1109日・火

 panpanya の最新刊『魚社会』。あいかわらず傑作が並ぶ。「魚社会」がタイトル作になるのはわかるが、あたしとしては「自由」、「秘密」、それに「『楽園』ご紹介漫画」と「おみやげの心得」がいい。後の二つの、どこまでも奥が続いてゆくのがピラネージを連想する。「魚社会」の魚たちは「筑波山観光案内」の蝦蟇たちを連想する。

 それに「偶」の時間感覚。日本列島の成立事情からすれば、実際にはこういうことはありえないけれど、それはここでは問題ではない。長い長い時間が経ってゆく感覚がいい。

 トドメは延々と続く「カステラ風蒸しケーキ物語」。ここまで一つの食べ物を追いかけることは見ていて愉しい。152ページでは一緒にほろりとしてしまう。これもまた「共有」なのだ。共有は愉しいが、思いがけず誰かが共有してくれる歓びにまさるものはない。

 この人の本は年に1冊新刊が出る。新刊が出ると既刊が揃って重版されるのだそうだ。それはわかる。新刊を読むと既刊を読みかえしたくなる。すると新しい発見がある。初読のときはそれほどでもなかった話がぱっと輝きだす。さきほどのように、だんだん奥に誘われてゆく。



 今年最後の Grateful Dead, Dave's Picks である Vol. 40 到着。1990-07-18 &19, Deer Creek Music Center, Noblesville, IN07-19 のアンコール〈U. S. Blues〉は入りきらず、来年最初の Vol. 41 に収める、と Dave's Picks 2022 年間予約を募る seaside chat David Lemiuex が言っている。

 その Vol. 41 1977-05-26, Baltimore Civic Center, Baltimore, MD だよ、とこれもレミューが seaside chat で言っている。このショウはこれまで《30 Days Of Dead》で5曲がリリースされていたもので、この春のツアーの最後から二つめ。最後の5月28, Hartford Civic Center, Hartford, CT は《To Terrapin: Hartford '77》で全体がリリースされている。

 4月22日のフィラデルフィアから始まるこの春のツアーはトータル26本。うち14本がこれまでに完全版で公式リリースされている。《May 1977》と題されたボックス・セットが二つ出ていて、ツアー後半が厚く、前半が薄い。1990年春や1972年春のヨーロッパ・ツアーのように、いずれ全部公式リリースされることを期待。

 Vol. 40 に戻れば、1990年7月のこの2日間はブレント・ミドランド在籍中の最後の、そして最高の輝き。春のツアーの頂点をも凌ぐかもしれない。この後にシカゴの3日間があるが、それは会場が良くなく、またミドランドの死の遠因となった外部要因の影がさして、あまり良いショウとはいえない。ミドランドの最後の思い出はこの2日間にしておきたい、とデヴィッド・レミューはライナーで書いている。

 このライナーによれば、5月5日カーソンのカリフォルニア州立大学に始まる夏のツアーも、春の絶好調を維持しているそうだが、全体が公式リリースされた春に比べるとこちらからはこれまでに2本しか完全版は出ていなかった。そこへこの2本が加わった。こちらもこれから充実させてほしい。

 何といっても1977年と1990年前半は1972年と並ぶ、デッドの頂点なのだから。



##本日のグレイトフル・デッド

 1109日には1966年から1979年まで5本のショウをしている。公式リリースは2本。うち完全版1本。


1. 1966 Fillmore Auditorium, San Francisco, CA

 情報無し。


2. 1968 Fillmore West, San Francisco, CA

 4日連続の3日目。チケットのみ残っている。3ドル。セット・リスト不明。


3. 1970 Action House, Island Park, NY

 このヴェニュー2日連続の初日。3ドル。広告を持ってゆくと2.50ドル。ニュー・ライダーズ・オヴ・パープル・セイジ前座。セット・リストは部分的。

 アイランド・パークはロング・アイランドの西部、ロング・ビーチのすぐ北の町。


4. 1973 Winterland, San Francisco, CA

 この日から3日連続のここでのショウは《Winterland 1973》で3本とも全体がリリースされた。


5. 1979 Buffalo Auditorium, Buffalo, NY

 後半の〈Drums〉〈Space〉以外の全部が《Road Trips, Vol. 1, No. 1》とそのボーナス・ディスクでリリースされた。

 ヴォーカルが近く、コーラスも個々の声がはっきりしている。ガルシアのギターが退き気味で、左のウィアのギター、中央のレシュのベース、右のミドランドの鍵盤が手前で大きい。

 オープナー〈Dancing In The Street〉から全開。ドラムス以外全員揃ってのリフの前後のジャムがすばらしい。ウィアのギターとレシュのベースが弾む弾む。ガルシアは明確なフレーズを弾かない。全体にひどくジャズ的。

 〈Franklin's Tower〉でミドランドのハモンド・オルガン・ソロが入る。

 〈Estimated Prophet〉でも2度目のヴォーカルの後、電子ピアノでソロ。

 〈He's Gone〉はいつもより少しゆっくりで、丁寧に歌われる。この後に続くジャムがまた良い。ゆっくりと始まったジャムが途中からドラムスが仕掛けてテンポが上がり、急に緊迫感に満ちる。ヴァン・モリソンの〈グロリア〉のリフをウィアが出す。(ゆ)