グレイトフル・デッドの今年のボックス・セットが発表になりました。セント・ルイスでの1971年12月から1973年10月までの7本のショウの完全版。《Listen To The River》のタイトルは〈Broken-down Palace〉の歌詞から。川はデッドの歌に繰返し出てくるモチーフです。13,000セット限定。
1971-12-09, Fox Theatre, St. Louis, MO
1971-12-10, Fox Theatre, St. Louis, MO
1972-10-17, Fox Theatre, St. Louis, MO
1972-10-18, Fox Theatre, St. Louis, MO
1972-10-19, Fox Theatre, St. Louis, MO
1973-10-29, Kiel Auditorium, St. Louis, MO
1973-10-30, Kiel Auditorium, St. Louis, MO
録音は1971年が Rex Jackson, 1972年が Owsley "Bear" Stanley, 1973年が Kidd Candelario。いずれも録音の名手で、これまでの実績からしても、音質は良いはず。
1971年は先日50周年記念盤が発売になった Skull & Roses のバンドにキース・ガチョーが入った形。1972年ではピグペンが抜けています。
David Lemiuex の seaside chat によれば、ライナーの一つを72年、73年のショウのプロモーターを勤めた人物が書いているそうで、こういう立場の人がライナーを書くのは珍しい。写真などもたくさん入っているそうで、楽しみです。これがあるから物理CDを買うのをやめられない。もう一つ、デッドのマネージャーだった Sam Cutler も書いているそうで、これも面白いでしょう。メインのライナーなおなじみニコラス・メリウェザー。
日本への送料は15.99で合計215.97USD です。Dead.net のこの送料を見ても、他の出版社などの送料がなんであんなに高いのか、わからん。扱うヴォリュームの問題なのか。そりゃ、こちらは天下のワーナー・ブラザーズですけど。
今回はCDのセットを注文すると1971-12-10のショウからデジタル・ダウンロードが3曲付いてきます。Sugaree、Mr. Charlie、Playing in the Band。このショウのみ、独立でCDが出ます。このショウは FM放送されて、有名なブートがあるのでその対策かな。また1972-10-18のショウの一部が Dead.net 限定でアナログ2枚組で出ます。
同じ場所での3年にわたるショウをまとめるのは一昨年の Giants Stadium Box を踏襲してます。この形だと、バンドの音楽の変化がよくわかります。今回はとりわけバンドが急速に変化していた時期で、いろいろと楽しみ。Giants Stadium は売り切れるまで時間がかかってましたけど、今回はあっという間でしょう。
St. Louis でのショウは20本。ミズーリ州では32回ショウをしているので、3分の2はセント・ルイスでやっています。
1968-05-24, National Guard Armory
1968-05-25, National Guard Armory
1969-02-06, Kiel Auditorium
1969-04-17, Washington University
1970-02-02, Fox Theatre
1970-10-24, Kiel Opera House
1971-03-17, Fox Theatre
1971-03-18, Fox Theatre
1971-12-09, Fox Theatre
1971-12-10, Fox Theatre
1972-10-17, Fox Theatre
1972-10-18, Fox Theatre
1972-10-19, Fox Theatre
1973-10-29, Kiel Auditorium
1973-10-30, Kiel Auditorium
1977-05-15, St. Louis Arena
1979-02-11, Kiel Auditorium
1979-12-09, Kiel Auditorium
1981-07-08, Kiel Auditorium
1982-08-04, Kiel Auditorium
ショウ完全版の公式リリースはこれまでに4本。
1969-04-17, Washington University, St. Louis, MO > Download Series 12
1970-02-02, Fox Theatre, St. Louis, MO > Dave's Picks, Vol. 06
1971-03-18, Fox Theatre, St. Louis, MO > 30 Trips Around The Sun
1977-05-15, St. Louis Arena, St. Louis, MO > May 1977
Washington University は1853年設立の私立総合大学で、2018年時点で学生数15,000(学部、大学院半々)、教員数3,800余。ここに関係したノーベル賞受賞者は25人の由。スタンフォードとかコーネルなどと同じレベルでしょう。
セント・ルイスの Fox Theatre は1929年に映画館としてオープンし、1978年に一度閉鎖。改装されて1982年に再開。収容人員は4,500。デッドはこれくらいのサイズの会場が一番好きだったようです。なお、デッドが演奏した Fox Theatre はもう一つアトランタのものがあります。サイズはほぼ同じ。あちらでは1977年から85年にかけて計9回演奏。
Kiel Auditorium は1934年にオープンし、1991年に閉鎖された屋内アリーナで、収容人員は9,500。DeadBase 50 よると10,500。デッド以外にも様々なコンサートの会場となりましたが、最も有名なのはプロレス会場としてらしい。
Kiel Opera House はオーディトリアムのステージと背中合わせにステージが作られている施設で、こちらの収容人員は 3,100、リノベーションされて現役。オーディトリアムとの仕切りを取り払って、広くも使えたそうな。
St. Louis Arena は1929年オープン、1994年に閉鎖された多目的屋内アリーナで、収容人員はこの当時はアイス・ホッケーで18,000。コンサートではもう少し少なかったでしょう。
National Guard Armory というのは今は使われていない建物らしく、ここに写真があります。
この名前の建物はもちろん全米各地にあるわけですが、デッドが演奏したのはこのセント・ルイスのものだけ、それも1968年5月の2回だけです。このショウを見てデッドに入れこみ、デッドのショウを見るためにセント・ルイスからサンフランシスコ郊外に引越した人物のコメントが 30 Trips Around The Sun 付録の本に収録されています。2回とも明確なセット・リストは残っていませんが、このコメントによると、バンド・メンバーの一人、おそらくピグペンではないかと思われますが、最後の〈Morning Dew〉でマイクをステージにあった直径6フィートの巨大なゴングに叩きつけ、あるいはマイクでさすって異様な音を出し、バンドもこれに合わせて、圧倒的なクライマックスになったそうです。演奏を終ったバンド・メンバーが、今のはいったい何が起きたんだ、という顔をしているのをみて、こいつら、とことん見てやると決意した由。
それにしても半世紀前の録音がつい昨日録音されたもののように聴けるのはテクノロジーの恩恵ですなあ。これらのショウが行われていた当時、半世紀前の録音といえばSP盤しかなかったわけで、レコードを手に入れるのも、それを再生するのも、えらく苦労しなければなりませんでした。(ゆ)
それにしても半世紀前の録音がつい昨日録音されたもののように聴けるのはテクノロジーの恩恵ですなあ。これらのショウが行われていた当時、半世紀前の録音といえばSP盤しかなかったわけで、レコードを手に入れるのも、それを再生するのも、えらく苦労しなければなりませんでした。(ゆ)
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