梅田週間第二弾。前回と楽器が同じフルートの須貝さんとのデュオ。
楽器は同じだが、音も雰囲気もまるで違うのが面白い。あるいは使う楽器の違いもあるのかもしれない。矢島さんの楽器については知らないが、須貝さんのものはオーストリアのマイケル・グリンター製で、たしか豊田さんも同じメーカーの楽器を使っていたと記憶する。グリンター氏はアイリッシュ・フルートのメーカーとしては世界でも1、2を争う人気だったが、昨年末、交通事故で亡くなられたのだそうだ。この日はそのグリンター氏に捧げるということで、須貝さんが珍しくも無伴奏ソロでスロー・エア〈Easter Snow〉を吹いた。これがまずハイライト。
独断と偏見で言わせてもらえば、パイプに最も合う曲種はジグだ。ホィッスルにはホーンパイプ。フィドルはリールで、アコーディオンにはポルカ。そしてフルートにはスロー・エアである。フルートは息継ぎをしなければならない。ホィッスルも同じだが、音を出すのに必要な息の量が格段に違うので、ホィッスルでは息継ぎは少なくてすむ。フルートは結構頻繁に必要だ。一つひとつの音を延ばすスロー・エアでは、息継ぎのタイミングをはかるのが簡単ではない。一方で、うまく合うと、それがアクセントになって、メロディが引き立つ。他の楽器ではまず不可能な形で「入魂の」演奏になる。自分が演奏している楽器を作った人への鎮魂歌はその実例だった。
後半のオープニングはスウェーデンの曲を2曲。まずはポルスカをロウ・ホイッスル、次に〈夏のワルツ〉をコンサティーナで演る。これまたスウェーデンの伝統ではありえない組合せで、新鮮だ。とりわけワルツではコンサティーナがよくうたう。
今週は梅田週間なので、普段よりも梅田さんの音に集中して聴いてみる。曲によってパターンを変え、さらにリピート毎に変え、同じことを繰り返すことがない。基本的には左手がベースで右手がハーモニーだが、コードをストロークするかわりに複数の弦を同時に弾く。ハーモニーのつけ方にも、カウンターを奏でるのとメロディにより添うのがまず目立つ。右手も左手と一緒にコードを弾くこともあり、左手も時には右手のもう一つ下でメロディに添うこともある。Shannon Heaton の〈Bluedress Waltz〉では、アルペジオの音に強弱を付け、曲の表情に陰翳を生む。これもハープのほぼ独壇場だ。
会場は京王線・仙川駅から歩いて10分ほど、桐朋学園の裏にあたる人家を改造したスペース。普段は陶芸のギャラリーで、時にカフェにもなるそうだ。二人は入口を入ったところのタタキで演奏し、聴衆は一段上がった木の床に並べられたテーブルと椅子に座る。最大15名とのことで、実際には11名。心地良いハウス・コンサートの趣。生音も気持ち良く響いて、ハープの音がいつになく明瞭に聞える。輪郭がくっきりしている。同時に例えば低音弦のサステインが沈んでゆくのが実感できる。聴く方の位置が高いことも作用しているのかもしれない。
須貝さんの〈Mother's Lalluby〉には、あらためて良い曲だと認識させられる。須貝さんは一見どっしり構えた肝っ玉母さんのイメージがますます染み込んでいるが、一方で奥にはかなり繊細な魂があることも垣間見える。坦々とサポートする梅田さんが母親に見えてくる。
休憩時間に、クリーム・チーズ・ケーキと紅茶がふるまわれる。まずこのチーズ・ケーキが絶品でありました。これだけのチーズ・ケーキは食べたことがない、と思われるほどの旨さ。紅茶も美味で、こういう紅茶にはなかなかお目にかかれない。
展示されている陶器で、鈴木卓氏のマグはカップが下のほうへふっくらと膨らんで、まことに良い具合で、わずかにクリームの入った白の無地もよかったのだが、把手のサイズがあたしの手には小さすぎた。どうも国内産のコーヒー・マグはみなさん、下の方を細くするものばかりで、どっしりと安定した形はこれまで見たことがなかった。今メインに使っている銀座・月光荘謹製のマグはまずまず気に入っているが、もうちょっと大振りのものがあればなあ。
仙川には美味しいパン屋さんがあるそうだが、ライヴ終演後では売り切れとのことで、やむなく次善の策をとる。(ゆ)
須貝知世: flute, whistle, low whistle, concertina
梅田千晶: harp

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