やあっぱり、対バンは面白い。こういう対バンが無いと Loup-Garou というバンドの存在は知らないままだった。なぜ、この名前なのかは訊くのを忘れた。
アコーディオンの田中さんが両方のメンバーであることで、瓢箪から駒でできた企画らしい。話をもちかけられたルーガルーの最初の反応が「正気ですか」というものだった、というのは、見ようによっては絶大な自信と言えなくもない。実際に見てみれば、年に一度しかライヴはしないというのがもったいないバンドだ。
芸大Gケルトの同期でやっていたもののうち、この6人が残ったそうだが、やはり残るにはそれだけの理由があるものだ。いや、別に論理的な明確な理由というものではなくとも、聴けば納得がゆく。
編成はフィドル、アコーディオン、パイプ(チャンター)&ホィッスル、ハープ、ブズーキ、バゥロン&フルート。こういうところにハープが入るのは面白いし、このハーパー、なかなか面白い。メンバーの中で一番ノリノリになる。楽器のイメージとはほとんど真逆のキャラのようだ。ソロないしもう少し小さな編成で聴いてみたい。
セツメロゥズのレコ発ライヴで話を聞いたときにはとにかくリールが好きで、リールしかやらない、とのことで楽しみにしていたのだが、案に相違して、ジグだのマズルカだのもやる。それはそれで楽しいが、一度はリールばかり延々と演るのを見たくはある。
というのも、さすがにGケルトで鍛えられているだけあって、演奏力は立派なもので、これでケイリ・バンドではない形でリールを畳みかけてくるのを浴びてみたいと思わせる。感心したのは選曲と組合せの巧さだ。今回オリジナルは無いとのことで、既存の曲を選んで組み合わせているはずだが、どのセットにもああいい曲だなあと思わせる曲が1曲はあって、これがキモになってセットを引き締めている。そして組合せ、配列が巧みに工夫されている。つなぎ方やイントロも冴えている。自然な流れと意表を突く意外性が無理なく同居している。こういうのは訓練で身につくとも思えないので、やはりセンスを磨いているのだろう。メンバーは演奏するよりも踊る方が好きとのことだから、ダンサーとしてのセンスも作用しているのかもしれない。
ぜひ、リールばかりのライヴを体験したいが、今年はもうやったから次は来年、なのだそうだ。
セッティングの転換が休憩時間になったが、田中さんは出ずっぱりで、終ってから、くたびれましたー、とにこにこしながら言う。
今回はブズーキの音が大きく設定されていて、こうなると、このバンドのキモはこのブズーキなのだということがよくわかる。アンサンブルの土台でもり、ドライブでもあって、フロントとパーカッションをつないで押し出す。熊谷さんはむしろ楽しそうに遊んでいるのだ。
とはいえ今回のハイライトは〈Bridget Cruise〉で、これまでよりまた少しだがテンポを落とし、ほとんどフリーリズム寸前になる。アレンジも変えていると聞える。後半、いきなりアップテンポになる、その対照もいい。次の〈Waterman's〉はもうすっかり自分たちの曲になっている。かつては巧まざるスリルとサスペンスだったのが、今は余裕でスリリングだ。そして〈Up in the Air〉でリズム・セクションがシンコペーションするのが、またカッコいい。
アンコールはもちろん全員。バゥロンとパーカッションのイントロがまず聴かせる。これだけの大所帯でしかも生音となると、パーカッションのドライヴが効いてくる。ビッグバンドはやっぱり愉しい。大きいことはいいことだ。
これもぜひ毎年恒例にして欲しい。次は全員一緒にやる曲をもっと増やしてもらいたい。
それにしても、なんで、人狼なんだろう。(ゆ)
Loup-garou
(メンバー詳細聞き取れず。不悪)
セツメロゥズ
沼下麻莉香: fiddle
田中千尋: accordion
岡皆実: bouzouki
熊谷太輔: percussion
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