤さんと二人揃うと、あの駘蕩とした気分が生まれるのだろうか。あるいは梅田さんのシャープさがより前面に出てくるのか。
小松&山本は初っ端から全開である。音の塊が旋回しながら飛んできて、こちらを巻きこんで、どこかへ攫ってゆくようだ。
今回は良くも悪しくも山本さん。メロディをフィドルとユニゾンするかと思えば、コード・ストロークとデニス・カヒル流のぽつんぽつんと音を置いてゆくのを同時にやる。一体、どうやっているのか。さらには、杭を打ちこむようにがつんと弾きながら、後ろも閉じるストローク。ビートに遅れているように聞えるのだが実は合っている、不思議な演奏。
その後の、ギター・ソロによるワルツがしっとりとした曲の割に、どこか力瘤が入ってもいるようだったのだが、終ってから、実は「京アニ」事件で1人知人が亡くなっていて、今のは犠牲者に捧げました、と言われる。うーむ、いったい、どう反応すればいいのだ。
これは小松さんにもサプライズだったようだが、そこはうまく拾って、ヴィオラのジグ。これも良いが、フィドルでも低音を多用して、悠揚迫らないテンポで弾いてゆく。こういう器の大きなフィドルは、そう滅多にいるものではない。
最後にせっかくなので、と4人でやったのがまた良かった。のんびりしているのに、底に緊張感が流れている。2曲めでは、初めフィドルとギターでやり、次にフルートとハープに交替し、そこにフィドルとギターが加わる。フィドルはフルートの上に浮かんだり、下に潜ったり、よく遊ぶ。そこから後半は一気にスピードに乗ったリール。この組合せ、いいじゃないですか。
やはり対バンは楽しい。たくさん見てゆけば、失敗に遭遇することもあるだろうが、今のところはどの対バンも成功している。失敗するにしても、おそらくは収獲がたくさんある失敗になるのではないか。(ゆ)
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申し訳ないですが、ぼくもダブリンは一度、それも短期間しか行っておらず、店とかはほとんどわかりません。レコード店は Temple Bar に Claddagh があるはずです。
http://claddaghrecords.com/index.php/about-us/
セッションのあるパブなどはすみませんがわかりません。ネットで探せば、情報はいろいろ出てくると思います。ぼくなどより遙かに詳しい方がたくさんおられます。
音楽からは離れますが、もしご興味があれば、来週末、世界SF大会が今年はダブリンであります。
https://dublin2019.com/
道中ご無事で。楽しんできてください。