9月24日・金

 Custy's からCD7枚。1枚、Cathal Hayden のものだけ後送。09-04に注文したから、3週間で来た。まずますのスピード。実をいえば、この Cathal Hayden のCDを探して、久しぶりに Custy's のサイトに行ったので、他はサイトで見て、試聴し、むらむらと聴きたくなったもの。新譜ばかり。知らない人ばかり。この店だから、西の産が多い。もっとも Jack Talty がエンジニアをしたのが2枚あった。Raelach Records からではなく、どちらもミュージシャンの自主リリース。調べると Bandcamp にあるものが大半。まあ、Custy's でまとめて買えば、送料は安くなる。その代わり、Bandcamp ではCDを買うとファイルもダウンロードできるのが大きなメリットだし、場合によってはファイルはハイレゾだったり、ボーナス・トラックが付いていたりする。それにしても、クレアに住んで Eoin O'Neill の詞に曲を付けて歌っているアルゼンチン人とか、ドゥーリンに住んで、ミルタウン・モルヴェイのスタジオで録音したフィドルとコンサティーナのデュオはどちらもアイルランド人ではないとかいう風景に驚かなくなってきた。今回唯一なじみのあるのはダーヴィッシュの Liam Kelly のソロ。これはちょっと変わっていて、「フルートのマイケル・コールマン」John McKenna の家で、マッケナのレパートリィを録音したもの。発行元も The John McKenna Traditional Music Society
 


##本日のグレイトフル・デッド

 9月24日は1966年から1994年まで12本のショウをしている。うち公式リリースは3本。


01. 1966 Pioneer Ballroom, Suisun City, CA

 前日と同じフェスティヴァルの2日目。


02. 1967 City Park, Denver, CO

 屋外の公園での午後1時からの "be-in" で、デッドはのんびりステージに出て、上半身裸になって数曲演るが、機器のトラブルで中止。〈Dark Star〉をやったと言われる。共演は Mother EarthCaptain Beefheart & His Magic Band、それに Crystal Palace Guard という地元のバンド。ビーフハートはこんなに標高が高いところで演奏したことがなかったので、酸素吸入が必要になった由。

 このデンヴァーの Family Dog と集会での演奏は Chet Helms がとりしきった。ヘルムズは初期デッドのプロモーターで、Avalon Ballroom のマネージャーでもあった。デンヴァーの Family Dog の施設はそれ以前は Whisky A Go Go のデンヴァー支店だったそうだ。


03. 1972 Palace Theater, Waterburry, CT

 同じヴェニュー2日め。《30 Trips Around The Sun》の1本として完全版がリリースされた。アウズレィ・スタンリィの録音で音はすばらしい。

 ここは1,000人収容のこじんまりしたホールで、親密感が生まれやすいところだったらしい。〈Dark Star〉から〈China Cat Sunflower > I Konw You Rider〉というメドレーは1969年以降ではこの時のみの由。最前列で見ていた人の証言では、〈Dark Star〉の最中にレシュが "China Cat" と叫んだそうだ。

 前半を締めくくるのはこの時期の通例で〈Playing in the Band〉。3日前のフィラデルフィアもすばらしかったが、この日は17分を超えて、さらに輪をかけてすばらしい。デッド流ポリフォニー集団即興の極致、全員がそれぞれに勝手なことをしながら、ちゃんと曲が編みあがってゆく。ガルシアのギターだけが突出しているわけではないが、ガルシアのギターが他のメンバーがつむぐタペストリーに太い線で変幻自在の模様を描いてゆく様は快感。その模様が、単純でいながら意表を突く。ここまでの曲でも折々にこの即興になる場面はあるが、それよりはむしろ歌をじっくり聞かせる姿勢。ここでは、むろん歌は必要なのだが、それ以上にインストルメンタルの展開を意図する。

 これはもうロックではない。こういう即興は、当時他のロック・バンドは思いつきもしなかった。ザッパは思いついていたかもしれないが、かれの場合、宇宙は自分を中心に回っている。こういう、メンバー誰もが対等にやることは、たぶん許さない。

 この音楽の美しさをデッド世界の外でわかる人間がいたとすれば、ジャズ世界の住人たちだっただろうけれど、でも、デッドはソロを回さない。全員が同時にソロをやる。それぞれのソロがからみ合って集団の音楽になっている。そこが面白い。そこが凄い。まさに、バッハ以来の、ポリフォニー本来の姿が現れる。

 このデッドの集団即興の面白さを味わうには、この時期、1972年秋の〈Playing in the Band〉を聴くのが早道かもしれない。この日もこの後〈Dark Star〉が待っていて、それはまったく別の美しさを見せる。デッドの音楽としては〈Dark Star〉の方が大きい。そこにはデッドの音楽が全部ある。PITB にあるのは一部、どちらかといえばわかりやすい位相が現れている。

 David Lemiuex は《30 Trips Around The Sun》のノートで、これを含む1972年秋のツアーを、デッド史上最高のツアーの一つ、72年春のヨーロッパ・ツアー、1977年春の東部ツアーと並ぶものとしている。このツアーからはこれまでに9月17日のボルティモア、21日のフィラデルフィア、27日のジャージー・シティ、それにこれと4本、完全版が公式リリースされているけれど、72年ヨーロッパ・ツアー、77年春に比べると、まだまだ少ない。どんどん出してくれ。


4. 1973 Pittsburgh Civic Arena, Pittsburgh, PA

 ここでも後半の前半に、ジョー・エリスとマーティン・フィエロが各々トランペットとサックスで参加。前半ラストに近い〈China Cat Sunflower > I Konw You Ride〉が2018年の《30 Days Of Dead》でリリースされた。

 珍しく〈China Cat Sunflower〉の後半でウィアが長いギター・ソロを披露し、なかなかのところを聞かせる。


05. 1976 William And Mary Hall, College Of William And Mary, Williamsburg, VA

 夜8時開演。料金6ドル。コーネル大学バートン・ホールと同様、ここでも演奏回数は少ないが、演奏する度に名演が生まれている。《Dave's Picks, Vol. 4》で完全版がリリースされた。残念ながら持っておらず。


06. 1982 Carrier Dome, Syracuse University, Syracuse, NY

 開演夜8時。料金11.50ドル。この年、1、2を争うショウと言われる。

 この会場ではここから83年、84年と、ともに秋に計3回ショウをしている。屋内スポーツ・スタジアムで、大学のキャンパス内のドーム施設として全米最大だそうだ。普通25,000超。バスケットでは定員3万だが、35,642という記録がある由。コンサート会場としても頻繁に使われ、ロック、カントリーはじめ、メジャーなアーティストが軒並ここで公演をしている。


07. 1983 Santa Cruz County Fairgrounds, Watsonville, CA

 屋外のショウで午後2時開演。9月13日までのひと月のツアーの後の独立のショウの1本。2週間休んで10月8日から10月一杯ツアーに出る。


08. 1987 The Spectrum, Philadelphia, PA

 3日連続の最終日。


09. 1988 Madison Square Garden, New York , NY

 9本連続の8本目。レックス財団が共催で熱帯雨林保護ベネフィット公演として、多数のゲストが参加。ブルース・ホーンスビィのバンドが前座。前半2曲のブルーズ・ナンバーにミック・テイラーが参加。後半冒頭にスザンヌ・ヴェガ、中間にダリル・ホール&ジョン・オーツが出て、各々の持ち歌を2曲ずつ披露。〈ドラムス〉に Baba Olatunji & Michael Hinton、〈Not Fade Away 〉にホーンスビィが参加。

 DeadBase XI John W. Scott によると、デッドは871,875ドルを Cultural SurvivalGreenpeaceRainforest Action Network に寄付した。資金集めもあり、チケットの高いものは50ドル。さらに終演後のバンドのレセプションも付いた250ドルの席も用意された。

 デッドの音楽以外を認めない狂信者はゲストのパートを嫌うが、上記スコットはどちらも高く評価している。デッドがふだんやっている音楽とはかけ離れているように見える相手でも、見事にバックアップしていたそうだ。ディランのように、ヴェガとツアーしてくれないかとまで言う。それはあたしも見たかった。


10. 1991 Boston Garden, Boston, MA

 6本連続の4本目。テンション維持しているようだ。


11. 1993 Boston Garden, Boston, MA

 6本連続の初日。午後7時半開演。料金26.50ドル。


12. 1994 Berkeley Community Theater, Berkeley, CA

 DeadBase XI はじめ、 デッドのショウとされているが、実際は Phil Lesh & Friends の名前でバークリーの学校の音楽クラスのための資金集めとして開催され、ドラマー以外のメンバーが参加し、アコースティックで演奏した。〈Throwing Stone〉はこの時が唯一のアコースティック版。共演はカントリー・ジョー・マクドナルドや地元のアーティスト。

 このバンド名としては最初の公演。(ゆ)