1110日・水

 チーフテンズの60周年記念ベスト盤《Chronicles: 60 Years of the Chieftains》『チーフタンズの60年〜ヴェリー・ベスト・オブ・ザ・チーフタンズ』の音源を聴きながら、ライナーの原稿を書く。

 このベストはキャリアの始めと最後に集中した選曲。つまり、今回一緒にリイシューされるファーストから『バラッド・オブ・ジ・アイリッシュ・ホース』までのアルバム(ただし『8』からは無し)と、『ロング・ブラック・ヴェイル』『ダウン・ジ・オールド・プランク・ロード』『サン・パトリシオ』『ヴォイス・オブ・エイジズ』から選んでいる。これはこれで筋の通った方針でもあるし、選曲眼はかなり肥えていて、目配りもよく、こうして聴くとなかなか面白い。

 ついでながら、リイシューされるのは『バラッド・オブ・ジ・アイリッシュ・ホース』までなのだが、『7』から『9』と《Live!》の4枚は除かれている。大人の事情、ということで、画竜点睛を欠くところではあるが、まあ、いずれこれらもリイシューされるだろう。特にうたわれていないが、音源を聴くかぎり、リマスタリングされているようでもあって、音質は良い。

 BBC の持つ未発表ライヴ音源が4曲入っているが、そのうち2曲はなんと1975年、最初のロイヤル・アルバート・ホール公演の音源だ。ちゃんと録っていたんじゃないか。もったいぶらないで、とっとと全部出してくれ。

 後の二つは1981年のケンブリッジ・フォーク・フェスティヴァルでのライヴ。1977年の《Live!》もそうだが、チーフテンズだけの、ゲストのいないすっぴんの演奏の凄さにあらためてシャッポを脱ぐ。それにアレンジの妙。差し手引き手の呼吸のとり方の巧さ。こんなことをやっていたのは、やれたのは、チーフテンズだけだ、とあらためて思いしらされる。うーん、一度、ゲスト抜きの、かれらだけの生をあらためて見てみたかった。

 最初の来日はその形だったけれど、あの時は、とにかく目の前にチーフテンズがいる、というだけで舞い上がってしまっていて、何をやったのかもさっぱり覚えていない。2度目のときは大方の皆さん同様、ジーン・バトラーのダンスに目を奪われていた。チーフテンズのライヴで、音楽の凄さに圧倒されたという記憶がほとんど無いのは、ちょと寂しい。例外は以前にも書いた、カルロス・ニュネスとパディ・モローニのパイプ・バトル。マット・モロイのソロやケヴィン・コネフの歌はもちろん良かったけれど、それは個々の芸で、バンドの、アンサンブルとしての凄みとは別だ。

 原盤のわからない音源が2曲。アリソン・クラウスの歌う〈Danny Boy〉とヴァン・モリソンの歌う〈Star of County Down〉。後者はベルファストは The Menagerie での1999年のライヴ音源で、他にもっと無いのか。

 前者は絶品。この歌のベスト・ヴァージョンと言っていい。クラウスはほぼフリー・リズムで、ア・カペラのようにうたい、電子音やパイプやハープやフルートやフィドルがアンビエントなバックをつける。クラウス、偉い。"with Alison Krauss, Bishop Nathaniel Townsley Jr, Gospel Jubilee & Malachy Robinson" というクレジットなのだが、いつ、どこでのものだろう。上記のコラボレーション・アルバムのどれかのアウトテイクか。もらった資料には何も無い。

 ご存知の方がおられれば、乞うご教示。

 聴きながら書いていると、どんどん膨らんで、制限字数を大幅にオーヴァー。さて、どこをどう削るか。



##本日のグレイトフル・デッド

 1110日には1967年から1985年まで6本のショウをしている。公式リリースは4本。うち完全版2本。


1. 1967 Shrine Auditorium, LA

 最後の2曲が2013年の《30 Days Of Dead》でリリースされた後、《30 Trips Around The Sun》の1本として全体がリリースされた。

 それにしてもこういうものを聴くと、デッドはヘタである、という「定説」はいつ、どこで、どうやって生まれたのか、不思議でしかたがなくなる。テープを聴いていなかったから、というだけの理由からだろうか。


2. 1968 Fillmore West, San Francisco, CA

 4日連続の最終日。セット・リスト不明。


3. 1970 Action House, Island Park, NY

 このヴェニュー2日連続の2日目。セット・リストは一部のみ。


4. 1973 Winterland, San Francisco, CA

 3日連続の中日。《Winterland 1973》で全体がリリースされた。

 朝11時に会場の前に行くとすでに7人並んでいた。開場は4時半。ガルシアはきれいにヒゲを剃っていた。と Mike Dolgushkin DeadBase XI で書いている。


5. 1979 Crisler Arena, University of Michigan, Ann Arbor, MI

 7.50ドル。開演7時半。前半ラスト前の〈Passenger〉と後半冒頭の2曲〈Alabama Getaway> The Promised Land〉が《Road Trips, Vol.  1, No. 1》でリリースされた。

 3曲とも実に良い演奏。ミドランドはすでにバンドに溶けこんで、ソロもとっている。これなら全体も良いにちがいない、と思える。


6. 1985 Meadowlands Arena, East Rutherford , NJ

 このヴェニュー2日連続の1日目。前売13.50、当日15ドル。開演7時半。前半4曲目〈Cassidy〉が《So Many Roads》でリリースされた。これも良い演奏。この曲はドナあってのものと思うが、ミドランドは十分自分のものにしているし、かれの鍵盤が加わるのも良い。

 1985年秋のツアーでベストのショウ、と言われる。(ゆ)