4月29日・木
ビショップ No Enemy But Time ゲラ、なんとか上げる。連休進行できつい。
校閲の指摘で、『マイ・フェア・レディ』が埋めこまれていたことが判明。この場合、原作のショーの『ピグマリオン』の方かもしれない。これによって主人公ジョシュアと養母の関係とそれぞれのキャラに新たな光があたる。
浅倉さんがディックの『パーマー・エルドリッチ』だったか『ユービック』だったかの「訳者あとがき」で、こいつは傑作と意気ごんで始めても、ゲラが出てくるころにはもううんざりしていることが多いが、この作品だけはゲラで読んでも面白く、傑作だとあらためて思った、という趣旨のことを書いていたが、あれはこういうことか、と思い知らされる。翻訳の作業をしながら、面白くてしかたがなかったけれど、ゲラで読んでもますます面白い。『マイ・フェア・レディ』のような発見はまだまだありそうで、それでまた面白くなる。
ただ、この面白さはたいていの人は一度読んだだけで味わうのは難しいだろう。ぜひ二度以上読んでもらいたい。再読、三読してようやくその本当の価値がわかる作品ではある。ビショップの作品にはそういうものが多いのだ、たぶん。ビショップが何となく敬して遠ざけられているのは、そのせいもあるだろう。あたしもそうだった。思えば「キャサドニアのオデッセィ」も、初読ではなにやら凄い話という印象だけだった。ずいぶんたってから再読した時、呆然として、また爆笑もしてしまった。この仕事をさせてもらったことで、そのことに眼を開かされたのは、まことにありがたい。心を入れかえて、あらためて読んでみよう。
ああ、それにしても読むものがあり過ぎる。SFF も蓄積が進んで、古くて良いものもたくさんあるし、技術革新のおかげで、新しくて良さそうなものもどんどん出てくる。片方ばかり読んでいるわけにもいかない。交互に読みゃあいいとも思えるが、読むには気分が乗る必要もあるから、そう機械的にもできない。加えて時間はどんどん減ってゆく。まあ、澁澤龍彦のように、本を読んでる最中にどんと逝くというのが理想ではあるな。
根を詰めていたので、明日はひと息入れて、明後日からまたバトラーだ。(ゆ)
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