4月20日・水

 上半身の痒いのがだいぶ収まる。やはり入浴時の洗いすぎだったのだろう。手が痒かったのも、殺菌力もある強い石鹸で頻繁に洗っていたからだったらしい。手洗い消毒用石鹸の手につける量を減らしたら、痒みは出なくなる。

 インターバル速歩で公民館に往復。本1冊返却、2冊借出し。借りたのは小山田浩子『穴』新潮文庫と『ローベルト・ヴァルザー作品集 4 散文小品集I』。小山田浩子はこれの英訳が今年のローカス推薦リストのホラーに挙げられていたため。なるほど、面白そうだ。こういう作品が芥川を獲るようになったのも時代の推移か。以前だったら意地でも与えなかっただろう。
 
穴 (新潮文庫)
浩子, 小山田
新潮社
2016-07-28


 ヴァルザーは先日ウン十年ぶりに再読した『ヤーコブ・フォン・グンデン』ですっかりヴァルザー熱が復活してしまったため。ヴァルザーの本領である短文、小品を集めたもの。早速最初の1篇「グライフェン湖」を読んで陶然となる。文章を読む歓び、ここにあり。そう、ヴァルザーの魅力は何が書かれているか、ではなくて、どう書かれているか、なのだ。日本語とドイツ語のネイティヴ、それぞれに相手の言語に通じた2人の共同作業である訳文もこれ以上のものはあるまい。ヴァルザーはこうした短文を二千数百篇残したそうだが、もちろんここに訳出されたのはそのごく一部。英訳も読んでみるか。第5巻は死後発見された長篇とさらに小品。この2冊は買ってもいいかなあ。

ローベルト・ヴァルザー作品集4: 散文小品集I
ローベルト・ヴァルザー
鳥影社
2012-10-17



 Monstress, Vol. 4、Jackie Kay, Bessie Smith 着。Monstress はこっちが先に来た。

 Jackie Kay という人は現在スコットランドの桂冠詩人で、ベッシー・スミスのこの伝記は1997年初版の再刊。スコットランド人の母、ナイジェリア人の父に1961年に生まれ、誕生と同時にスコットランド人夫婦の養子となる。2歳上の兄も同じ夫婦の養子になっていて、グラスゴーの、周りに自分たち兄妹以外に黒人がまったくいない環境で育つ。12歳の時、父がプレゼントしてくれた2枚組 Any Woman's Blues でスミスの歌に出逢い、生涯の友となる。この出逢いから話は始まる。スミスは別格だった。14歳の時、カウント・ベイシーとともにやってきたエラ・フィッツジェラルドを生で聞いたが、エラの声は娘らしく、くすくす笑っていた。スミスの剥出しの生の声は、それまで存在すら知らなかった場所に引きずりこむ(13pp.)。ジャケットのスミスの写真を見て、自分と同じ色をしていることで黒人としての自覚が目覚める。本人も差別を受けている。

 All black people could at some point in their life face racism or racialism (I could never understand the difference) therefore all black people had a common bond.  It was like sharing blood. [16pp.]

 母親とともに南アフリカの政治犯たちにクリスマス・カードを送る。家の中にはネルソン・マンデラ、ソルダド(ソレダ)・ブラザーズ、アンジェラ・デイヴィス、カシアス・クレイ、カウント・ベイシー、デューク・エリントンといった人たちのイメージがたくさんあった。ケイはこうした黒人たちと家族であることを想像する。その家族をつないでいたのはスミスの歌う声だった。

 スコットランドで生まれ育った黒人の詩人が書いたブルーズ・シンガーの伝記、というのはそれだけで興味が湧く。加えてこの本の評価は高いから期待しよう。
 アマゾンに予約注文していた Subterranean Press の The Best Of Elizabeth Hand は発送日未定になったので、BookFinder で検索すると、普通に売っている。アマゾンをキャンセルして、AbeBooks で注文。同時にアマゾンに注文した The Best Of Walter Jon Williams はそのままにしてみる。果たして来るか。Subterranean のはモノはいいんだが、どれも限定版で、直接注文すると送料がバカ高く、本体と同じかそれより高い。アメリカの海外配送料金の高さは引き下げられるべし。(ゆ)