仕事して、散歩して、デッドを聴いて、1日が終る。


##9月25日のグレイトフル・デッド

 1970年から1993年まで6本のショウ。公式リリースは2本。


1. 1970 Pasadena Civic Auditorium, Pasadena, CA

 ガルシアも入った New Riders Of The Purple Sage が前座。パサデナの当局は締付けが厳しく、ここでのショウはこの1回のみ。会場には消防署から人が複数来ていて、客が踊りだすと座らせていたが、終り近く、ピグペンが〈Turn on Your Lovelight〉を歌いだすと、皆一斉に立ちあがってステージ前に殺到したので、手が出せなかった、そうだ。DeadBase XI のルネ・ガンドルフィのレポートによると、真夜中10分前、ウィアが「ここは真夜中に戒厳令になって、演奏はできないと言われたんだが、交渉してあと1曲だけやってもいいということになった」と言って始まったのが〈Lovelight〉で、当然10分で終るはずがなかった。


2. 1976 Capital Centre, Landover, MO

 料金7.50ドル。夜8時開演。

 前半の1曲を除いて《Dick’s Picks, Vol. 20》でリリースされた。〈Cosmic Charlie〉はこの日が最後。後半の後半、〈Scarlet Begonias〉以降、〈St. Stephen > Not Fade Away > Drums > Jam > St. Stephen > Sugar Magnolia〉の流れは圧巻。〈スカベゴ〉が〈Fire on the Mountain〉と組み合わされるのは翌年5月。とはいえ、この独立の〈スカベゴ〉もなかなか素敵だ。


3. 1980 Warfield Theatre, San Francisco, CA

 1014日までの15本連続公演の初日。料金12.50ドル。開演夜8時。一部アコースティック、二部、三部がエレクトリック。このフォーマットでこのあとニューオーリンズで2日、ニューヨークの Radio City Music Hall で8本のレジデンス公演を行う。アナログ時代のライヴ・アルバム《Reckoning》《Dead Set》の元になったもの。この日はアルバム収録無し。

 ポスターに描かれた会場入口上の、通常は当日やるアーティストの名前が掲げられるところ、ポスターの中では

They're not the best at what they do,

They're the only ones that do what they do.

連中はベストのバンドというわけじゃない。

連中がやってることを他には誰もやっていないのだ。

が掲げられている。デッドを表現する決まり文句の一つ。

 この一連のショウはぜひボックス・セットで完全版を出して欲しい。2030年までとっておかないでさ。


4. 1981 Stabler Arena, Lehigh University, Bethlehem, PA

 料金10.50ドル。夜7時半開演。定員6,500の多目的アリーナで1979年オープン。この日の聴衆は2,500で、料金からしても、学生向けではないか。この時が初体験も多いらしい。ここではこの1回のみ。

 デッドは1970年代初めから精力的に大学での公演を行っていて、そこからデッドヘッドの中核が生まれる。したがってデッドヘッドにはアメリカ社会のトップ層が多数含まれる。IT業界だけでなく、実業家、弁護士、学者、芸術家、アスリート、軍人、ありとあらゆる分野にまたがる。デッドのショウの舞台ソデにいた上院外交小委員会委員長のもとへ、ホワイトハウスから電話がかかってきたこともある。ちょうど前座のスティングが歌っているところで、かけてきた補佐官開口一番「ずいぶんにぎやかなところにおいでですね」。

 1980年代後半、人気が出すぎてできなくなるまで、こうしてやっているから、大学でやるのは好きだったとみえる。大学の会場は多目的ホール、アリーナが多く、音響が良くないので嫌うミュージシャンもいるが、ここは例外的に音響が良いそうだ。もっともやっているのはキッス、ジューダス・プリースト、ニルヴァナとかで、音響の良し悪しはあまり気にしそうもない。


5. 1991 Boston Garden, Boston, MA

 6本連続の5本目。《Dick’s Picks, Vol. 17》で完全版がリリースされた。ポール・マッカトニーの〈That Would be Something〉が初めて演奏される。ブルース・ホーンスビィが参加した唯一のヴァージョン。


5. 1993 Boston Garden, Boston, MA

 6本連続の2本目。アンコール前のラスト〈Standing on the Moon〉1曲があまりに凄くて、デッドのショウとしては凡庸なものを完全にくつがえした、と John W. Scott DeadBase XI で言う。(ゆ)