ともに活動しはじめて10周年ということで実現した初めての共演は、それはそれは楽しいもので、次は20周年というのに、反射的に行くぞ、と思ってしまったほどだ。それまで生きているかどうかもわからないのはすっぽりと忘れていた。しかし、10年後にこの連中がどうなっていて、どんな音楽を聴かせてくれるか、ぜひ生身で体験したいものではある。

 先日の tricolor となつやすみバンドとの共演と同じく、どちらかが前半、片方が後半という対バン形式ではなく、まず全員が出てきて、一緒に各々のレパートリィを1曲ずつやる。どちらもライヴでも何度も聴いているが、ダブル・フィドルがまず気持ちがいい。後で酒井さんにそう言うと、あたしもそうなんです、フィドルが重なると、これだよ、これと思います、と拳を握りしめた。彼女は北欧の音楽を演ることも多く、フィドルが重なることの醍醐味はよく知っている。ハルディング・フェーレを弾いていて、フィドルに移ると、音が重ならないのが寂しいのだそうだ。アイリッシュでも同じで、アルタンが一度トリプル・フィドルになった時期の録音は格別だ。

 さらにここにはピアノがあるので、アニーがピアノに座ったのがまたいい。グルーベッジに林正樹氏が加わったのと同様の効果で、ビートがよく弾む。

 2曲やったところで、各々単独での演奏になるが、どちらが先にやるかは、アニーが音頭をとって、その場で中藤さんと酒井さんがあっち向いてホイの勝負で決める。2回めであっさり酒井さんが勝って、きゃめる先攻。

 このバンドは見る度に巧くなっているように見えるのは錯覚だろうか。毎回誰かが着実に巧くなっていると見える。今回は高梨さんのホィッスルと成田さんのコンサティーナ。どちらもどっしりと安定感が増している。高梨さんは憧れというブライアン・フィネガンに肩を並べるまでは行かないまでも、楽器の自在な操り方はだいぶ近づいてきた。元々レベルが高いミュージシャンが巧くなったように見えるのは、かなり精進していると思うのだが、悲壮感はかけらも無い。まずは〈Northen Lights〉と〈Smokey Leaf〉で、どちらもスローで始まり、途中でアップテンポに切り替わるが、その出し入れも堂に入ってきた。ハイライトはこのセクション最後の〈Carry On〉で、ブズーキのピッキングとフィドルのソロが聞き物。

 替わった tricolor はやはり10年、演奏しつづけているという〈Lucy〉で始める。うーん、貫禄があるなあ。きゃめるの音楽がカラフルに華やいでいるのに並ぶと、tricolor の音楽は奔放な筆づかいで描く水墨画の趣が出てくる。筆を運ぶ向きと速度を制御しているのは長尾さんのギターのようだ。刻み方とタイミングを細かく操るところは、グレイトフル・デッドのボブ・ウィアも連想する。

 4曲めに中藤さんが打合せなしに高梨さんを呼びこんで、《Bigband》で高梨さんが参加した曲をやる。アニーはアコーディオン。これがハイライト。

 そしてまた全員で4曲。こうなると音の厚みが快感。アニーはブズーキにファズをかけて弾きまくる。ほとんどヘビメタだ。そして最後は期待どおり〈Anniversary〉。この曲はやはり大勢でやるのが愉しい。Bigband のライヴの高揚感を思い出す。いやあ、体が浮きましたね。

 アンコールも各々のレパートリィから1曲ずつ。〈春風の祝福〉とポルカのセット。20周年と言わず、毎年一度はやってほしい。tricolor は毎年年始は Cocopelina とのあけましておめでとうライヴをやっているそうだから、これから毎年年末はきゃめるとの忘年ライヴをやるのはいかがですか。次はもっとメンバーの入替えて、様々な組合せで聴いてみたい。

 土曜の昼間で、小さいお子さんもいて、昼間から呑む泡盛も旨い。それにしても、今年のライヴは豊作だ。(ゆ)

キネン
トリコロール
Pヴァイン・レコード
2019-05-15


PARTY!
きゃめる
ロイシンダフプロダクション
2019-08-11