5月6日・木
ドーナルの新バンド Atlantic Arc の新譜のクラウドファンディングは成功したと通知。出だしがのんびりで大丈夫かと心配したが、あっちこっちでニュースになって集ったらしい。
ジェリィ・ガルシア公式サイトから GarciaLive, Vol. 16: 1991-11-15, Madison Square Garden, NY, NY の案内。ジャケット・デザイン一新。モダンになった。今度のTシャツもまずまずかっこいい。
散歩の帰りに公民館に寄り、本2冊ピックアップ。『ローベルト・ヴァルザー作品集』の第1巻と第5巻。
「少なくともヴァルザーの主要作品と目されてきたものは、ほぼすべて日本語に訳出されたことになるだろう」第5巻, 359pp.
しかしヴァルザーの「主要作品」は3本の長篇小説ではあるまい。「現在のズーアカンプ版全集で二十巻中の十五巻を占め、さらに遺稿集六巻にも所収されている計千数百篇にもなる散文小品」(第1巻, 373pp.)であるはずだ。この作品集の最初の3巻は長篇のみ。散文小品が入っているのは4、5の2巻で、第4巻は37篇、第5巻は「フェリクス場面集」を24篇と数えると41。計78篇。1割どころか5%ぐらいか。ここに収められたものはもちろん精選されたものであるだろうが、ヴァルザーの場合、「ベスト」とか「ワースト」とかは無意味だ。もう3冊ぐらいは散文小品だけの巻、それにミクログラムばかり集めた1巻が欲しい。『詩人の生』と『絵画の前で』はどうか。昔読んだ飯吉光夫編訳の『ヴァルザーの小さな世界』が出てこないので、『ヴァルザーの詩と小品』としてみすずから出なおしたものも図書館で頼んでみよう。重複は少ない。みすず版はいくらか増補されてもいるようだ。
折りよく、とりあえず注文してみた New Directions + Christine Burgin による Microscripts が届く。編訳は Susan Bernofsky。全部で526枚遺されたミクログラムのうち29枚を選び、現物の表裏をカラーの実物大で複製し、その英訳を添える。2010年にハードカヴァーで出たものに4枚追加した2012年のペーパーバック。1枚に複数の話が書かれているものもあるらしい。巻頭に訳者による解説、巻末にベンヤミンのヴァルザー論と表紙の絵を描いている Maira Kalman によるイラスト・エッセイを収める。
カルマンは雪の上に倒れているヴァルザーの写真を見て、ヴァルザーに惚れこんでしまったのだそうだ。ヴァルザーは1956年のクリスマスの日に日課の散歩に出て、途中で心臓発作を起こし、倒れて死んでいるのが発見された。享年78歳。散歩は『作品集』第4巻収録の傑作「散歩」はじめ、いくつもの文章に書かれているように、ヴァルザーにとっては書くことと並んで、晩年書かなくなってからは、何よりも大事な活動だった。かれは散歩するために生きていた。その途次に斃れたのはだからいわば「舞台の上」で、「現役」のまま死んだことになる。カルマンの言うとおり、そんなに悪い死に方ではない。むしろ、本人としては本望ではなかったか。あたしなどもこういう死に方をしたいものだ。
というわけで、ヴァルザー熱は当分冷めそうにない。(ゆ)



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