これは英語圏のサイエンス・フィクション、ファンタジーの主な書き手をデビュー作発表年の順番にならべてみたリストである。
もともとはキャサリン・マクリーンが1949年にデビューしていて、シルヴァーバーグよりも早いことに気がつき、その前後にデビューしていたのはどんな人たちだったかと調べはじめて拡大していったものだ。ネビュラのグランド・マスターをベースに、メジャーと目される人たちと自分の好み、関心のある書き手を拾いあげた。データは ISFDB で最も早い小説作品の発表年である。(長篇)としたのはデビュー作が長篇だった人。
むろん、あの人がいない、この人もいないと指摘したくなるだろうが、それはご自分で調べてみればいい。新しい方は今年のグランド・マスター、ビジョルド(女性で7人目)を区切りとしている。
2023-05-07追記
生没年とデビュー時の満年齢を加えてみた。単純計算なので、デビュー時の正確な年齡ではない。不悪。こうしてみると、またいろいろと見えてくる。
1926, エドモンド・ハミルトン 1904/1977; 22歳
1928, コードウェイナー・スミス 1913/1966; 15歳
1928, ジャック・ウィリアムスン 1908/2006; 20歳
1928, ミリアム・アレン・ディフォード 1888/1975; 40歳
1930, C. L. ムーア 1911/1987; 19歳
1930, オラフ・ステイプルドン 1886/1950; 44歳
1930, チャールズ・ウィリアムズ(長篇)1886/1945; 44歳
1931, クリフォード・D・シマック 1904/1988; 27歳
1931, ジョン・ウィンダム 1903/1969; 28歳
1931, ヘンリイ・カットナー 1915/1958; 16歳
1933, C・S・リュイス 1898/1963; 35歳
1934, スタンリィ・G・ワインボウム 1902/1935; 32歳
1934, フリッツ・ライバー 1910/1992; 24歳
1935, ジェイムズ・ブリッシュ 1921/1975; 14歳
1936, フレドリック・ブラウン 1906/1972; 30歳
1937, アーサー・C・クラーク 1917/2008; 20歳
1937, エリック・フランク・ラッセル 1905/1978; 32歳
1937, L・スプレイグ・ディ・キャンプ 1907/2000; 30歳
1937, J・R・R・トールキン(長篇) 1892/1973; 45歳
1938, シオドア・スタージョン 1918/1985; 20歳
1938, リチャード・ウィルスン 1920/1987; 18歳
1938, レイ・ブラッドベリ 1920/2012; 18歳
1938, レスター・デル・リイ 1915/1993; 23歳
1939, アイザック・アシモフ 1920/1992; 19歳
1939, アルフレッド・ベスター 1913/1987; 26歳
1939, アンドレ・ノートン 1912/2005; 27歳
1939, ウィリアム・テン 1920/2010; 19歳
1939, A・E・ヴァン・ヴォクト 1912/2000; 17歳
1939, C・M・コーンブルース 1923/1958; 16歳
1939, マーヴィン・ピーク 1911/1968; 28歳
1939, ロバート・A・ハインライン 1907/1988; 32歳
1940, デーモン・ナイト 1922/2002; 18歳
1940, フレドリック・ポール 1919/2013; 21歳
1940, リィ・ブラケット 1915/1978; 25歳
1942, ゴードン・R・ディクスン 1923/2001; 19歳
1942, ハル・クレメント 1922/2003; 20歳
1942, フィリップ・K・ディック 1928/1982; 14歳
1944, A・バートラム・チャンドラー 1912/1984; 22歳
1945, ジャック・ヴァンス 1916/2013; 29歳
1946, フィリップ・ホセ・ファーマー 1918/2009; 28歳
1946, マーガレット・セント・クレア 1911/1995; 35歳
1947, ポール・アンダースン 1926/2001; 21歳
1947, マリオン・ジマー・ブラドリー 1930/1999; 17歳
1948, ジュディス・メリル 1923/1997; 26歳
1948, チャールズ・L・ハーネス 1915/2005; 33歳
1949, キャサリン・マクリーン 1925/2019; 24歳
1949, ジェイムズ・E・ガン 1923/2020; 26歳
1949, ハーラン・エリスン 1934/2018; 15歳
1950, E・C・タブ 1919/2010; 31歳
1950, チャド・オリヴァー 1928/1993; 22歳
1950, リチャード・マシスン 1926/2013; 24歳
1951, J・G・バラード 1930/2009; 21歳
1951, ジーン・ウルフ 1931/2019; 20歳
1951, ゼナ・ヘンダースン 1917/1983; 34歳
1951, チャールズ・ボーモント 1929/1967; 22歳
1951, ボブ・ショウ 1931/1996; 20歳
1952, アルジス・バドリス 1931/2008; 21歳
1952, ジョン・ブラナー 1934/1995; 18歳
1952, Donald Kingsbury 1929/; 23歳 [Locus Best 1st Novel]
1952, フランク・ハーバート 1920/1986; 32歳
1952, ミルドレッド・クリンガーマン 1918/1997; 34歳
1952, ロバート・シェクリイ 1928/2005; 24歳
1952, ロバート・シルヴァーバーグ 1935/; 17歳
1953, アン・マキャフリィ 1926/2011; 27歳
1953, ロジャー・ゼラズニイ 1937/1995; 16歳
1954, エイヴラム・デヴィッドスン 1923/1993; 21歳
1954, キャロル・エムシュウィラー 1921/2019; 23歳
1954, バリントン・J・ベイリー 1937/2008; 17歳
1954, ブライアン・W・オールディス 1925/2017; 29歳
1955, ジョアンナ・ラス 1937/2011; 18歳
1956, ケイト・ウィルヘルム 1928/2018; 28歳
1956, マイケル・ムアコック 1939/; 17歳
1957, ピーター・S・ビーグル 1939/; 18歳
1958, キット・リード 1932/2017; 26歳
1959, R・A・ラファティ 1914/2002; 45歳
1960, スティーヴン・キング 1947/; 13歳
1960, ベン・ボヴァ 1932/2020; 28歳
1961, アーシュラ・K・ル・グィン 1929/2018; 32歳
1961, Sterling E. Lanier 1927/2007; 34歳
1961, フレッド・セイバーヘーゲン 1930/2007; 31歳
1962, サミュエル・R・ディレーニィ 1942/; 20歳(長篇)
1962, トーマス・M・ディッシュ 1940/2008; 22歳
1963, クリストファー・プリースト 1943/; 20歳
1963, ジョン・スラデック 1937/2000; 26歳
1963, Damian Broderick 1944/; 19歳
1963, テリィ・プラチェット 1948/2015; 15歳
1963, ノーマン・スピンラッド 1940/; 23歳
1964, キース・ロバーツ 1935/2000; 29歳
1964, ラリィ・ニーヴン 1938/; 26歳
1965, グレゴリー・ベンフォード 1941/; 24歳
1965, ジョセフィン・サクストン 1935/; 30歳
1965, ブライアン・ステイブルフォード 1948/; 17歳
1965, マイク・レズニック 1942/2020; 23歳
1966, M・ジョン・ハリスン 1945/; 21歳
1967, グレッグ・ベア 1951/2022; 16歳
1967, リチャード・カウパー 1926/2002; 39歳(長篇)
1967, ジョージ・R・R・マーティン 1948/; 19歳
1968, ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 1915/1987; 53歳
1968, ジェイン・ヨーレン 1939/; 29歳
1968, タニス・リー 1947/2015; 21歳
1969, イアン・ワトスン 1943/; 26歳
1969, ジョー・ホールドマン 1943/; 26歳
1969, スゼット・ヘイデン・エルジン 1936/2015; 30歳
1969, マイケル・G・コーニィ 1932/2005; 37歳
1970, ヴォンダ・N・マッキンタイア 1948/2019; 22歳
1970, エドワード・ブライアント 1945/2017; 25歳
1970, コニー・ウィリス 1945/; 25歳
1970, パメラ・サージェント 1948/; 22歳
1970, マイケル・ビショップ 1936/; 34歳
1971, オクテイヴィア・E・バトラー 1947/2006; 24歳
1971, Glen Cook 1944/; 27歳
1971, Rachel Pollack 1945/2023; 26歳
1972, ハワード・ウォルドロップ 1946/; 26歳
1973, Eleanor Arnason 1942/; 31歳
1973, パトリシア・A・マッキリップ 1948/2022; 25歳
1974, ジョン・ヴァーリィ 1947/; 27歳
1975, ジェイムズ・パトリック・ケリー 1951/; 24歳
1975, パット・マーフィー 1955/; 20歳
1976, カーター・ショルツ 1953/; 23歳
1976, キム・スタンリー・ロビンスン 1952/; 24歳 [Locus Best 1st Novel]
1976, C・J・チェリィ 1942/; 34歳(長篇)
1976, ジェフ・ライマン 1951/; 25歳
1976, ティム・パワーズ 1952/; 24歳(長篇)
1976, ナンシー・クレス 1948/; 28歳
1976, ブルース・スターリング 1954/; 22歳
1977, ウィリアム・ギブソン 1948/; 29歳
1977, オースン・スコット・カード 1951/; 26歳
1977, サムトウ・スチャリトクル 1952/; 25歳 [Locus Best 1st Novel]
1977, ジェイムズ・P・ブレイロック 1950/; 27歳
1977, ジェイムズ・P・ホーガン 1941/2010; 36歳(長篇)
1977, スティーヴン・R・ドナルドソン 1947/; 30歳(長篇)
1977, チャールズ・ド・リント 1951/; 26歳
1977, テリー・ブルックス 1944/; 33歳(長篇)
1977, パット・キャディガン 1953/; 24歳
1977, ポール・ディ・フィリポ 1954/; 23歳
1977, ルイス・シャイナー 1950/; 27歳
1978, ジョージ・ターナー 1916/1997; 62歳 ※小説家としてのデビューは1959年43歳。
1978, ジョン・ケッセル 1950/; 28歳
1978, フィリップ・プルマン 1946/; 32歳
1979, Suzy McKee Charnas 1939/2023; 40歳
1979, ダグラス・アダムズ 1952/2001; 27歳(長篇)
1979, ロバート・L・フォワード 1932/2002; 45歳 [Locus Best 1st Novel]
1979, ロビン・ホブ/ミーガン・リンドルム 1952/; 27歳
1980, デイヴィッド・ブリン 1950/; 30歳(長篇)
1980, マイケル・スワンウィック 1950/; 30歳
1981, ジャック・マクデヴィッド 1935/; 46歳 [Locus Best 1st Novel]
1982, イアン・マクドナルド 1946/2022; 36歳 [Locus Best 1st Novel]
1982, ダン・シモンズ 1948/; 34歳
1982, Terry Dowling 1947/; 35歳
1982, トレイシー・ヒックマン 1955/; 27歳
1982, ロバート・ジョーダン 1948/2007; 34歳(長篇)
1983, グレッグ・イーガン 1961/; 22歳
1983, スティーヴン・ブルースト 1955/; 28歳(長篇)
1983, ルーシャス・シェパード 1943/2014; 40歳
1984, ウォルター・ジョン・ウィリアムス 1953/; 31歳(長篇)
1984, Emma Bull 1954/; 30歳 [Locus Best 1st Novel]
1984, ジョフリー・A・ランディス 1955/; 29歳 [Locus Best 1st Novel]
1984, デヴィッド・ゲメル 1948/2006; 36歳(長篇)
1984, マイケル・F・フリン 1958/; 26歳 [Locus Best 1st Novel]
1984, ニール・ゲイマン 1960/; 24歳
1984, ポール・J・マコーリィ 1955/; 29歳
1984, マーガレット・ワイス 1948/; 36歳
1985, カレン・ジョイ・ファウラー 1950/; 35歳
1985, タッド・ウィリアムス 1957/; 27歳(長篇)
1985, チャールズ・ストロス 1964/; 21歳
1985, デリア・シャーマン 1951/; 34歳
1985, ロイス・マクマスター・ビジョルド 1949/; 36歳
生年ではなく、デビューの年でみるといろいろと面白い。1937〜40年組(キャンベル革命)とか、51/52年組とか、76/77年組とか、あるいは68年、70年の女性トリオとか、やはり塊で出てくるものだ。こういうつながり、塊をたどって読んでみるのも面白いだろう。
一方、ブリッシュは「御三家」よりも早いとか、ル・グィンとセイバーヘーゲンが同期とか、「御三家」と同世代と思っていたアンダースンがひと回り下だとか、60年代の人と思っていたゼラズニィが50年代も初めの頃から書いていたとか、サイバーパンクでギブスンやスターリングとひとくくりにされたベアはひと回り上だとか、70年代になって名前が出てきたジーン・ウルフが1951年にデビューしているとか、他にも読み方を変える発見もあるかもしれない。マリオン・ジマー・ブラドリーが1947年、17歳でデビューしていたのは、あたしにはその1つ。もっともこれは自分でやっていたファンジンで、明確なプロ・デビューは1954年4月のF&SF。
一方、ブリッシュは「御三家」よりも早いとか、ル・グィンとセイバーヘーゲンが同期とか、「御三家」と同世代と思っていたアンダースンがひと回り下だとか、60年代の人と思っていたゼラズニィが50年代も初めの頃から書いていたとか、サイバーパンクでギブスンやスターリングとひとくくりにされたベアはひと回り上だとか、70年代になって名前が出てきたジーン・ウルフが1951年にデビューしているとか、他にも読み方を変える発見もあるかもしれない。マリオン・ジマー・ブラドリーが1947年、17歳でデビューしていたのは、あたしにはその1つ。もっともこれは自分でやっていたファンジンで、明確なプロ・デビューは1954年4月のF&SF。
「御三家」はほぼ同期だが、ディック、ラファティ、ティプトリーの「新御三家」はバラバラ。
マクリーンに関して言えば、エリスンと同期、メリルは1年先輩になる。その前から書いている女性作家というと、リィ・ブラケット、C・L・ムーア、アンドレ・ノートン、マーガレット・セント・クレア、そしてミリアム・アレン・ディフォードがいたわけだ。
この中であたしがリアルタイムで体験した初めはジョン・ヴァーリィである。ちょうど Asimov's 誌創刊の頃でもあって、70年代半ばはこうして見ても実にエキサイティングな時期だった。ヴァーリィの登場はいわばその幕を切って落とすファンファーレでもあり、また最も華やかな才能が眼の前で花開いてゆくのをまざまざと見せつけられるものだった。F&SF誌に載った「火星の王の宮殿にて」に描かれた、眠っていた火星の生物たちが時を得て次々と姿を現してくるめくるめく情景は、サイエンス・フィクションを読んでいて最も興奮した瞬間の1つでもあった。この時期には『スター・ウォーズ』革命も重なるわけだが、その前から、質の面でも、サイエンス・フィクションは60年代の試行錯誤による成果を踏み台に、大きな飛躍が始まっていたのだ。
SFFの質の向上の現れは、たとえばヴァーリィを紹介したF&SF誌の充実ぶりに見てとれる。1970年代のF&SFは黄金時代と言っていい。1966年から1991年まで編集長を務めた Edward L. Ferman は1981年のヒューゴーでは Best Professional Editor とともに、「ジャンルにおける作品の質の拡大と改善への貢献」に対して特別賞を授与されている。
ヴァーリィはどれもこれも面白く、成功しているとは言えない長篇も楽しんでいたところへ、脳天一発かち割られたのが「残像」The Persistence of Vision だった(これまたF&SF誌発表)。これはおそらく英語で書かれた長短合わせて全てのサイエンス・フィクションの中でも最高の1作、いや、およそ英語で書かれたすべての小説の中で最高の作品の1つだが、1個の究極でもあって、その衝撃は大きかった。これ以後のヴァーリィはいまだに読んでいない。
まあ、あたしはいつもそうで、ル・グィンもバラードもシェパードも、一時期夢中になって読むが、あるところまで行きつくと、ぱたっと読まなくなる。しばらく経ってから、また読みだすが、ヴァーリィはまだ読む気になれない。それだけ「残像」のショックが大きかったということか。
われわれの五感とコミュニケーションのそれぞれと両者の絡み合いについて、これほど深く掘り下げて、その本質を、本来言葉にできない本質を、同時に言葉でしか表現できない本質を、ありありと感得させてくれた体験を、あたしはまだ他に知らない。ハンディキャップや disabled とされてきた状態も個性であり、多様性の一環として捉えようという時代にあって、一方で、デジタル技術によるリアルタイム・コミュニケーションに溺れる人間が多数派になっている時代にあって、「残像」はあらためて熟読玩味されるべき作品ではある。
ヴァーリィと言えば、長篇 Wizard に登場する異星人がとりうる複数の性の対応関係を示したチャートについて、作家の Annalee Newitz が先日 Tor.com に書いた記事のコメント欄にヴァーリィ本人が登場したのは面白かった。しかも、この記事のことはグレゴリー・ベンフォードから教えられた、というのもまた面白い。やあっぱり、皆さん、あそこはチェックしてるんですなあ。これを見て、Titan だけ読んだ「ガイア三部作」も含めて、あらためて「残像」以降のヴァーリィを読もうという気になったことではある。(ゆ)
2019-12-24追加
1934, スタンリィ・G・ワインボーム
1976, カーター・ショルツ
2019-12-30追加
1963, テリィ・プラチェット
1977, テリー・ブルックス(長篇)
1979, ダグラス・アダムズ(長篇)
1984, デヴィッド・ゲメル(長篇)
コメント
コメント一覧 (4)
一方、ガイア三部作はDemonの邦訳が出ていないと思われ長年残念に思っております。
『スチール・ビーチ』は浅倉さんで出ましたから、他の長篇もちゃんと出て欲しいです。ガイアはもうすっかり忘れているので、Wizard の件もあり、ちゃんと読もうとは思いだしました。とはいえ読む順番が回ってくるのはずいぶん先になります。
ヴァーリイの「残像」が大好きなので究極とまで言ってくださり、とても嬉しいです。もっと評価されて欲しい一作ですよね。
ブルー・シャンペンも面白いですよー。
「残像」には小説というものはここまでできるんだと思い知らされました。
いや、ほんと、ヴァーリィはその後もたくさん書いてるんで、読みたいんですが、今はちょっと別方面で忙しくて、なかなか手が伸びません。
目下のところ C. S. E. Cooney がマイブームです。ヴァーリィとは対極かも。でも、いい話を書くんです。