4月18日・日

 散歩用ヘッドフォンに久しぶりに eGrado を使ってみる。夜、少しじっくり聴こうと 428 をかますと良く歌う。これは素姓が良いのだ。ディスコンになったのは残念。SR60e を使えということなんだろうが、屋外で使うときには、eGrado のこの固いプラスティックががっちりはまるのが気持ち良いのだ。価格.com で見ると SR80e はもう無くて、SR60e の次は125e。325 も無く、GW100、Hemp と来て、RS2e になる。



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 すばらしい。ゆったりと悠揚迫らず、イングランドの歌の世界にどっぷりと浸れる。James Patterson のヴォーカルとギター。John Dipper のはヴィオラ・ダ・モーレとのことだが、ちょっといなたい、けれど気品のある響きが聞き慣れたフォークの世界と一線を画す。練りに練られたフレーズを即興に聴かせ、声を縫って、水墨画のような空間を描きだす。ハーディングフェーレほどではないが、共鳴弦が立体的な響きを生む。ソロではクラシック的な技法でノルディックの伝統曲を演るのが、やや乾いた音になるのが面白い。

 Patterson Jordan Dipper のトリオによる Flat Earth も見事なアルバムで、Ralph Jordan はどうしたのだろうと思ったら、2014年に亡くなっていたのだった。これにはそのジョーダン追悼の想いもこめられている。

Flat Earth
Patterson Jordan Dipper
Wild Goose
2003-08-11



 パタースンの歌唱は酸いも甘いも噛みわけた大人の味。激することも落ちこむこともない。ブリテンの伝統歌唱に特徴的な、感傷を排した、ちょっと聴くと単調な、その実、複雑微妙な綾を織りこんで、柔かいテクスチャの奥に硬い芯を隠した声、軽く鼻にかけた、松平さんが「鉄則」と呼んだ発声法が心地良い。

 曲は伝統歌ばかりでなく、ハーディやハウスマンの詩に曲がつけられた、元来はクラシック・スタイルで演奏されることを想定しているものもある。こういう曲も、この声で歌われると伝統歌に聞える。

 こういうシンプルな組立ての、伝統歌やそれに準じる歌をじっくりと聴かせるアルバムが、このところまたイングランドで豊作になってきた。(ゆ)