COVID-19 が始まって一度停まったライヴ通いが再開したのはこのユニットのライヴだった。そして今年最後のライヴもこのユニット。それはもうすばらしいもので、生の音楽を堪能させていただいた。

 あたしにとって生の音楽が再開したそのライヴのゲストが桑野氏。それはそれはすばらしかったのはリスナーにとってだけでなく、むしろミュージシャンにとって一層その感覚が強く、ぜひもう一度、ということになった。加藤さんは甲府でのライヴで、やはり忘れがたい演奏をして、これまた透明な庭のお二人が熱望しての再演。

 ということで、今回は全曲を4人全員でやる。前回は桑野さんはお休みで、shezoo、藤野のデュオでやる時もあったが、今回はゲストというよりも完全にバンドである。このままカルテットとしてやってもいいんじゃないか、いや、むしろやって欲しいと思えるほどの完成度。単に優れたミュージシャンが集まりましただけでは、こうはならない。この4人の相性が良いというか、化学反応、それも良い反応が起きやすい組合せなのにちがいない。

 shezoo さんのバンドはいろいろ見ているが、いつもその組合せの妙に感心する。こういうハマった組合せをよくもまあ見つけてくるものよ、と見るたびに思う。しかも、その各々に個性が異なる。shezoo さんは共通だし、加藤さんのように他にも共通するメンバーもいるが、どのバンドも各々に音楽の性格が違う。そして新しいものほど、メンバー間の関係がより対等になっているようにもみえる。あたしにとっては一番古いトリニテはshezoo さんの楽曲を演奏する楽隊という性格が基本だが、最近の夜の音楽はバンマスというか、言いだしっぺは shezoo さんだが、一度バンドが動きだすと、楽曲も持ちよりだし、音楽を作るプロセスも対等だ。トリニテではやはりフロントの二人とリズム・セクションという役割分担がどうしてもできる。最近のユニットではそこも対等になっている。この透明な庭はデュオということもあって、今回も藤野さんがしきりにあおっていたように、MCも二人ができるだけ対等に担当する。

 桑野、加藤が加わった4人での演奏は、アレンジは作曲者がやったようだが、どちらも全員をフィーチュアすることを目指したらしい。それがまず現れたのが2曲めの藤野さんの〈晩夏光〉。加藤さんのバリトン・サックスが下から全体を持ちあげる中でヴァイオリンがどこかクラシック的なメロディを奏で、そのままソロに突入する。桑野さんはライヴはほとんどやらず、「ひきこもり」で音楽を作り、演っているそうだが、こういうソロはもとライヴで聴きたい。と、うっとりしていたら、バリトン・サックスのソロが炸裂して驚いた。こういう言い方はもう失礼かもしれないが、加藤さんは見る度に進歩している。腕が上がっている。よほどに精進しているはずだ。単に練習しているだけでなく、いろいろ聴き、見て、読んで、広く深く吸収もしているはずだ。音楽家としての厚みが増している。次の shezoo さんの〈空と花〉でもヴァイオリンからサックスへソロを渡し、そしてラストの音の消え方が絶品。前半最後の shezoo さんの〈タワー〉では藤野さんのアコーディオンから、加藤さんがバリトンとアルトを持ちかえて、各々にソロをかます。アコーディオンの音色が美しい。

 アコーディオンに限らず、サックスもヴァイオリンも音色が実に美しい。バランスもばっちりで、先週も思ったことだが音倉のPAのエンジニアさんはすばらしい仕事をしている。

 後半は新曲を並べる。透明な庭のセカンドのためのものだそうだ。はじめ shezoo さんの曲が3曲並ぶ。どれも良かったが、ハイライトはやはり〈Dreaming > バラコーネ1〉。前回桑野さんが加わった時のダントツのベストだったけれど、加藤さんが加わって音の厚みとダイナミズムがさらに大きくなる。そうなると藤野さんが高域で小さく奏でるソロの美しさが引き立つ。この曲、演る度に変化し、良くなってゆく。この先、どうなるか、実に楽しみだ。

 次の藤野さんの〈ヒライス〉の中間部でアコーディオンとヴァイオリンがケルト系のダンス・チューンのようなフレーズをユニゾンで演ったのには降参しました。粋だよなあ。

 全員羽目を外しての即興でも、一瞬もダレることもなく、ムダな音も無い。いつもはライヴだけで満足してしまうが、今回はアーカイヴでもう一度聴きたいと思う。このまんまDVDにしてもいいんじゃないか。

 shezoo さんはこの後、来年2月の『マタイ受難曲2021』に向けて本格的な準備に入るので、それまでは透明な庭はお預けになる。COVID-19 がどうなるか、予断は許されないが、ライヴを再開できたら、ぜひまたこのカルテットでやっていただきたい。

 『マタイ』はもちろん2日ともチケットを買いました。とにかく無事、公演ができますように。そして、それにできるかぎり万全のコンディションで行けますように。

 ライヴ通いについては回数が激減したのはやむをえないが、行けたライヴはどれもすばらしかった。とりわけ、3月の、ライヴそのものが中断された直前のクーモリと Tricolor の対バンとこの「百年に一度の花」は中でも際立つ。終り良ければなべて良し。困難な条件を乗りこえてライヴを開催してくれたミュージシャンたちと会場のオーナー、スタッフの皆さんには、感謝の言葉もない。ありがとうございました。(ゆ)

Invisible Garden
透明な庭
qs lebel
2020-02-01